連日の史上最安値更新、株価指数もサーキットブレーカーが入る暴落
〇12/17トルコリラ円、7.26から6.57の取引レンジ、トルコ中銀の連続利下げ挟み最安値更新続く
〇対ドルは17.06から15.61の取引レンジ、12/10から連日最安値更新し17リラ台まで暴落
〇2018年通貨危機時上回る暴落商状、イスタンブール100株価指数も前日比8.5%安の暴落
〇市場介入や取引規制では埒あかない下落、他の新興国通貨への危機波及を懸念
〇7円台回復すれば、7.10から7.30試すところへ戻しても不思議ない
〇リラ暴落環境変化なければ、再び史上最安値更新し6.00、5円台中盤へと順次試す流れとみる
【概況】
トルコリラ円の12月17日は7.26円から6.57円の取引レンジ、18日早朝の終値は6.92円で前日終値の7.25円からは0.33円の円高リラ安となった。
12月16日のトルコ中銀による4会合連続の利下げ強行を挟んで史上最安値更新が続いているが、17日も6.57円へ一段安となり取引時間中の史上最安値を3日連続で更新、終値ベースでは12月14日から4日連続の最安値更新となった。
トルコ中銀は12月1日から4度の市場介入を行ってきたが効き目はなく、この日も5回目となる市場介入を実施したものの効果は限定的だった。
昨年11月6日に12.03円まで当時の史上最安値を更新したところからアーバル前中銀総裁による3度の利上げで持ち直していたが、9月23日にカブジュオール現総裁が利下げに踏み切ったこところから下落再開に入り、10月21日に12円を割り込んでからは歯止めが利かなくなり、10円、9円、8円、7円と心理的な節目をことごとく割り込んできた。
当面のイベント通過感や年末も迫る状況の中でいったん買い戻しが入っても不思議ないところではあるがまだ底の見えない状況が続いている。
【対ドルでは再び史上最安値に迫る17リラ台】
ドル/トルコリラの12月17日は17.06リラから15.61リラの取引レンジ、18日早朝終値は16.41リラで前日終値の15.66リラからは0.75リラのドル高リラ安となった。
12月3日に当時の最安値13.89リラを付けた後は下げ渋りを見せていたものの12月10日に最安値を更新したところからはほぼ連日の最安値更新となり、12月13日に14リラ台へ、12月16日の中銀利下げ発表時には15リラ台後半へ、17日は16リラ台にとどまらずに17リラ台まで暴落した。
中銀の12月1日以降で5回目となる市場介入や今後のリラ安対策への警戒感と週末での利益確定での買い戻しも入って日足は長い下ヒゲを付けた。11月23日に暴落した時に日足大陽線と上ヒゲに近い印象もある。
【過去最大級のリラ暴落、イスタンブール株価指数も暴落】
1990年1月、ドル/トルコリラは1ドル=0.0023リラだった。長期的な下落が続いて2018年8月には7.21リラまで暴落した時に通貨危機的な状況に陥ったが、2018年8月の月間騰落では安値4.90リラから高値8.21リラまでドルとしては1.67倍の上昇、リラとしては凡そ6割の下落だった。今回は11月安値9.44リラから12月の現在までの高値17.06リラまでドルとしては1.80倍の上昇、リラとしては凡そ55%の下落率であり、2018年の通貨危機時を上回る暴落商状となっている。
12月17日のトルコ株式市場はそれまでのリラ安による通貨インフレを反映した上昇が続かなくなり、イスタンブール100株価指数は前日比8.5%安の暴落となった。市場では午後に二度のサーキットブレーカーが発動されて取引が停止したがほぼ安値圏にとどまり、直前の3日間の上昇分を大幅に超える下落となった。
円安になれば日経平均が上昇するように、通貨インフレを反映して自国通貨が下落した分は株高に反映されるものだが、あくまでも株高基調があってのものであり、リラ暴落がトルコ経済を破綻させかねない状況にまで深刻化したことでトルコの株式市場も暴落に見舞われる事態となった。リラ安分を除外すれば見掛けの前日比8.5%安以上の実質的な暴落規模といえる。
トルコ10年債利回りは12月17日に22%台まで急伸している。年初には12%台、8月末には16%台だったのだが、リラ暴落によるトルコ国債下落による利回り上昇であり、リラ安・株安・債券安のトリプル安となっている。
【他の新興国通貨への危機波及不安】
トルコの大手企業グループは12月18日にトルコ中銀による一連の利下げ強行は世界の経済的常識とかけ離れたものでありトルコ経済を不安定にし、リラ放れとハードカレンシーへの逃避に拍車をかけていると批判する声明を発表している。トルコの大手企業、投資家にとってはもう限界ということだろうが、エルドアン大統領はこれを政府への攻撃として非難した。
トルコ中銀は12月16日に政策金利を15%から14%へ引き下げた後、当面の利下げを完了して来年1-3月期は様子を見る姿勢を表明した。エルドアン大統領は国内の最低賃金を50%引き上げると宣言して国民の不満を抑えようとしているが、リラ暴落は最低賃金の50%引き上げでは足りないほどの下落率であり、既に生活物資や食料品等の価格高騰が庶民の生活を直撃している。過去のリラ暴落に歯止めをかけたのは通貨防衛的な利上げであり、市場介入や取引規制ではラチが明かないものだ。
暴落し過ぎの反動、年末のポジション調整、当局の規制への警戒感等からリラが反発しても、裏打ちとなる金融政策の転換姿勢が無ければ一時的なリバウンドの後には再びリラ暴落の続きが始まるのではないかと思われる。
過去のアジア通貨危機、中南米通貨危機等は、一国の通貨暴落からの連鎖反応で始まっている。トルコリラ暴落が感染拡大による景気鈍化や主要国中銀によるタカ派シフトが新興国投資マネーを引き上げさせる動きに発展すると新たな大規模通貨危機の連鎖の震源にもなりかねないと懸念される。
【当面のポイント】
12月17日夜に6.57円まで下げた後は中銀の市場介入もあって下げ渋っているが7円台回復には至らずに先週を終えている。エルドアン大統領は12月18日も利下げの効用を説き、輸出の活性から経済が復調する、リラ安は利下げによるものではなくトルコ経済への攻撃だとして先行きのさらなる利下げ姿勢を繰り返している。
7円台を回復してくれば目先の売り一服感で7円台序盤(7.10円から7.30円)を試すところへ戻しても不思議ないが、リラ暴落環境に変化の兆しが見られなければ戻り売りから再び史上最安値更新を試す流れへ進みかねないと思われる。史上最安値更新からは6.00円、5円台中盤へと順次試してゆく流れと考える。
【当面の主な予定】
12月20日
23:30 11月 中央政府債務 (10月 226.9億リラ)
12月21日
16:00 12月 消費者信頼感指数 (11月 71.1)
12月23日
20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
20:30 週次 外貨準備高 12/17時点 (12/10時点 841.5億ドル)
12月24日
17:00 11月 観光客数 前年同月比 (10月 99.25%)
12月27日
16:00 12月 製造業景況感 (11月 108.4)
16:00 12月 設備稼働率 (11月 78.1%)
12月30日
16:00 12月 経済信頼感指数 (11月 99.3)
20:30 週次 外貨準備高 12/24時点
12月31日
16:00 11月 貿易収支 (10月 -14.4億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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