トルコリラ円見通し 最安値大幅更新後、大統領の為替差損補償発言から急騰
〇トルコリラ円、大統領の低金利政策継続演説から、12/20も大幅続落で6.17まで史上最安値を更新
〇その後リラ安による為替差損補償の政策方針発表、急反騰に転じ8円台後半まで連鎖的な暴騰
〇対ドル、深夜安値18.36まで大幅下落するも、その後急転直上型の急騰で13.50まで値を上げる
〇12/19利下げ継続姿勢の後、12/20に為替差損補填方針示したことで、リラ売りに急ブレーキがかかる
〇8.00以上での推移中は高値波乱余地ありとし、8.00超えからは9.00試しを想定する
〇8.00割れから続落の場合は、7.50前後試しとみる
【概況】
トルコリラ円の12月20日は8.41円から6.17円の取引レンジ、21日早朝の終値は8.40円で先週末終値の6.92円から1.48円の円安リラ高となった。
12月16日の4会合連続での利下げを挟んで連日の史上最安値更新となり、12月19日にエルドアン大統領が低金利政策をさらに続けると演説したとの報道から20日も深夜にかけて大幅下落が続いて6.17円まで史上最安値を更新した。トルコ株式市場も17日に続いて2日連続のサーキットブレーカー発動で売買が停止するなど混乱が続いていたが、エルドアン大統領がリラ安による為替差損を補償する旨の政策方針を発表したことで急反騰に転じ、7円を超えてさらに8円台後半まで買いの連鎖的な暴騰となった。ベンダーによっては8.49円や8.77円の瞬間高値も見られる。1日の上昇幅としては過去最大級で12月2日以降の下げ幅を一挙に解消した。
為替差損の損失補填が具体的にどのような内容になるのか、実効性も含めて見定める必要があるが、強引である意味非常識な高インフレ下での利下げ強行と、リラ防衛のためのなりふり構わない姿勢の混在だが、市場もひとまず暴落一服として様子を探りたいところだろう。
【対ドルでも史上最安値更新から急反騰に】
ドル/トルコリラの12月20日は18.36リラから13.50リラの取引レンジ、21日早朝の終値は13.50リラで先週末終値の16.41リラからは2.91リラのドル安リラ高となった。
12月17日夜に17.06リラまで史上最安値を更新したところから下げ一服で先週を終えていたが、週明けは午前から下げ再開に入り午後に最安値を更新すると下げ止まらずに深夜安値で18.36リラまで大幅下落が続いた。しかしエルドアン大統領による為替差損補填政策の発表から急転直上型の急騰となり17リラ、16リラ、15リラ、14リラの節目を数時間で突破する暴騰商状となり、そのまま高値圏で取引を終えた。ベンダーによっては13.17リラや13.02リラの安値も見られた。21日午前序盤も13.50リラを挟んだ高値圏にとどまっている。
【エルドアン大統領、利下げ継続姿勢変わらず、リラ安の為替差損補填方針示す】
エルドアン大統領は12月19日にテレビ放映された演説で「我々は金利を引き下げている。それ以外のことを私に期待してはならない」、高利貸しを禁止するイスラムの教えを踏まえて「私はイスラム教徒として実行し続ける」と述べ、トルコ中銀にはさらに利下げを継続させる姿勢を強行に示した。また「リラ安は経済状況の結果だが新たな経済政策(利下げ)を撤回しないと」述べた。
この発言を受けて20日は早朝からリラ安が一段と加速していたが、大統領は12月20日の閣議後に再び演説し、「通貨の激しい値動きを抑制するための新たな措置を導入する」とし、「リラ預金による利益が為替差益を下回る場合、差額を補填する」と述べた。国民のリラ放れを阻止し、リラ預金での損失補填をすることでリラ預金を増やすというものだが、具体的な手法については「自由市場経済のルール内で実行する」と述べるにとどまった。これに加えて法人税を1%引き下げるとした。12月16日には物価高騰対策として最低賃金の50%引き上げを表明したが、それにより企業負担が増えることを考慮したものと思われる。
エルドアン大統領による市場予想と常識をはるかに超える金融政策及び損失補填方針により、リラ売りもひとまず急ブレーキがかかった。10月末に1ドル=9.60リラだったところから18.36リラまでリラの価値は半減した。通貨危機的な歴史的大暴落であり、揺れ返しの急騰もまた大きいが、波乱はまだ続くのではないかと警戒したい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月13日夕安値から13日深夜へ戻したものの早々に失速して14日午後に再び8円を割り込んだため、15日午前時点からは13日深夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして16日夜から20日夜にかけての間への下落を想定してきた。
12月20日夜へ一段安したところから急騰しているため、現状は12月20日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りと思われる。高値形成期は13日深夜高値を基準とすれば20日深夜にかけての間と想定されるので既に反落警戒期にあると思われるが、通常レベルを超える急騰のためさらに伸びる可能性と、急騰し過ぎの反動で下落に転じる可能性の両面を考え、7.50円以上での推移中は高値波乱の継続余地ありとし、7.50円割れからは戻り一巡による下落期入りと仮定して23日深夜から27日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では12月20日深夜からの急騰で遅行スパンが好転、先行スパンも突破しているので遅行スパン好転中は高値試しとするが、高値更新が続かなければ遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは安値試し優先へ切り替える。その際は先行スパンが下値支持帯になりやすいと考える。
60分足の相対力指数は12月17日夜から20日夜にかけての安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せてから急伸して80ポイント台へ到達した。乱高下継続の可能性もあるので弱気転換は50ポイント割れからとし、50ポイント以上での推移中はまだ高値波乱の余地ありとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.00円を下値支持線、8.50円を上値抵抗線とする。
(2)8.00円以上での推移か一時的に割り込んでも回復する内は高値波乱余地ありとし、8.00円超えからは9.00円試しを想定する。9.00円以上は反落警戒とするが、8.00円以上での推移なら22日も高値試しへ向かう可能性が残るとみる。
(3)8.00円割れから続落の場合は7.50円前後試しとみる。7.50円割れ回避で8.00円台を回復なら上昇再開とするが、7.50円を割り込む場合は急騰に対する揺れ返しの下落で7.00円割れを試す可能性が出てくるとみる。
【当面の主な予定】
12月21日
16:00 12月 消費者信頼感指数 (11月 71.1)
12月23日
20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
20:30 週次 外貨準備高 12/17時点 (12/10時点 841.5億ドル)
12月24日
17:00 11月 観光客数 前年同月比 (10月 99.25%)
12月27日
16:00 12月 製造業景況感 (11月 108.4)
16:00 12月 設備稼働率 (11月 78.1%)
12月30日
16:00 12月 経済信頼感指数 (11月 99.3)
20:30 週次 外貨準備高 12/24時点
12月31日
16:00 11月 貿易収支 (10月 -14.4億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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