トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁発言からリラ急落(21/9/9)

トルコリラ円の9月8日は13.22円から12.96円の取引レンジ、9日早朝の終値は12.98円で前日終値の13.18円からは0.20円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁発言からリラ急落(21/9/9)

トルコ中銀総裁発言からリラ急落

〇昨日のトルコリラ円、トルコ中銀総裁発言きっかけに急落商状に陥り13円割り込む
〇ドルトルコリラも午後に8.36を超えたところからドル高リラ安加速、日足は大陰線での下落
〇中銀総裁「トルコの金融政策スタンスは引き締め的」と述べ、市場は利下げへの布石と受け止める
〇9/23の次回金融政策決定会合でコアインフレ率の低下を根拠に利下げする可能性も浮上
〇12.95割れからは12.90前後、次いで12.80前後への下落を想定、12.90以下は反騰注意
〇13.05から13.10手前のゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる

【概況】

トルコリラ円の9月8日は13.22円から12.96円の取引レンジ、9日早朝の終値は12.98円で前日終値の13.18円からは0.20円の円高リラ安となった。
トルコリラ円は6月2日安値12.44円と6月21日安値12.48円をダブル底とし、6月21日安値を中心として鍋底型の上昇基調を継続。9月2日には13.32円まで上昇してこの間の高値を更新し、13.20円前後にあった鍋底の蓋にあたる抵抗帯突破を試していたが、9月3日夕刻のトルコ8月物価指数の発表と3日夜の米雇用統計で乱高下に入って13.14円まで失速した。その後、いったんは9月7日高値13.29円まで戻したものの9月2日高値には届かずに戻り高値切り下がりに終わり、9月8日はトルコ中銀総裁発言をきっかけに急落商状に陥って6月21日以降では前日比としては最大の下げとなる陰線で13円を割り込んだ。

【ドル全面高の様相にドルトルコリラでもドル高リラ安へ揺れ返し】

ドル/トルコリラの9月8日は8.48リラから8.32リラの取引レンジ、9日早朝の終値は8.46リラで前日終値の8.34リラからは0.12リラのドル高リラ安となった。日足は大陰線での下落となり9月7日からの2日連続陰線で、この2日間の下落で8月11日安値からの上昇幅の半値以上を解消した。
9月3日のトルコ物価指数と米雇用統計の発表で乱高下していたが、8日午後に8.36リラを超えたところからドル高リラ安が加速した。9日午前序盤も8.47リラ近辺で安値更新を伺う展開となっている。
トルコ中銀総裁の金融緩和への前向き姿勢を示す発言がきっかけだが、9月3日の米雇用統計までで8月20日からのドル全面安が一巡してドル高へ急旋回してきたことも重なっての急落商状だ。

【トルコ中銀総裁発言が下落の引き金】

トルコ中央銀行のカブジェオール総裁は9月8日にドイツ・トルコ商工会議所での講演で、「現在19%の政策金利は十分に引き締め的であり、インフレ率は第4四半期に低下する」との見通しを述べたが、これが利下げへの布石になるのではないかと市場は受け止めてリラ売りが加速した。総裁は「総合インフレ率より低い水準にあるコアインフレ率の重要性が増している」と述べ、「トルコの金融政策スタンスは引き締め的であり、世界的に物価が上昇する中でもインフレ率を押し下げるのに十分だ」と語った。総裁は「インフレ率は第4四半期に鈍化基調に入ると考えている。食品を除いたインフレ率は年内、総合インフレ率を下回ると予想している」と述べている。

9月3日16時発表のトルコ消費者物価指数8月の伸び率は前月比で1.12%となり7月の1.80%からは伸びが鈍化したが市場予想の0.60%を大幅に上回った。前年同月比は19.25%となり市場予想の18.70%及び7月の18.95%を超え、政策金利の週間レポレート19.00%を上回る水準となった。しかし消費者物価コア指数の上昇率では前月比は0.4%で7月の0.6%からは低下、前年同月比は16.8%で7月の17.2%からは若干低下して政策金利を下まわっている。
エルドアン大統領が従来から「利下げがインフレを抑制する」という金融政策姿勢を繰り返し述べ、9月にも利下げすべきとの旨を述べてきたことを踏まえれば、9月23日の次回金融政策決定会合でコアインフレ率の低下を根拠に利下げする可能性も浮上したと市場は受け止めた。
9月2日までのリラ高基調は全般的なドル安を背景としつつ、トルコの物価上昇率が収まらないことで当面は利下げできないとみてのリラ買い優勢の展開だったが、8日の中銀総裁発言で利下げ無しとみてきた市場の楽観が大幅に後退した印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月4日早朝安値からの反騰で7日夕刻まで戻り高値を切り上げたが、その後の急落で4日早朝安値に迫っていたために8日午前時点では7日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は8日深夜から13日朝にかけての間と想定されるのでまだ一段安警戒としたが、8日夜へ急落した後も安値圏にとどまっているためさらに一段安余地ありとみる。急落後の反動高もあり得るところだが13.10円以下での推移中は一段安余地ありとし、13.10円超えからはいったん強気サイクル入りするとみて10日夕から14日夕にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では9月7日午後の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落していたが、8日の一段安で両スパン揃っての好転が続いている。13.10円を超える反騰へ進めないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とし、13.10円を超えるところからは反騰入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は9月8日午後からの急落で20ポイント割れまで急低下し、その後はやや戻しているものの30ポイント台にとどまっている。反騰入りには50ポイント到達まで戻す必要があり、まだ一段安警戒とみるが、相場が安値更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰注意とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.95円を下値支持線、13.10円を上値抵抗線とする。
(2)13.10円以下での推移中は一段安警戒とし、12.95円割れからは12.90円前後、次いで12.80円前後への下落を想定する。12.90円以下は反騰注意とするが、13.05円以下での推移なら10日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.05円から13.10円手前のゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

9月10日
 16:00 7月 失業率 (6月 10.6%)
9月13日
 16:00 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 2.3%)
 16:00 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 23.9%)
 16:00 7月 小売売上高 前月比 (6月 14.4%)
 16:00 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 17.4%)
 16:00 7月 経常収支 (6月 -11.27億ドル)
9月15日
 17:00 8月 財政収支 (7月 -458億リラ)

9月23日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 19.00%)

※ポイント要約は編集部

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