トルコリラ円見通し 副総裁ら解任報道からの続落、2月16日天井以降の安値更新
〇トルコリラ円、10/14早朝12.29へ急落後は下げ渋るが、12.40台序盤では戻り売りに圧される
〇対ドルで、10/14朝に9.18へ急落し史上最安値を更新したが、10/15未明9.20まで安値を更新
〇10/14夜はユーロ等が反落しドル高感再燃、ドル買いリラ売り圧力が強まり最安値更新に至る
〇対ドル、この先どこまで売られるのか底が見えない状況か
〇12.43以下での推移中は一段安警戒とし、12.29割れからは12.00前後試しを想定する
〇12.40から12.43にかけては戻り売りにつかまりやすく、12.40を割り込むところから下げ再開と考える
【概況】
トルコリラ円の10月14日は12.48円から12.29円の取引レンジ、15日早朝の終値は12.35円で前日終値12.44円からは0.09円の円高リラ安となった。
エルドアン大統領がトルコ中銀副総裁2名等を解任したと報じられたことで14日早朝に12.29円(ベンダーによっては12.32円から12.25円まで安値の幅があった)へ急落したが、狼狽売り一巡後は続報待ちとなって下げ渋っているが12.40円台序盤では戻り売りに圧されている。
10月15日午前序盤はドル円の上昇に支えられて下げ渋りを続けているが、対ドルでの一段安が続いているために反騰入りには14日早朝への失望売りを解消するような情勢変化が必要と思われる。
【対ドルでは連日の史上最安値更新】
ドル/トルコリラの10月14日は9.20リラから9.04リラの取引レンジ、15日早朝の終値は9.17リラで前日終値の9.08リラから0.09リラのドル高リラ安となった。
エルドアン大統領がトルコ中銀の副総裁2名等3名の金融政策委員会の委員を解任したとの報道から14日朝に9.18リラへ急落して史上最安値を更新したが、14日の日中は安値圏にとどまり15日未明にはこの日の安値となる9.20(9.1996)リラまで安値を更新している。
10月13日は米消費者物価上昇率が高止まりしたものの過度のインフレ進行懸念と米連銀による利上げ時期のさらなる前倒し懸念が後退したとして為替市場全般はドル安だったがドル/トルコリラはドル安になびかず、14日夜はユーロ等が反落してドル高感が再燃したことでドル/トルコリラでもドル買いリラ売り圧力が強まって最安値更新に至った。
【無謀な追加利下げへの懸念】
トルコのエルドアン大統領は10月13日にカブジュオール中銀総裁と会談、その後に中央銀行金融政策委員会(MPC)の副総裁2名と委員1名を解任したと官報に掲載した。
解任された副総裁らは利下げやリラ防衛のための外貨準備の取り崩しに反対し、リラの安定が経済成長には不可欠との正当な主張をしていたという。
9月8日にカブジュオール総裁が「政策金利の判断については消費者物価の全体ではなくコア指数の伸びを参考とする」旨の発言を行ったため、全体の消費者物価上昇率は政策金利を上回って利下げ余地がなかったもののコア指数上昇率が政策金利を下回っていたことで利下げの可能性があると市場は受け止めてリラ安が進んだ。
9月16日にエルドアン大統領が早期の利下げ要求発言を行い、9月23日の中銀金融政策決定会合で政策金利が19%から18%へ引き下げられた。
10月8日に「エルドアン大統領は中銀総裁への信頼を失い解任も」と通信社が報道したことでリラの下げ足は速まり、14日の副総裁らの解任騒動で最安値をさらに更新した。
【対ドルでの底が見えない状況】
ドル/トルコリラは2018年8月の通貨危機的な状況下で4.90リラから7.21リラへと暴落、いったん落ち着いたものの2018年11月から下落再開に入り2020年5月に7.26リラへ最安値を更新、2020年11月に8.58リラまで暴落を続けた。
2020年11月にアーバル前総裁が就任、在任中に三度の利上げで10.25%から18.0%まで政策金利を引き上げたことで2021年2月には6.88リラまでいったん持ち直したが、アーバル総裁解任からリラ安が再燃、現在の最安値更新へ続いている。
トルコリラ円は年初からのドル円が年初来高値を更新する円安へ進んでいることで昨年11月の史上最安値12.03円割れには至っていないものの、対ドルでは未踏の領域に入っている。2010年のドル/トルコリラは1.5リラを挟んだ水準だったところからの長期的な下落であり、特にここ4年間の下落規模は大きい。既に9.0リラを割り込む水準だが、この先にどこまで売られるのか、市場も見当がつかなくなってきているのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月14日早朝に急落した後は下げ渋っているため、14日朝安値で目先の底を付けたと仮定し、底割れ回避のうちは15日の日中から18日にかけての上昇余地ありとするが、底割れからは新たな下落期入りとして19日朝から21日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では10月14日朝安値からの下げ渋りで遅行スパンは実線と交錯しているが先行スパンから転落したままのため、先行スパンを上抜き返すような反騰に入れないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は14日朝の急落で20ポイントへ低下してから戻しているが、50ポイント前後では抵抗感が出やすいとみて40ポイントを割り込むところからは下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.29円を下値支持線、12.43円を上値抵抗線とする。
(2)12.43円以下での推移中は一段安警戒とし、12.29円割れからは12.00円前後試しを想定する。12.00円以下は反騰注意とするが12.45円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.40円から12.43円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみて、その後に12.40円を割り込むところからは下げ再開と考える。
【当面の主な予定】
10月15日
17:00 9月 財政収支 (8月 +408.4億リラ)
10月20日
23:30 9月 中央政府債務 (8月 204.2億リラ)
10月21日
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合
※ポイント要約は編集部
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