ドル円見通し クロス円の全面安と米長期債利回り低下に圧迫される(21/11/5)

クロス円全般が大幅下落したこと、また米長期債利回りがFOMC後に低下していることが重なったためにドル円も下落に転じた。

ドル円見通し クロス円の全面安と米長期債利回り低下に圧迫される(21/11/5)

ドル円見通し クロス円の全面安と米長期債利回り低下に圧迫される

〇ドル円、クロス円の上昇に引っ張られ11/4午後に114.27まで戻す
〇その後クロス円全面安・米長期債利回り低下を受け下落に転じ、11/4深夜に113.49まで下げる
〇英中銀は金利据え置き・利上げ判断は時期尚早と判断、主要中銀の引き締めへの姿勢まだ緩い
〇米長期債利回り低下、株価はNYダウが5日ぶりに反落するもナスダックは史上最高値更新
〇114円以下での推移中は下向きとし、113.49割れからは113.25から113.00を試すとみる
〇114円超えからは114.27試しとし、高値更新からは114.50から115.00の上昇を想定する

【概況】

ドル円は11月2日夕安値で113.45円まで下げたところから持ち直して4日未明のFOMCへ向かい、FOMC声明及び米連銀議長会見から若干乱高下したもののクロス円の上昇に引っ張られて4日午後には114.27円まで戻していた。しかし4日夜は英中銀が利上げを急がない姿勢を示したことでポンドが急落、FOMC後に戻していたユーロも反落するなど総じてドルストレートでドル高がぶり返しに入り、クロス円全般が大幅下落したこと、また米長期債利回りがFOMC後に低下していることが重なったためにドル円も下落に転じた。
11月4日深夜に113.49円まで下げたところからはやや買い戻されており11月2日夕安値割れは回避しているものの11月1日高値114.44円を超えられずに失速したことで10月20日高値114.69円以降の調整的な動きが長引いている印象となった。

【英中銀は現状維持、主要中銀の引き締めへの姿勢はまだ緩い】

英イングランド銀行(英中銀)は11月4日のMPC(金融政策委員会)で政策金利を0.1%で据え置き、量的金融緩和による資産購入規模も現状維持とした。物価上昇が続いているものの利上げ判断は時期尚早とし、2022年末には政策金利が1.0%に上昇しているとの予想を示した。10月後半時点では物価上昇と景気回復を踏まえて11月と12月の2会合で利上げに踏み切るのではないかとの市場予想が出ていたが利上げによる景気回復の腰折れとならないように慎重姿勢を示した印象だ。

ECBは10月28日の理事会で金融政策の現状維持を決定していたが、ラガルド総裁は11月3日の講演で「2022年にECBが利上げを行う可能性は非常に低い」と述べて利上げを急がない姿勢を強調した。また11月2日の豪中銀理事会も9月からすでに開始している量的緩和による資産購入規模の縮小に加えてYCC(イールドカーブコントロール)を終了したものの利上げは時期尚早との姿勢を強調した。
11月4日未明の米FOMCも資産購入の規模縮小を決定したものの利上げ判断には時期尚早との姿勢を強調したものとなったが、主要中銀は総じて物価上昇を警戒して徐々に引き締めへと姿勢を変えつつあるものの利上げを急がないとの姿勢で出そろった状況となった。

【米長期債利回り低下】

FOMC声明発表後にはいったんイベント通過感からユーロ等が買われるドル安反応となったが勢いは続かず、英中銀の金融政策発表をきっかけにドル高がぶり返した印象だ。また米長期債利回り低下と共に欧州主要国の長期債利回りも低下した。ドル円にとってはクロス円全般の円高、欧米長期債利回り低下による円高圧力がドルストレートでのドル高圧力に勝って下落したというところか。
11月4日の米10年債利回りは前日比0.08%低下の1.53%。30年債利回りは0.05%低下の1.97%、2年債利回りは0.05%低下の0.43%となった。独英豪等の長期債利回りも総じて低下となった。
11月4日のNYダウは5日ぶりに反落して前日比33.35ドル安となったが、前日まで4営業日連続で史上最高値を更新した後の利益確定売り優勢の動きと思われる。ナスダック総合指数は長期債利回り低下を好感して128.73ポイント高と続伸、史上最高値を更新している。

【米経済指標はまちまちだが雇用回復は進む】

米労働省が発表した週間新規失業保険申請件数は前週比1万4000件減の26万9000件となり市場予想の27万5000件を下回った。5週連続での改善。また失業保険受給者総数は210万5000人で前週から13万4000人減となり市場予想の211万8000人を下回った。
米商務省による9月の米貿易収支はモノとサービスを合わせた貿易赤字が前月比11.2%増の809億ドルとなり2か月連続で拡大、市場予想の805億ドルを上回った。
米労働省による7-9月期非農業部門労働生産性改定値は年率換算で前期比5.0%低下となり市場予想の3.0%低下を下回った。前年同期比では0.5%の低下だった。インフレ指標である単位労働コストは前期比8.3%上昇で市場予想の7.0%上昇を上回った。前年同期比も4.8%の上昇だった。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、10月28日深夜安値から3日弱となる11月2日夕安値をボトムとして反騰していたが、4日夕刻までの上昇から弱気サイクル入りしている。4日深夜安値では2日夕安値割れを回避しているものの、4日夕高値を超えないうちは5日夕から9日夕にかけての間への下落余地ありとするが、ややサイクルを短縮しての騰落が続く可能性もあるので114円超えを強気転換注意とし、4日夕高値114.27円超えからは強気サイクル入りとして9日午後から11日夕にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では11月4日夜の反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため先行スパンを上抜き返せないうちは一段安警戒として遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は11月4日深夜の安値時に30ポイント台序盤へ低下してからやや戻している。50ポイントを超えても維持できないうちは一段安余地ありとして40ポイント割れからは下げ再開とみるが、55ポイントを超えてその後も50ポイント以上での推移が続く場合は上昇再開の可能性を優先して60ポイント台中後半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月4日深夜安値113.49円を下値支持線、114.00円を上値抵抗線とする。
(2)114円以下での推移中は下向きとし、4日深夜安値割れからは113円台序盤(113.25円から113.00円)を試すとみる。米雇用統計後に下げ足が速まる展開なら112円台後半(113.00円から112.50円)へ下値目途を引き下げる。また113.75円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)114円超えからは4日夕高値114.27円試しとし、高値更新からは114円台後半(114.50円から115.00円)への上昇を想定する。114.75円以上は反落警戒とするが、114.25円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/5(金)
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -4.0%、予想 1.0%)
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 1.7%、予想 1.3%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.3%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 0.0%、予想 1.5%)
21:15 (英) ラムスデン英中銀副総裁、ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) 10月 非農業部門就業者数 前月比 (9月 19.4万人、予想 45.0万人)
21:30 (米) 10月 失業率 (9月 4.8%、予想 4.7%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前月比 (9月 0.6%、予想 0.4%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前年同月比 (9月 4.6%、予想 4.9%)
22:00 (米) テンレイロ英中銀委員、講演
28:00 (米) 9月 消費者信用残高 前月比 (8月 143.8億ドル、予想 159.0億ドル)


注:ポイント要約は編集部

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