トルコリラ円見通し 大統領の為替差損補償発言からの大幅連騰(21/12/22)

トルコリラ円の12月21日は9.71円から7.90円の取引レンジ、22日早朝の終値は9.17円で前日終値の8.40円から0.77円の円安リラ高となった。

トルコリラ円見通し 大統領の為替差損補償発言からの大幅連騰(21/12/22)

トルコリラ円見通し 大統領の為替差損補償発言からの大幅連騰

〇トルコ円21日もリラ買い殺到、ベンダーによっては高値10円台をつけているケースも
〇大統領の為替差損補填発言後のリラ買い続くも、高値警戒感もあり終盤には9.17レベルへ反落
〇トルコ財務省発表の「為替差損補填」、事実上の利上げ、かつ前代未聞の政府による損失補填スキーム
〇政府思惑通りリラ高継続の場合損失補填支出は回避されるが、リラ暴落進めば財政破綻招きかねず懸念大
〇8.50以上での推移中は高値波乱余地ありとし、9.71超えからは10.00試しを想定する
〇8.50割れからは8.00から7.50を試すとみる

【概況】

トルコリラ円の12月21日は9.71円から7.90円の取引レンジ、22日早朝の終値は9.17円で前日終値の8.40円から0.77円の円安リラ高となった。ベンダーによっては高値で10円を超えたところも見られる。
12月16日の4会合連続での利下げを挟んで連日の史上最安値更新となり、12月19日にエルドアン大統領が低金利政策をさらに続けると演説したことから12月20日安値6.17円まで史上最安値を大幅に更新してきたが、12月20日夜にエルドアン大統領がリラ安による為替差損を補償すると述べたことから急騰に転じて12月20日は前日比1.48高の円安リラ高となった。
大統領の為替差損補填についての実効性への疑問も抱えつつ、21日もリラ買いが殺到して高値で9.71円を付けた時点では前日比1.31円の円安リラ高となる大幅続伸だったが、暴騰的な上昇に対する高値警戒もあって当日高値は反落して日足は大陽線の連続ながら長い上ヒゲを付けた。

【対ドルでも大幅連騰】

ドル/トルコリラの12月21日は14.00リラから11.47リラの取引レンジ、22日早朝の終値は12.43リラで前日終値の13.50リラからは1.07リラのドル安リラ高となった。
高インフレ化での無謀な連続利下げにより歴史的な暴落に見舞われて12月20日には18.36リラの史上最安値へ下落、連続利下げ開始前の8リラ台からは価値の半減以上の通貨危機的暴落商状だったが、12月20日の大統領によるリラ安補填発言から流れが急転して暴騰的なリラ高となり、21日も大幅な続騰となったが、21日夕刻に11.64リラへ急伸後に14.00リラへ急落し、22日早朝に11.47リラまで一段高する大乱調となった。

【リラ預金の損失補填、概要見えるも実効性には疑問符も】

エルドアン大統領が12月20日にリラ預金における為替差損を補填するとしたことを受けて12月21日にトルコ財務省は「満期が3か月から12か月のリラ建て預金についてはトルコ中銀の政策金利を適用する新たな保護措置を導入する」と発表した。財務省によると、リラの外貨換算レートと預金利回りの差を顧客の預金口座に入金することで為替の変動から保護するという。具体的には「預金口座の開設日と満期日の外貨換算の為替レートと預金利回りを比較して高い方の利回りを口座に適用する」という。また補填される入金についての税の源泉徴収は行わないとした。
この措置が実現すれば、リラ預金が「ドル売りリラ買い」取引となり、リラの預金金利よりもドル換算でマイナス勘定になれば政府が損失を補填するということになるため、政府による積極的なドル売りリラ買い推奨策といえる。またリラの預金金利で不足する分の差損益を補填するということは実質的な預金者に対する可動的な金利補償=利上げ行為でもある。

損失補填は金融取引においては禁じ手であり、それが政府・財務省が行うことは前代未聞であり、思惑通りにリラ高が継続するかこれ以上のリラ暴落が発生しなければ財務省による損失補填支出は回避されるが、仮にリラ暴落が一段と進めば損失補填による財政支出の増大がトルコの財務体力を大幅に削ぐことにもなりかねない。
市場はひとまず損失補填政策への飛びつきとリラ安への歯止めがかかる可能性を警戒してリラ買いへ急旋回したが、この問題はまだ紆余曲折もありそうで、リラ安再開となると却ってトルコ売り型のリラ暴落と通貨危機・財政破綻を招きかねないと懸念される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月13日深夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして16日夜から20日夜にかけての間への下落を想定してきたが、12月20日夜へ一段安したところからの急騰により21日午前時点では12月20日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期は13日深夜高値を基準とすれば20日深夜にかけての間と想定されるので既に反落警戒期にあるとしたが、通常レベルを超える急騰のためさらに伸びる可能性もあるとした。
12月21日午後と22日早朝の高値でダブルトップを付けている可能性があるが、8.50円以上での推移中は上昇継続余地ありとし、8.50円割れからはいったん下げに入るとみて23日深夜から27日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では12月20日深夜からの急騰で遅行スパンが好転、先行スパンを突破してその後も両スパン揃っての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試しとするが、高値更新が続かなければ遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は12月20日夜に80ポイント台へ急伸したが21日の高値更新ではピークが切り下がる弱気逆行がみられるため反落警戒とし、70ポイント超えからは上昇再開とするが、55ポイント割れからは下落期入りとして30ポイント前後への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.50円を下値支持線、9.71円を上値抵抗線とする。
(2)8.50円以上での推移中は高値波乱余地ありとし、9.71円超えからは10.00円試しを想定する。10.00円以上は反落警戒とするが、9.00円以上での推移なら23日も高値試しへ向かう可能性が残るとみる。
(3)8.50円割れからは7円台後半(8.00円から7.50円)を試すとみる。7.75円以下は反騰注意とするが、8.50円以下での推移なら23日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

12月23日
 20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
 20:30 週次 外貨準備高 12/17時点 (12/10時点 841.5億ドル)
12月24日
 17:00 11月 観光客数 前年同月比 (10月 99.25%)
12月27日
 16:00 12月 製造業景況感 (11月 108.4)
 16:00 12月 設備稼働率 (11月 78.1%)
12月30日
 16:00 12月 経済信頼感指数 (11月 99.3)
 20:30 週次 外貨準備高 12/24時点
12月31日
 16:00 11月 貿易収支 (10月 -14.4億ドル)


注:ポイント要約は編集部

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