トルコリラ円見通し トルコ中銀の三度目市場介入も効果薄く対ドルで最安値更新(21/12/13)

トルコリラ円の12月10日は8.27円から8.11円の取引レンジ、11日早朝の終値は8.16円で前日比終値の8.22円からは0.06円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の三度目市場介入も効果薄く対ドルで最安値更新(21/12/13)

トルコ中銀の三度目市場介入も効果薄く対ドルで最安値更新

〇トルコリラ円、11日早朝終値8.16で前日終値8.22からは0.06円の円高リラ安に
〇ドル/トルコリラは10日の下落で13.95をつけ史上最安値更新
〇10日トルコ中銀が12/1以降で三度目の市場介入を行うも効果は見られず、リラの先安感助長
〇大手格付け会社S&Pグローバル、トルコ格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更
〇16日の中銀金融政策、市場の事前予想は現行15.0%から14.0%への利下げ見込み
〇8.24から8.30手前は戻り売りにつかまりやすいとみる
〇8.10割れからは8.05試し、8.05割れからは8.00、7.50、7.00を順次試す流れとみる

【概況】

トルコリラ円の12月10日は8.27円から8.11円の取引レンジ、11日早朝の終値は8.16円で前日比終値の8.22円からは0.06円の円高リラ安となった。
トルコ中銀が12月1日と12月3日に続いて三度目の市場介入を行ったものの効果は限定的で、12月3日に付けた取引時間中の史上最安値8.05円(ベンダーによっては8.08円や8.10円等でまちまち)の後は新たな安値更新を回避しているものの、終値ベースでは12月2日の8.22円を12月6日の8.21円で割り込み、12月10日も終値ベースでの最安値更新となった。また12月3日に8.08円や8.10円を安値としていたベンダーでは12月10日に8.05円のレート表示もあって取引時間中の最安値更新となったところも見られる。
日足は12月8日から10日まで3連続の陰線引けであり、最安値圏で12月16日のトルコ中銀金融政策決定会合へ向かう。

【対ドルでは史上最安値を更新】

ドル/トルコリラの12月10日は13.95リラから13.70リラの取引レンジ、11日早朝終値は13.87リラで前日終値の13.78リラからは0.09リラのドル高リラ安となった。
12月3日に13.89リラへ取引時間中の史上最安値を更新した後は新たな安値更新を回避していたものの10日の下落で最安値を更新した。終値ベースでも12月6日終値13.78リラを超えて最安値更新となった。
高インフレ下での3会合連続の利下げ強行と今後もさらに利下げ政策を継続する姿勢をエルドアン大統領が繰り返し主張してきたことでリラの先安感は拭えず、12月10日はトルコ中銀が12月1日以降で三度目の市場介入を行ったものの効果は見られず、かえってリラの先安感を助長した印象だ。
12月10日夕に発表されたトルコの10月失業率は11.2%で9月の11.4%から若干改善した。今年4月に13.5%まで悪化した後は改善傾向を示しているが依然として10%を超える水準にある。

【トルコのS&P格付け 見通しネガティブ】

12月10日に大手格付け会社S&Pグローバル・レーティングはトルコの外貨建て長期債格付けを「B+」、自国通貨建て長期債格付けを「BB−」にそれぞれ据え置いたが、見通しについては従来の「安定的」から「ネガティブ」に変更した。
ムーディーズは去年9月にトルコの格付けを「B1」から「B2」へ格下げして見通しを「ネガティブ」としてきたが今年12月3日には格付け及び見通しのいずれも据え置いている。
フィッチ・レーティングスは去年8月21日時点で格付けを「BB−(BBマイナス)」で据え置いて見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたが、その後もこの評価のままとなっている。

【トルコ中銀は追加利下げへ】

トルコ中銀は12月16日に金融政策委員会(MPC)を開くが、市場の事前予想では現行の15.0%から14.0%への利下げが見込まれている。予想レンジは13.0%への大幅引き下げから15.0%での据え置きまでやや広い。
12月2日時点でトルコ中銀のカブジュオール総裁は12月会合で利下げをした後は様子を見る姿勢を国内投資家向けの会合で述べたとされるが、総裁発言の後もエルドアン大統領による利下げ継続政策の強調は繰り返されている。

前任のアーバル総裁は三度の利上げで昨年11月へのリラ暴落に歯止めをかけたが、今年3月に突然解任されている。カブジュオール総裁はエルドアン大統領と同様に「利下げがインフレを抑える」との異説を主張していた過去もあり、エルドアン大統領の強硬姿勢には逆らえないのだろうと思われ、仮に12月16日に利下げされた後で打ち止め感を表明したとしても市場がそれを信じるかどうかは疑わしく、より確りした金融政策姿勢を正す動きがみられなければ投機家のリラ売り攻勢、国内投資家のリラ放れは進むのではないかと思われる。
仮に14%へ利下げされたところで目先のイベント通過感でリラが買い戻されたとしてもリラ高へ進む根拠には欠けるため、戻り一巡後には再びリラ売りが仕掛けられるのではないかと思われる。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

12月16日未明の米FOMC政策発表、16日夜ECB理事会、英中銀MPCと重要イベントが続く中でトルコ中銀の金融政策決定会合も開かれる。為替市場全般の動きに左右されつつ、仮にドル全面高となる中でトルコ中銀の利下げからリラ売りが進むようだと下げ足も早まる可能性があると注意する。
(1)当面、8.05円を下値支持線、8.30円を上値抵抗線とみておく。
(2)8.24円から8.30円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)8.10円割れからは8.05円試しとし、8.05円割れからは8.00円、7.50円、7.00円を順次試す流れとみる。

【2019年7月以降のリラ安とトルコ中銀及び大統領の動き】

・2019年7月 6日、トルコ中銀ウイサル総裁就任、在任中 24.0%から8.25%へ利下げ
・2020年11月6日、 史上最安値を12.03円へ更新
・2020年11月 7日、トルコ中銀ウイサル氏解任、アーバル総裁就任、三度の利上げ(10.25%→19.00%)
・2021年 1月28日、アーバル総裁、「2023年まで引き締め継続」と発言
・2021年 2月16日、15.28円まで上昇、2020年11月以降の最高値
・2021年 3月19日、トルコ中銀アーバル氏解任、カブジュオール総裁就任、
・2021年3月22日、前日の15円台から13.33円へ暴落
・2021年 6月 2日、12.42円へ下落
・2021年 9月 2日、カブジュオール総裁「インフレ率を下回る政策金利にしない」姿勢で13.32円へ上昇
・2021年9月 8日、カブジュオール総裁「コアCPIを政策金利判断目安」

・2021年 9月23日、トルコ中銀、19.0%から18.0%へ利下げ、9月27日安値12.42円へ下落後
・2021年10月14日、エルドアン大統領、中銀副総裁2名、委員1名を解任、リラ安再開
・2021年10月21日、トルコ中銀、18.0%から16.0%へ利下げ、11.92円へ急落で史上最安値更新
・2021年10月25日、エルドアン大統領、欧米10か国大使追放指示騒動 11.50円へ史上最安値更新
・2021年11月10日、10月25日安値を割り込み、23日まで10日連続で最安値更新、10.0円を割り込む
・2021年11月17日、エルドアン大統領、「金利と戦う」と利下げ姿勢を強調する演説、10.29円へ最安値更新
・2021年11月18日、トルコ中銀、市場予想通りに15.0%へ利下げ

・2021年11月23日、8.47円へ最安値を更新
・2021年12月01日、トルコ中銀が市場介入、エルバン財務相辞任
    エルドアン大統領「新たな政策方針に後戻りはない」「選挙前には金利が大幅に低下する」
・2021年12月02日、カブジェオール総裁、「12月利下げ後は積極的な金融緩和を休止する」発言
・2021年12月03日、8.05円へ最安値更新、11月CPI前年比20%超え、トルコ中銀、二度目市場介入
・2021年12月10日、トルコ中銀、三度目の市場介入

【当面の主な予定】

12月12日
 16:00 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 8.9%、予想 8.3%)
 16:00 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.5%)
 16:00 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 15.9%)
 16:00 10月 小売売上高 前月比 (9月 1.2%)
 16:00 10月 経常収支 (9月 16.52億ドル、予想 24.00億ドル)
12月15日
 17:00 11月 財政収支 (10月 -174.1億リラ)
12月16日
 20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合
週間レポレート  (現行 15.00%、予想 14.00%、予想レンジ 13.00%〜15.00%)
翌日物貸出金利 (現行 16.50%)
翌日物借入金利 (現行 13.50%)
後期流動性貸出金利 (現行 19.50%)
 20:30 週次 外貨準備高 グロス 12/10時点 (11/29時点850億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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