トルコリラ円見通し 日足は4日連続陰線で終値ベースの史上最安値を更新(21/11/8)

トルコリラ円の11月5日は11.77円から11.63円の取引レンジ、6日早朝の終値は11.67円で前日終値の11.70円からは0.03円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 日足は4日連続陰線で終値ベースの史上最安値を更新(21/11/8)

トルコリラ円見通し 日足は4日連続陰線で終値ベースの史上最安値を更新

〇トルコリラ円、11/5は11.77から11.63の取引レンジ、4日連続日足陰線、終値ベースで最安値更新
〇ドル/トルコリラ、11/6早朝終値9.67、11/4高安レンジ内推移だが、史上最安値更新への余裕乏しい
〇今年のトルコ成長率、9%前後高水準に達し、2022年以降も高成長率維持との見方が濃厚
〇リラ暴落継続、エルドアン大統領経済外交政策、トルコ中銀金融政策への不信感は高成長期待の妨げ
〇11.90超えからは12.00前後試しへ向かうが、戻り売りにつかまりやすいとみる
〇11.70以下での推移中は下向きとし、10/25安値11.50割れは回避しつつやや買い戻される展開とみる

【概況】

トルコリラ円の11月5日は11.77円から11.63円の取引レンジ、6日早朝の終値は11.67円で前日終値の11.70円からは0.03円の円高リラ安だった。
10月21日のトルコ中銀による2%の大幅利下げにより当日高値12.41円から11.92円へ急落して昨年11月6日安値12.03円を割り込んで史上最安値を更新、22日も利下げショックを引きずって11.76円まで安値を切り下げていたところ、エルドアン大統領が欧米10か国大使によるトルコ人慈善家への不当拘留を批判する声明に激怒して10か国大使の国外追放を示唆したとの報道で10月25日には11.50円まで大幅続落した。
大統領による大使追放指示の撤回でこの問題はひとまず落ち着き、利下げショックによる狼狽売りも落ち着いたことで10月26日には12.10円まで戻したものの、その後も先行き不信感を背景としてリラ売りの流れが継続したために11月2日から5日まで4日間連続での陰線で下落し、10月25日安値割れには至っていないものの終値ベースでの史上最安値を前日に続いて更新している。

【対ドルでも再び最安値へ徐々に迫る】

ドル/トルコリラの11月5日は9.74リラから9.65リラの取引レンジ、6日早朝の終値は9.67リラで前日終値の9.69リラからは0.02リラのドル安リラ高だった。
10月25日の急落で9.85リラへ史上最安値を更新、いったん10月26日に9.38リラまで戻したところから再び下落基調に入り11月4日には安値で9.76リラを付けて最安値に迫った。
11月5日は米雇用統計後にドル安反応となったことでトルコリラへの売り圧力もやや収まったことで11月4日の高安レンジ内に収まっての推移にとどまったが、11月2日からは日々の戻り高値が徐々に切り下がっており、史上最安値更新への余裕も乏しい状況のままで週を終えた印象だ。

【高成長期待と裏腹な信用失墜】

10月26日に公表された2022年のトルコ大統領年次報告書においては2022年の成長率を5%、インフレ率は9.8%へ低下すると予想されている。高インフレに見舞われてきたものの今年の4-6月期には21.7%の成長率を実現しており、2021年の年間では7.9%成長を予想している。
10月21日にIMF(国際通貨基金)は中東・中央アジア成長見通しにおいてトルコの今年の成長率を9.0%と予想している。
11月4日に公表された欧州復興開発銀行(EBRD)の報告書では、今年のトルコの成長率は9.0%と予想して今年6月時点の5.5%から大幅に引き上げられた。
格付け大手のムーディーズ社は11月4日にトルコの2021年の成長率を従来予想の6.0%から9.2%へ上方修正し、2022年を4.8%とした。インフレ率については2021年を19%、2022年を16%超と予想した。
同じく格付け大手のフィッチレーティングス社は11月5日に、トルコ経済は力強い回復力がありとし、トルコの今年の成長率見通しを9.2%、2022年を3.5%、2023年を4.5%予想した。インフレ率については今年は17%にとどまり来年は13%へ低下すると予想した。

このように総じて今年のトルコ成長率は昨年のコロナ不況からの立ち直りにより9%前後の高い水準に達し、コロナ不況時との比較が落ち着く2022年以降も高い成長率を維持するのではないかとの見方が濃厚だ。このことは外資にとっては投資意欲をそそるものとなるのだが、一方でリラの暴落継続への不安、高インフレの進行が止まらなくなる不安とそれに対するエルドアン大統領による経済外交政策及びトルコ中銀の金融政策への不信感が妨げとなっている。世界的な金融緩和から金融引き締めへの動きによる過剰流動性供給=投機マネーのボリューム低下も今後の新興国通貨にとっては大きな課題となる。
為替市場としてはひとまず10月25日への史上最安値更新後はやや落ち着いているものの、最安値更新への余裕もさほどないため、リラ売りにつながるような悪いニュースが飛び込んでくると投げ売りも発生しやすい状況だ。

【当面のポイント、ひとまず落ち着けるか、2020年8〜11月の下落型で進むか】

【当面のポイント、ひとまず落ち着けるか、2020年8〜11月の下落型で進むか】

トルコ中銀はウイサル総裁時代の2019年7月から利下げを繰り返して2019年6月に24.0%だったところから2020年2月には10.75%まで政策金利を引き下げてきた。インフレ率が低下したことが先行してそれを追いかけるような形での利下げだったため、現状のようなマイナス金利には陥らず、リラ取引への規制の動きもあってトルコリラ円はさほど大きな動きにはならずに17円台を下値支持線として20円には届かない程度の範囲での持ち合いで推移していた。しかし利下げ進行で政策金利がインフレ率を下回り始め、そこに2020年2月からのコロナショックが発生したことで金融市場全般が動揺したために持ち合いから転落、2020年11月にアーバル新総裁が利上げに踏み切って立て直しを図るまで暴落が続いた。

インフレが落ち着くなら順序が逆でもリラ安が落ち着き、資金調達への圧迫感が弛んで成長を促進するエルドアン大統領の作戦が成功する可能性も考えられるが、インフレがさらに進行して通貨安が一段とインフレを加速させるようなことになるとハイパーインフレ化への懸念から暴落商状の先が見えなくなる可能性も出てくる微妙な状況にあると思われる。当面は不安定な市場心理の中での推移が続くのではないかと思われる。

以上を踏まえて中勢のポイントを示す。
(1)10月25日の史上最安値安値11.50円を下値支持線、10月26日の戻り高値12.10円を上値抵抗線とし、11月18日の次回トルコ中銀金融政策決定会合まではこの高安レンジ内での推移を想定する。
(2)11.90円超えからは12.00円前後試しへ向かうとみるがそこは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)11.70円以下での推移中は下向きとみるが、11.50円割れは回避しつつやや買い戻される展開とみる。ただしリラ売りを誘発する新たな悪材料が出て11.50円を割り込む場合は11.00円、10.50円試しへと向かう可能性も抱えていると注意する。

【当面の主な予定】

11月10日
 16:00 9月 失業率 (8月 12.1%)
11月11日
 16:00 9月 経常収支 (8月 +5.28億ドル)
 20:30 週次外貨準備高 11/5時点
11月12日
 16:00 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 5.4%)
 16:00 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 13.8%)
 16:00 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.3%)
 16:00 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 15.0%)
11月15日
 17:00 10月 財政収支 (9月 1235.9億リラ)
11月18日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 週間レポレート (現行 16.0%)

注:ポイント要約は編集部

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