エネルギー価格高騰(2)
前回はNY原油の直近の上昇がテクニカルにはどのような立ち位置にあるのかを見ましたが、当面の目安は大台80ドルではあるものの逆に下げたとしても下値は限定的な動きであるように思えます。
NY原油に限らず他のエネルギー価格高騰も激しいものがありますので、今回は天然ガスと石炭の動きも見てみましょう。その前に、前回見たNY原油の年初(1月4日始値48.40ドル)から年初来高値(10月6日、79.78ドル)までの上昇幅は31.38ドル、率にして64.8%の上昇です。
NY天然ガスがヘンリーハブとも呼ばれますが、これはルイジアナ州の天然ガス集積地の地名です。このヘンリーハブでの売買価格の先物がNYMEXで取引される先物価格のベースとなっています。
週足チャートを見てみましょう。
今年6月以降高騰が続き、9月以降は急騰とも言える状況ですが、天然ガスの急騰により一部のエネルギー調達が原油にシフトしたことが原油価格の高騰の一要因と言われています。天然ガスは年初(1月4日始値2.63ドル)から年初来高値(10月6日、6.47ドル)までの上昇幅は3.84ドル、率にして146%の上昇です。
もうひとつ見ていただきたいのは石炭価格です。環境問題から石炭が使われることは先進国では減っていると思われがちですが、そうではありません。日本では火力発電の約3割は石炭火力発電ですし、原子力発電がほぼゼロになる中で石炭火力発電は若干ですが増加しています。また世界に目を向けると新興国を中心に依然として石炭火力は発電の中心となっていて約4割と圧倒的な割合となっています。
エネルギーの中心的な枠割を担う燃料として石炭価格は重要なことがわかりますが、石炭価格の指標としてはニューカッスル石炭先物があります。これは豪州産石炭の輸出港であるニューカッスルでの石炭価格の先物です。
こちらも週足チャートを見てみましょう。単位は米ドル建てです。
年初(1月4日始値82.25ドル)から年初来高値(10月5日、269.5ドル)までの上昇幅は187.25ドル、率にして227.7%の上昇です。前回見たNY原油に比べると3倍近い価格上昇となっていることがわかります。
既にエネルギー市場が全般に高騰していて、原油はまだいいほうだということがわかりますが、ここから言えることはFRBが想定していたような年末に向けてインフレは徐々に収まっていくという可能性は全く無いということです。つまり、インフレは今後も進み金利は上昇し、おそらくは株式市場は下がる方向でしょう。
為替市場はどうかということを最後に書いておきます。
石炭の産出量世界ランキング上位7か国は、中国、インド、インドネシア、米国、豪州、ロシア、南ア。天然ガスの上位7か国は米国、ロシア、イラン、中国、カタール、カナダ、豪州。原油の上位6か国は米国、ロシア、サウジ、カナダ、イラク、中国。
すべてに顔を出しているのは米国、自由に取引ができる変動為替相場の国ではカナダと豪州。もちろん、一部の新興国も取引は可能ですが流動性から考えると、米ドル、加ドル、豪ドルの3つです。
おそらく、長期的な基調としての米ドル高とそれに加わる加ドル高と豪ドル高、そうなると長期的にはカナダ円と豪ドル円の買いが今後もワークするのではないか、ということがエネルギー価格の高騰から見えてきそうです。
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