トルコリラ円見通し 終値ベースで史上最安値更新
〇トルコリラ円、12/6は8.26から8.09の取引レンジ、終値ベースで史上最安値更新
〇対ドル、12/6は13.88から13.56の取引レンジ、終値ベースで3日連続最安値更新
〇オミクロン株への楽観的な見方台頭しリスク選好感回復するも、リラ買いの動きは限定的
〇韓国、トルコとの通貨スワップ協定による損失懸念報じられる
〇8.30以下での推移中は下向きとし、8.10割れからは8.05、8.00等を順次試す流れとみる
〇8.40手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、8.40超えからは8.50前後への上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の12月6日は8.26円から8.09円の取引レンジ、7日早朝の終値は8.21円で先週末終値8.23円から0.02円の円高リラ安となった。取引時間中の史上最安値は12月3日に付けた8.05円で終値ベースの最安値は12月2日の8.22円だったが、12月6日は終値ベースでの史上最安値更新となった。
12月3日に発表されたトルコの11月消費者物価上昇率が予想を上回って前年比21.31%となり10月から伸びが加速、コア指数の前年比も10月の16.8%から17.6%へ上昇、生産者物価上昇率の前年比は54.62%まで跳ね上がったことで一段とリラ売り攻勢がかかり、トルコ中銀が市場介入を実施したと公表したことで一時的に戻したものの早々に売られて最安値近辺で先週を終えていた。
週明けの12月6日は新たなトルコ由来の材料は見られなかったものの、積極的な反騰期待をもたらす動きは見られず、8.20円を中心としてほぼ横ばいの推移にとどまった。
【対ドルでも終値ベースの最安値を更新】
ドル/トルコリラの12月6日は13.88リラから13.56リラの取引レンジ、7日早朝の終値は13.78リラで先週末終値の13.70リラからは0.08リラのドル高リラ安だった。
12月3日安値で13.89リラを付けて取引時間中の史上最安値を更新したが、12月6日は新たな安値更新を回避したものの終値ベースでは12月2日から3日連続で最安値更新となった。
12月6日はNYダウが一時700ドル高を超える急騰となり、米長期債利回りが大幅上昇して為替市場全般でドル高感が強まった。オミクロン株の感染拡大が気になるところではあるが、今のところ欧米では無症状と軽症者がほとんどとされているため、景気回復を頓挫させるような悪影響には至らないとの楽観的な見方が台頭したことが背景だ。アジア・中東での感染確認も増えており、欧州ではオミクロン株発生以前に感染再拡大が深刻化していることを踏まえればリスク選好感が回復してきたとは言え、通貨市場においては新興国通貨買い等へと投機的ポジションを積極的に取りたいという動きには至らず、歴史的なリラ暴落の最中にあってはリラ買いの動きも限定的だ。
【韓国ではトルコとの通貨スワップによる損失懸念も】
韓国経済新聞(コリアン・エコノミック・デイリー)は韓国がトルコと結んでいる通貨スワップ協定により、現在のリラ暴落で韓国が損失を被ることが懸念されていると報じた。
韓国銀行は8月12日にトルコとの通貨スワップ協定を締結したが、契約金額は2兆3000億ウォン・175億リラで契約期間は3年とされている。通貨スワップ協定ではいずれかの国の通貨で非常事態が発生した場合に備えて相手国に自国通貨を預け、予め締結した為替レートで相手国通貨を借りることができるという協定だが、リラ暴落により現在の価値が1兆5000億ウォン(凡そ1456億円)にまで暴落しているという。最悪の場合には韓銀が2兆3000億ウォンを回収できない事にもなりかねないとしている。
トルコは中国とも通貨スワップ協定を結んでいるが、中国は体力や政治的な背景を踏まえて問題を表面化させることもなかろうが、韓国においてはトルコとの通貨スワップ協定そのものに対する批判も噴出する可能性があるのではないかと思われる。
トルコ中銀はこのところ二度の市場介入を行っているが、名目的なスワップ協定による外貨準備高分を除くと既に枯渇しているのではないかとの見方もされており、今後は介入を繰り返してゆくことも難しくなるかもしれない。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月1日の中銀による市場介入で一時急騰したところから大統領発言により反落したため、12月2日午前時点では12月1日夕安値を直近のサイクルボトム、1日夜の急騰時高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとし、ボトム形成期を12月6日午後から8日夕にかけての間と想定した。
12月2日深夜に安値を更新してからも反騰しきれずにいるので引き続きボトム形成中とみる。強気転換には8.50円を超える反騰が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では12月3日以降は8.20円を挟んだ揉み合いが続いているので遅行スパンは実線と交錯して方向感に欠けるが先行スパンからの転落を解消できないうちは一段安警戒とし、先行スパンを上抜き返す場合はいったん戻しに入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は8.20円を挟んでの揉み合いが続いているため50ポイント台では売られている。40ポイント以下での推移が続く場合は下向きとし、安値更新からは20ポイント台を目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.05円を下値支持線、8.40円を上値抵抗線とする。
(2)8.30円以下での推移中は下向きとし、8.10円割れからは8.05円、下げ足が速まる場合は8.00円等を順次試す流れとみる。8.30円以下での推移なら8日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.40円手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、8.40円超えからは反騰入りの可能性ありとみて8.50円前後への上昇を想定する。
【当面の主な予定】
12月09日
20;00 週次 外貨準備高(グロス) 12/3時点 (11/26時点 870.2億ドル)
12月10日
16:00 10月 失業率 (9月 11.5%)
12月12日
16:00 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 8.9%)
16:00 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.5%)
16:00 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 15.9%)
16:00 10月 小売売上高 前月比 (9月 1.2%)
16:00 10月 経常収支 (9月 16.52億ドル
12月15日
17:00 11月 財政収支 (10月 -174.1億リラ)
12月16日
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.00%)
注:ポイント要約は編集部
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