トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁発言からの急落一服で下げ渋る
〇昨日のトルコリラ円、夕刻安値12.89まで安値を切り下げたが、その後買い戻し優勢の動き
〇ドルトルコリラ、夕刻安値8.51まで一段安となったもののドル買いリラ売り一服、8.40台序盤へ戻す
〇トルコの外貨準備高は引き続き増加、8月以降のリラ高を支える要因に
〇トルコ中銀総裁発言、利下げ余地があることのアピールと受け止められ当面は市場も意識するか
〇12.93以上での推移中は上昇余地ありとし、13.05超えからは13.10を目指すとみる
〇12.93割れからは下向きとして12.89試しとし、底割れからは12.85から12.80を目指すとみる
【概況】
トルコリラ円の9月9日は13.02円から12.89円の取引レンジ、10日早朝の終値は12.99円で前日終値の12.98円からは0.01円の円安リラ高となった。
9月8日はトルコ中銀総裁発言をきっかけとして中銀による利下げの可能性を警戒したリラ売りと先週末の米雇用統計通過後のドル全面高の流れによるドル高リラ安が重なったために12.96円まで大幅下落となり、9日も午後にかけてはドル/トルコリラにおけるドル高リラ安が継続、ドル円が110円割れから大幅続落したことも加わり夕刻安値で12.89円まで安値を切り下げた。その後は全般的なドル高が一服したことでリラ売りもひとまず落ち着いて買い戻し優勢の動きとなった。
日足は2日連続陰線の後、下ヒゲを付けた小陽線にとどまった。10日午前序盤は13.00円を挟んだ揉み合いとなっている。
【ドル全面高一服でドル/トルコリラでもリラ売り一服】
ドル/トルコリラの9月9日は8.51リラから8.41リラの取引レンジ、10日早朝の終値は8.43リラで前日終値の8.46リラからは0.03リラのドル安リラ高となった。
9月3日夕刻のトルコ8月物価上昇率の発表と3日夜の米雇用統計の発表を挟んで8.30リラ台中盤を下値支持帯に8.20リラ台中盤を上値抵抗帯として持ち合っていたが、9月8日にトルコ中銀総裁が政策金利と物価上昇率の判断に関してコアCPIを重視するとしたことで利下げの可能性が浮上したとみてリラ売りが勢い付いて8.40リラ台へ急落、9日も夕刻安値で8.51リラまで一段安となったが、9日は雇用統計通過後のドル全面高が一服してユーロが下げ渋りポンドが急反騰したためにドル/トルコリラにおいてもドル買いリラ売りが一服、利益確定でのリラ買いも入って8.40リラ台序盤へ戻した。
日足は下ヒゲを付けた陽線となり3日連続安は回避したものの、8月11日から続いてきたドル安リラ高の流れが一巡して再びリラ売り情勢に入ってきている印象を継続していると思われる。
【トルコの外貨準備高拡大基調は続く】
9月9日夜に発表されたトルコの週次外貨準備高はグロスで780億ドルとなり前週の779.6億ドルからわずかに拡大した。ネットでは278.6億ドルで前週の264.5億ドルから増加した。
トルコ中銀の月次ベースの外貨準備高(グロス)では昨年9月に363億ドルまで低下し、今年4月までは500億ドル前後での推移にとどまっていたが、7月に600億ドルをこえて8月もさらに拡大基調を見せている。中国や韓国、カタール等との通貨スワップの拡大やコロナ不況からの持ち直しによる輸出増や観光収入の改善、外貨預金への準備金拡大等を背景にしてきている。このことは昨年秋へのリラ暴落過程での為替介入により外貨準備が実際には底をついているのではないかとの懸念が払しょくされてきていることを示し、8月に入ってからのリラ高を支える要因となってきた。しかし2014年段階では1000億ドルを超えていた水準だったことと比較するとまだ低水準ともいえる。
【トルコ中銀総裁発言は尾を引く】
トルコ中銀のカブジュオール総裁が9月8日の講演で「インフレ率は第4四半期に鈍化基調に入ると考えている。食品を除いたインフレ率は年内、総合インフレ率を下回ると予想している」と述べたことでトルコ中銀が利下げを検討しているのではないかとの懸念が急浮上した。
9月3日に発表されたトルコの8月消費者物価指数は全体の前年同月比が19.25%となり7月の18.95%を超えて政策金利の週間レポレート19.00%も上回った。しかし消費者物価コア指数の前年同月比は16.8%で7月の17.2%から若干低下した。コアCPIが政策金利を下回っていると強調することは、早期の利下げを繰り返し要請しているエルドアン大統領の意向を踏まえて利下げ余地があることを市場にアピールしたのではないかと受け止められた。
9月23日に次回のトルコ中銀金融政策決定会合がある。中銀総裁発言の前段階では19%での据え置きと市場は予想してきたが、今回の発言を踏まえれば利下げの可能性も「無きにしも非ず」となった印象だ。当面は市場も中銀総裁発言を意識しての動きを続けるものと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月4日早朝安値からの反騰で7日夕刻まで戻り高値を切り上げたが、その後の急落で4日早朝安値に迫ったために8日午前時点では7日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期を8日深夜から13日朝にかけての間と想定した。
9月9日夕刻へ一段安したところから戻しているため、9日夕安値でボトムを付けたと仮定し、底割れ回避のうちは10日夕から14日夕にかけての間への上昇を想定する。ただし底割れからは新たな弱気サイクル入りと仮定して14日午後から16日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では9月7日午後の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落してきたが、9日夕安値からの反発で遅行スパンは好転しつつある。遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみて高値試し優先とするが、先行スパンが分厚い抵抗帯となってくると思われるため、遅行スパンが好転してもその後に悪化するところからは下げ再開を疑い、9日夕安値割れからは一段安に入るため遅行スパン悪化中は戻り売り有利の展開が続くとみる。
60分足の相対力指数は9月8日夜から9日夕への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる。50ポイント以上での推移が続き始める場合は戻りをさらに試しやすいとみるが、50ポイント前後が抵抗となって上値が重くなる場合は戻りも短命とみて40ポイント割れからは下げ再開を疑い、9日夕安値を割り込むところからは20ポイント以下への低下へ進みやすくなると考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月9日夕安値12.89円を下値支持線、13.05円を上値抵抗線とする。
(2)12.93円以上での推移中は上昇余地ありとし、13.05円超えからは13.10円を目指すとみる。13.07円以上は反落注意とするが、13円以上での推移なら週明けも高値を試す余地があるとみる。
(3)12.93円割れからは下向きとして9日夕安値試しとし、底割れからは12.80円台前半(12.85円から12.80円)を目指すとみる。12.80円以下は反騰注意とするが、9日夕安値を割り込んだ後も12.93円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
9月10日
16:00 7月 失業率 (6月 10.6%)
9月13日
16:00 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 2.3%)
16:00 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 23.9%)
16:00 7月 小売売上高 前月比 (6月 14.4%)
16:00 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 17.4%)
16:00 7月 経常収支 (6月 -11.27億ドル)
9月15日
17:00 8月 財政収支 (7月 -458億リラ)
9月23日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 19.00%)
※ポイント要約は編集部
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