トルコリラ円見通し 3日連続の日足陰線で下落、日足終値ベースでは最安値更新(21/11/5)

トルコリラ円の11月4日は11.84円から11.63円の取引レンジ、5日早朝終値は11.70円で前日終値の11.80円からは0.10円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し 3日連続の日足陰線で下落、日足終値ベースでは最安値更新(21/11/5)

トルコリラ円見通し 3日連続の日足陰線で下落、日足終値ベースでは最安値更新

〇トルコリラ円、11/4午後から下落再開となり11/4夜安値11.63をつけ、11/3夕安値11.60に迫る
〇3日連続の日足陰線、日足終値ベースで最安値更新
〇ドル/トルコリラは11/4日早朝9.60へ戻すも失速し11/4夜9.76へ下落、終値ベースで最安値更新
〇高インフレの中大幅利下げを強行したトルコ中銀・大統領への不信感、リラ売り圧力継続させる印象
〇11.70を上回るうちは、11.75から11.80手前への上昇余地ありとみる
〇11.70以下での推移中は下向きとし、11/4夜安値11.63割れからは11.50台前半への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の11月4日は11.84円から11.63円の取引レンジ、5日早朝終値は11.70円で前日終値の11.80円からは0.10円の円高リラ安となった。
11月3日のトルコ10月消費者物価上昇率発表から高インフレ状態の継続が嫌気されて3日夕安値11.60円まで下げて10月25日に付けた史上最安値11.50円へ迫ったもののいったん買い戻しが入ったことで3日の日足はやや長い下ヒゲの付いた陰線となっていた。しかし戻りは続かずに4日午後からは下落再開となって4日夜安値で11.63円を付けて3日夕安値に迫った。
新たな安値更新は回避しているものの日足の終値ベースでは昨年11月6日終値の12.11円を10月21日終値11.95円で割り込み、10月22日終値11.79円へ下げた後は下げ渋りとなっていたものの11月4日終値11.70円で最安値更新となっている。

【対ドルでも再び最安値へ徐々に迫る】

ドル/トルコリラの11月4日は9.76リラから9.60リラの取引レンジ、5日早朝の終値は9.69リラで前日終値の9.63リラからは0.06リラのドル高リラ安となった。
11月3日夜に9.74リラへ下落してから4日早朝にいったん9.60リラまで戻したものの勢いは続かずに失速して4日夜はドルストレートでドル全面高の様相となり夜安値9.76リラへ下落して10月26日以降の安値を更新している。取引時間中の最安値は10月25日安値に付けてから更新していないものの、終値ベースでは最安値更新となっている。

11月4日の米FOMCを通過した後はイベント通過によりユーロ等が買い戻されていたが、4日夜の英中銀による政策金利と量的緩和規模の現状維持決定からポンドが急落したことを呼び水としてユーロも一段安、豪ドル等も下落してドル高感が強まった。4日夜にはメキシコペソが対ドルで6月9日以降の安値を更新、南アランドも対ドルで6月7日以降の安値を更新するなど新興国通貨安も目立った。
主要国中銀は利上げを急がない姿勢を揃って強調しているものの徐々に引き締めへの姿勢変化が見られ始めており、パンデミック対策での世界規模の量的緩和による投機マネーの過剰流動性が徐々に委縮へ向かうとの認識が強まれば新興国通貨への売り圧力も無視できなくなってくるところだ。そうした中で高インフレにあって大幅利下げを強行したトルコ中銀及び大統領への不信感が拭えずにリラ売り圧力も継続している印象だ。

【トルコの内憂外患】

エルドアン大統領は高インフレの進行中にもかかわらずトルコ中銀の副総裁2名らを突然解任し、10月21日のトルコ中銀による2%の大幅利下げを強要した。トルコの経済成長は続いており、IMF(国際通貨基金)が10月21日に公表した中東中央アジア成長見通しにおいてはトルコの今年の成長率は9.0%と予想されている。今年1-3月期は前期比2.2%、4-6月期は0.9%だったが、前年同期比では1-3月期が7.2%、4-9月期が21.7%とコロナショックに見舞われた昨年からは大幅に改善している。この点はトルコへの成長期待と投資意欲をそそるものだが、一方では高インフレが続く中で無理筋の利下げを強行したことでリラは対円、対ドル、対ユーロ等で史上最安値を更新しており、内外の投資家にとってはリラ暴落のリスクを抱えることになる。トルコの株価指数が上昇してもリラ安によるかさ増しならば魅力も落ちる。

一方でエルドアン大統領による外交的な強硬姿勢も相変わらずであり、トルコの慈善活動家への不当拘留を批判した欧米10か国の大使を国外退去させるように外務省へ指示したと報じられたことで10月25日にリラは最安値を更新した。この問題は欧米側が態度を硬化させなかったことでエルドアン大統領も指示を撤回して落ち着いたが、10月31日のG20首脳会議におけるバイデン米大統領との会談でも両国の関係向上にはつながらず、相変わらずトルコによるロシア製ミサイル導入への非難とNATOによるF35開発からのトルコの排除という問題が両国関係及びNATO内のトルコの立ち位置を危うくしている。
2023年にはトルコの大統領選挙があり再選を目指すエルドアン大統領にとっては国内のインフレ抑制と安定的な経済成長、外交問題での優位な進展が必要であり、あせりが利下げ強行等に表れているのではないかと懸念される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月1日夜へ戻り高値を切り上げたところからの反落により11月2日午前時点では弱気サイクル入りとして11月2日夕から4日夕にかけての間への下落を想定していたが、11月3日夜に一段安したところから0.10円以上の反騰となったため、4日午前時点では10月28日夕安値から4日目となる11月3日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期は11月4日夜から8日夜にかけての間と想定したが、戻りは短命の可能性もあるとして11.70円割れからは弱気サイクル入りとした。
11月4日夜に11.70円割れへ下落したため、11月4日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして、8日夜から10日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月4日午後からの下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからの転落も続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。
60分足の相対力指数は4日夜への下落時に30ポイントを割り込んだところから持ち直しているが、50ポイント台では抵抗感も出やすいとみて40ポイント割れからは下げ再開とみる。強気転換には60ポイントに到達するような反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月4日夜安値11.63円を下値支持線、11.80円を上値抵抗線とする。
(2)11.70円を上回るうちは11.75円から11.80円手前への上昇余地ありとみるがそこは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)11.70円以下での推移中は下向きとし、4日夜安値割れからは11.50円台前半への下落を想定する。11.55円以下は反騰注意圏とするが、11.70円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11月10日
 16:00 9月 失業率 (8月 12.1%)
11月11日
 16:00 9月 経常収支 (8月 +5.28億ドル)
 20:30 週次外貨準備高 11/5時点
11月12日
 16:00 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 5.4%)
 16:00 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 13.8%)
 16:00 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.3%)
 16:00 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 15.0%)
11月15日
 17:00 10月 財政収支 (9月 1235.9億リラ)

11月18日 トルコ中銀金融政策決定会合


注:ポイント要約は編集部

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