ドル円見通し やや右肩上がり、1円弱の値幅でのジグザグ型持ち合い続く(21/9/9)

ドル円は、8日午後に110.44円の高値を付けた後110.12円へ失速、深夜のリバウンドも高値更新へ進めずに110.25円を挟んで揉み合いの様相となっている。

ドル円見通し やや右肩上がり、1円弱の値幅でのジグザグ型持ち合い続く(21/9/9)

やや右肩上がり、1円弱の値幅でのジグザグ型持ち合い続く

〇昨日のドル円、午後に110.44の高値を付け9/1夕高値110.41をわずかに超えた後110.12へ失速
〇NYダウ3日続落や年内テーパリング開始の既定路線に変化なしとの見方でドル高継続
〇史上最高値更新が続いていたナスダックも8日は前日比87.69ポイント安と5日ぶりの反落
〇米労働省発表の7月雇用動態調査求人件数は1093万4000件で統計開始以降の最高水準更新
〇米連銀によるベージュブック、7月〜8月の景気回復は「やや鈍化」で景気判断を下方修正
〇8日午後高値110.44超えの場合は110.50から110.65にかけてのゾーンを試すとみる
〇110.12割れからはいったん反落に入るとみて109.70台への下落を想定

【概況】

ドル円は9月3日夜の米雇用統計発表直後に付けた安値109.58円からの上昇を継続、8日午後に110.44円の高値を付けて9月1日夕高値110.41円をわずかに超えたが、その後に110.12円へ失速、深夜のリバウンドも高値更新へ進めずに110.25円を挟んで揉み合いの様相となっている。
為替市場は8月19日まではほぼドルの全面高、23日から9月3日の米雇用統計まではほぼドル全面安の流れが続いていたが、雇用統計を通過したところでドル安が一巡、9月6日からはユーロやポンド、豪ドル等が下落に入りドル円は逆に持ち上げられてきた。8日はNYダウが3日続落したことや米連銀の年内テーパリング開始という規定路線は変わらないだろうとの見方が高まったことでドル高が継続、株安による債券買いで米長期債利回りは9月3日からの上昇一服で低下したもののユーロドルが深夜に1.18ドルを割り込むなどドル高感が強まったままとなった。ドル円としては米長期債利回り低下が上値を抑えつつ全般のドル高に押し上げられた状況を維持した印象だ。

【NYダウが3日続落、米10年債利回り反発もドル全面高続く】

9月8日のNYダウは前日比68.93ドル安と下落、9月3日の前日比74.73ドル安、6日の休場明けとなった7日に同269.09ドル安と続落していたが、8日もデルタ株感染拡大による景気回復の鈍化懸念から3日続落となった。8月16日に史上最高値更新まで上昇した後は上値が重くなっている。連日の史上最高値更新が続いていたナスダック総合指数も8日は前日比87.69ポイント安と5日ぶりの反落となった。
株安を受けて株売り債券買いの流れで米長期債利回りは低下、10年債利回りは前日比0.03%低下の1.34%、30年債利回りも同0.03%低下の1.96%、2年債利回りは変わらずの0.22%だった。10年債利回りは9月3日に1.26%まで下げたところから1.33%へ上昇、7日には1.38%台へ続伸していたところから上昇一服となったが、7月20日と8月4日に1.12%でダブル底を付けて徐々に底値を切り上げてきた流れの範囲にあるようだ。
財務省は8日に10年債の380億ドル入札を行ったが堅調な需要だったことも利回り低下に寄与したようだ。財務省は9日にも30年債240億ドルの入札を行う。

【デルタ株感染拡大による景気回復鈍化への懸念あるもテーパリング開始は既定路線】

米労働省が発表した7月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数は前月比74万9000件増の1093万4000件となり市場予想の1000万件を上回り2000年12月の統計開始以降の最高水準を更新した。9月3日の米雇用統計では非農業部門就業者数が予想を大幅に下回る23.5万人増だったが、求人は力強く、労働需給ギャップによる一時的な落ち込みで9月分は改善する可能性も示唆するものだ。
一方で米連銀による地区連銀景況報告(ベージュブック)では7月初めから8月の景気回復が「やや鈍化した」とし、前回の「一段と強さを増した」から景気判断を下方修正した。変異株の感染拡大の影響がみられるようだ。

変異株の感染拡大による景気回復の鈍化への懸念がある一方、雇用改善は進むという印象の中、米連銀の年内テーパリング開始方針は変わらないだろうとの見方も強まっていることが為替市場のドル高再燃を招いている。
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は8日の講演で「量的緩和については今年中に縮小を始めるのが適切」とし、インフレ率は2%の物価目標については「一段と大きな前進」に達したのは明らかだと述べた。ダラス連銀のカプラン総裁は9日早朝のオンライン質疑応答で「8月の雇用統計が予想を下回る改善ぶりだったものの緩和縮小が始められる景気情勢が変わるほどのものではない」「9月のFOMCで量的緩和縮小を決定して10月に着手すべきだ」「量的緩和の縮小は8か月で完了するペースが望ましい」と述べている。

【8月16日夜安値以降のやや右肩上がりの持ち合い上限】

ドル円は8月16日夜に109.10円を付けて7月2日高値111.65円以降の安値を付けたところから8月19日高値110.22円まで戻した後は、1円弱の騰落幅でジグザグ歩調をたどりながらやや右肩上がりの展開で推移している。9月8日午後に若干高値を更新したところは8月19日高値と9月1日高値を結ぶジグザグ上昇の上値抵抗線に近い水準であり、目先はジグザグ上昇の上限に到達してやや調整気味の推移に入りやすい印象だ。
8月16日以降の安値は徐々に切り上がっているが、8月19日以降の高値ラインと8月24日夜安値以降の安値ラインはほぼ平行であり、その下値支持線は現在109.70円前後に来ている。当面はこのジグザグ型のやや右肩上がりの持ち合い相場の範囲で動きつつ、持ち合い放れからのトレンド形成へのきっかけを待つ状況と思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月3日夜安値で直近のボトムを付けて反騰入りしてきたが、9月1日夕高値から5日目に入った9月8日午後高値で直近のサイクルトップを付けたと思われる。8日夜からは110.25円を挟んだ揉み合いだが、8日夜安値110.12円割れからはいったん下げに入るとみて9日の日中から10日深夜にかけての間への下落を想定する。ただし8日午後高値超えからは新たな強気サイクル入りとして13日午後から15日午後にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では8日午後高値からの反落から揉み合い推移に入ったために遅行スパンは実線と交錯に入っているが、先行スパンを上抜いた位置を維持している。8日午後高値を超えるか8日夜安値を割り込むのかにより目先の流れも見えると仮定し、8日午後高値超えからは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、8日夜安値割れからはさらに下げるとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。その際に先行スパンから転落なら下げ足が速まりやすいとみる。
60分足の相対力指数は8日早朝から午後への高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられてから50ポイント割れへ失速したためさらに30ポイント前後を目指す低下余地があるとみる。強気転換は65ポイントを超えてくる反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)110.12円を下値支持線、110.44円を上値抵抗線とする。
(2)110.12円以上での推移中は上向きとし、110.44円超えの場合は110.50円から110.65円にかけてのゾーンを試すとみる。110.50円以上は反落警戒とするが、110.12円以上での推移なら10日の日中にかけても高値試しが続く可能性もあるとみる。
(3)110.12円割れからはいったん反落に入るとみて109.70円台への下落を想定する。110円近辺や109.70円以下は反発注意とするが、110円を割り込んでの推移が続くなら10日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/9(木)
10:30 (中) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.0%、予想 1.0%)
10:30 (中) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 9.0%、予想 9.0%)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 163億ユーロ、予想 146億ユーロ)
15:00 (独) 7月 経常収支 (6月 225億ユーロ、予想 180億ユーロ)
20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、定例記者会見
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 34.0万件、予想 34.3万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 274.8万人、予想 274.4万人)

24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
24:05 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、イベント挨拶
24:05 (加) マックレム・カナダ中銀総裁、会見
24:05 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) ニューヨーク連銀総裁、他3連銀総裁、経済における人種差別に関する会議参加

9/10(金)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 3.9%、予想 3.9%)
15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 1.0%、予想 0.5%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前月比 (6月 -0.7%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前年同月比 (6月 8.3%、予想 3.0%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・物品 (6月 -119.88億ポンド、予想 -107.50億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支・全体 (6月 -25.14億ポンド、予想 -16.00億ポンド)

18:30 (欧) ラガルド欧州中銀行(ECB)総裁、発言
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 1.0%、予想 0.6%)
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 7.8%、予想 8.2%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前月比 (7月 1.0%、予想 0.5%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前年同月比 (7月 6.2%、予想 6.6%)
22:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
23:00 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 1.1%、予想 0.6%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 2.0%)

※ポイント要約は編集部

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