もみあいを下抜けて113円をトライか
〇先週のドル円、113円台前半は買い、114円台前半は売りと方向感が出ないままの一週間
〇週末の米国雇用統計は強く買いが先行したものの米金利低下に押されての売りに
〇今週は中銀関係者の利上げタイミング前倒しに関連する発言が出れば反応しやすい
〇ドルにとっての好材料への反応鈍く、ポジション的にドル買いが増えていると思われる
〇114円台の上値は重く高値切り下げる展開、113円台前半のサポートは下抜けの可能性あり
〇今週は113.00レベルをサポートに114.00レベルをレジスタンスとする流れとみる
今週の週間見通し
先週のドル円は、週明けは日本の総選挙で始まり、週半ばはFOMC、週末は米国雇用統計と週を通してイベントが多い一週間でした。総選挙の結果は国内材料ですから、与党が予想以上に健闘した結果を好感した株式市場のリスクオンの動きが円安地合いとしての影響を与え、週間高値は月曜の欧州市場序盤につけました。
その後FOMCに向けては売られても113円台前半は買い、買われても114円台前半は売りとこれまで同様のもみあいを繰り返していましたが、FOMCではテーパリングは11月開始となったものの、パウエルFRB議長がこれまでのハト派的スタンスを崩さなかったことから上下に振れるも方向感は出ず。週末の米国雇用統計は強く買いが先行したものの米金利低下に押されての売りと、イベントを経過しても方向感が出ないままの一週間で終わりました。
今週は週初からFRB関係者をはじめ中銀関係者の発言が目立ちます。金融政策会合が終わり講演が多いのですが、会合直後で想定外の話も出て来ないでしょうから、それでもって動きに変化が出てくるか疑問ですし、米国CPIも仮に強いままであったとしても、それですぐに影響が出るかというとそれも無いでしょう。ただし、12月15日のFOMCでの金利見通しでは前回9月よりも利上げタイミングは前倒しの予想が増えると見られ、それに関連する発言が出てくる場合には反応しやすいでしょう。ただ、それでもこれまでのもみあいを抜けられるかどうかとなると難しいように思えます。
テクニカルにはもみあっているものの、妙に上値が重く反転パターンにつながりそうなチャートに見えます。日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
引き続き10月安値と10月高値に対するフィボナッチ・リトレースメントの38.2%押し113.21がターゲット兼反転パターンのネックラインとなっていることがわかります。現在はこのネックラインの若干手前がサポートの水準となっていますが、もし終値でこの水準を下回ってくると半値押しにあたる112.75が視野に入ってきます。
いっぽうで10月高値からのレジスタンスライン(ピンク)が今週は114円台前半を低下中で、ここを上抜けてくると反転パターンはお預けで、これまでのもみあい継続となりますが、更にレンジを狭めて80銭程度のもみあいとなる可能性もあるかもしれません。ただ、先週の動きを見ている限りドルにとっての好材料への反応が鈍くなってきていて、おそらくはポジション的にドル買いが増えているのだと思われます。
実際シカゴの通貨先物の円売りポジションはここ3週間10万枚を超えて推移していることから、クロス円なども含めてグローバルに円売りポジションが積みあがっているのではないかということは言えるでしょう。そうなると、引き続き114円台前半の上値は重く高値を切り下げる展開、113円台前半のサポートは状況次第で下抜けの可能性があるというところではないかと思います。
ネックライン下抜けの可能性を考えて、今週は113.00レベルをサポートに114.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
11月8日(月)
**:** NY市場冬時間移行 ☆
08:50 日銀会合主な意見公表
22:10 レーンECB理事講演 ☆
23:00 クラリダFRB副議長講演
24:30 パウエルFRB議長講演 ☆
26:00 ボウマンFRB理事講演、(フィラデルフィア連銀総裁講演)
27:50 シカゴ連銀総裁講演
**:** ユーロ圏財務相会合
11月9日(火)
08:50 本邦9月貿易収支(国際収支)
09:01 英国10月小売売上高
09:30 豪州10月企業景況感
16:00 ドイツ9月貿易収支
16:45 パネッタECB理事講演、フィンランド中銀総裁講演
19:00 ドイツ11月ZEW景況感 ☆
19:00 ユーロ圏11月ZEW景況感
22:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
22:30 米国10月PPI ☆
23:00 オランダ中銀総裁講演
23:00 パウエルFRB議長講演 ☆、(セントルイス連銀総裁講演)
25:00 英中銀総裁講演☆、シュナーベルECB理事講演
25:35 サンフランシスコ連銀総裁講演
27:30 (ミネアポリス連銀総裁講演)
**:** EU財務相会合
11月10日(水)
08:30 豪州11月消費者信頼感
10:30 中国10月CPI・PPI ☆
16:00 ドイツ10月CPI ☆
16:00 トルコ9月失業率
18:30 エルダーソンECB理事講演
22:30 米国10月CPI ☆
22:30 米国新規失業保険申請件数
24:00 米国9月卸売売上高
24:30 週間原油在庫統計
11月11日(木)
**:** 米国祝日(債券市場休場)☆
09:00 NZ11月企業信頼感
09:01 英国10月住宅価格
09:30 豪州10月失業率
16:00 英国7〜9月期GDP速報値 ☆
16:00 英国9月鉱工業生産、9月貿易収支
16:00 トルコ9月鉱工業生産
25:00 シュナーベルECB理事講演
11月12日(金)
16:00 トルコ9月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏9月鉱工業生産
22:50 レーンECB理事講演 ☆
24:00 米国11月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
26:10 NY連銀総裁講演 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
11月1日(月)
週明けの金融市場は、総選挙の結果が事前予想に反して与党が大健闘、自民は単独で安定多数を維持したことを好感して日経平均株価が大きく窓を開けて上昇、リスクオンの動きからドル円も円安に動きました。欧州市場序盤には114.44レベルの高値をつけましたが、その後はユーロドルの買いによるドル売りの動き、NY市場では米金利低下も加わって朝方の水準に押して引けました。
11月2日(火)
ドル円は2日後場の豪ドル中銀会合の内容は想定内ではあったものの市場参加者は豪ドル売りで反応し、豪ドル円の売りがドル円での売りにもつながりました。欧州市場では113.46レベルまで下げたものの下げきれず、NYの引けにかけては114円目前まで水準を切り上げて引けました。
11月3日(水)
ドル円は東京市場が休場でFOMCを控えていることからNY市場までは113円台後半の狭い値幅でのもみあいが続きました。NY市場ではテーパリング決定は織り込み済み、強めの経済指標を受けてドルがやや買われてのFOMC待ちとなりました。FOMCでは予想通りテーパリングを決定し今月から始まることが示されました。いっぽうでインフレについては今まで同様に一時的とし、利上げのタイミングでは無いとこれまでのハト派的スタンスを維持したことで、株式市場は上昇、為替市場は若干ドル安で反応し、114円近辺での引けとなりました。
11月4日(木)
ドル円はFOMC後の米株上昇に沿って日経平均先物も上昇した動きから円安の動きが先行し、欧州市場序盤に114.28レベルの高値をつけました。しかし、週間高値はトライしきれず、欧州市場では日経先物が下げ始める動きとともにドル円は下げに転じNY前場には113.51レベルの安値をつけ、引けにかけてはやや買い戻されました。
11月5日(金)
注目の米国雇用統計を前にドル円は113.70前後でのもみあいを続けていました。発表前には前回が悪かったため強めの数字を期待する向きも多く若干ドル買いが目立っての指標待ち。結果は失業率がさらに改善し4.6%、NFPも+53.1万人と強く、発表直後は114.03レベルと114円台に乗せましたが、114円台ではドル売りも多く反落、さらには債券市場で週末前のポジション調整と見られる動きがあり、債券買い戻し(長期金利低下)の動きからドル安となり、ドル円は113.30レベルまで下押し後に若干戻して引けました。
ディスクレーマー
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