ドル円見通し 持ち合い下限で踏み止まるが、警戒続く(21/9/10)

ドル円は9月10日未明に109.61円まで下落、9月3日深夜安値109.58円に迫ったが底割れは回避して10日朝はやや戻し気味となっている。

ドル円見通し 持ち合い下限で踏み止まるが、警戒続く(21/9/10)

ドル円見通し 持ち合い下限で踏み止まるが、警戒続く

〇ドル円、9/10未明109.61まで下落、9/3深夜安値109.58に迫ったが底割れは回避
〇欧州債利回り低下・NYダウ続落による債券買いから米長期債利回りは続落、ドル売りの背景
〇9/9夜ECBが資産購入減速を発表し欧州主要国利回り低下、米長期債利回り低下を助長
〇米失業保険申請件数は昨年3月以来最低、市場は年内テーパリングの可能性高いと見る
〇8/16以降の持ち合い継続、米長期債利回り低下落ち着きドル高基調が意識されればドル円も持ち直すか
〇9/10未明安値109.61割れ回避のうちは、110円前後試しへ向かうとみる
〇9/10未明安値109.61を割り込む場合は、109.25、さらに109.00を試す流れとみる

【概況】

ドル円は9月10日未明に109.61円まで下落、9月3日深夜安値109.58円に迫ったが底割れは回避して10日朝はやや戻し気味となっている。9月3日夜の米雇用統計発表直後にドル全面安となったところで109.58円へ下落したが、雇用統計通過後はドル全面高へと流れが変わり、米長期債利回り上昇を見て7日夜には110円を突破、8日午後には110.44円へ続伸して9月1日夕高値110.41円を上抜いた。しかしその後は米長期債利回りが再び低下に向かったことで上値が抑えられ、9日夜はECBがパンデミック対策での資産購入を減速するとしたことでの欧州債利回り低下やNYダウの4日続落に対する債券買いから米長期債利回りは続落となり、ドル円も3日深夜安値に迫るところまで下げた。

【NYダウが4日続落、米10年債利回り2日連続で低下、ドル高一服】

9月9日のNYダウは前日比151.69ドル安と下落、4日続落となった。ナスダック総合指数も同38.38ポイント安と続落した。9日夜発表の米週間失業保険申請件数がパンデミック発生以来最低水準となったことで序盤は買われたもののデルタ株感染拡大による景気回復の鈍化への懸念が勝った印象で手仕舞い売りが優勢となった印象だ。
米10年債利回りは前日比0.04%低下の1.30%で前日から2日続けての低下となった。9月3日の米雇用統計後に1.26%から上昇に転じて7日には1.38%を付けて8月4日以降の最高水準としたが、8日、9日と株売り債券買いの動きで低下している。ECBの金融政策を見ての欧州主要国利回り低下も米長期債利回り低下を助長した。今週は米財務省が合計1200億ドルの長期債入札を行ったが9日の30年債入札も好調だったことで旺盛な債券買い需要が確認されたことも利回り低下要因となった。

【米失業保険申請件数は昨春来最低、年内テーパリングの可能性高まる】

米労働省発表の週間新規失業保険申請件数は9月4日までの週間で31万件となり前週から3万5000件減少、市場予想の33.5万件を下回って昨年3月以来の最低水準へ改善した。8月28日までの週間で失業保険受給者総数は278万3000人となり前週から2万2000人減少して市場予想の274万4000人を上回った。
9月3日の米8月雇用統計における就業者数の伸びが予想を大幅に下回る低調さを示したことはデルタ株感染拡大による影響も見られるものだが、前日発表のJOLT求人件数等の統計をみる限りは労働需給のギャップにより就業者増加数が上下にブレやすい状況ではあるが雇用回復は着実に進んでいる印象となった。

変異株の感染拡大による景気回復の鈍化への懸念がある一方、雇用改善は進むという印象の中、米連銀の年内テーパリング開始方針は変わらないだろうとの見方も強まっていることが為替市場のドル高再燃を招いている。
米連銀のボウマン理事は全米銀行協会(ABA)のオンラインイベントで「8月の雇用統計が弱めとなったものの入手可能な経済指標はなお心強い内容」「年内にテーパリングが始まる公算が大きい」と述べた。8日にはNY連銀のウィリアムズ総裁が「量的緩和については今年中に縮小を始めるのが適切」と述べ、ダラス連銀のカプラン総裁は「9月のFOMCで量的緩和縮小を決定して10月に着手すべきだ」と述べている。9月21-22日のFOMCにおけるテーパリング決定は見送られる可能性が高いと市場は見ているが、年内着手の方向性は示されて11月のFOMCでは決定に至るのではないかとみているようだ。

【8月16日夜安値以降のやや右肩上がりの持ち合いを継続】

ドル円は9月10日未明安値で109.61円まで下げたものの9月3日深夜安値109.58円割れをひとまず回避している。8月16日夜安値109.10円から8月19日高値110.22円まで戻した後は、1円弱の騰落幅でジグザグ歩調をたどりながらやや右肩上がりの持ち合いで推移している。9月8日午後に110.44円を付けて1日高値を若干上抜いたところはジグザグ型の上値抵抗線に到達するところであり、10日未明安値はこの間の下値支持帯まで下げたところで踏み止まっている。ジグザグの騰落リズムが続くとすれば次は高値更新を試す流れとも考えられ、米長期債利回り低下が落ち着いてドル高基調が再び意識されればドル円も持ち直すと思われるが、米長期債利回りがさらに低下して米雇用統計後のドル高一巡となりユーロ等の反騰が勢い付く場合はジグザグ型の上昇期に入り切れずに逆に持ち合いからの転落を試す可能性もあるところだ。また株安が一段と進行するようだとリスク回避的にドルストレートにおけるドル高へ向かうと共にクロス円全般で円高が進行してドル円でも円高ドル安へ向かう可能性も考えておきたい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月3日深夜安値から4日目となる10日未明安値で直近のサイクルボトムを付けて戻りを試しつつあるところと思われる。高値形成期は13日から15日午後にかけての間と想定されるが短命の可能性もあると注意し、10日未明安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとして14日深夜から17日未明にかけての間への下落が想定される。

60分足の一目均衡表では9日午前に遅行スパンが悪化し、夕刻には先行スパンから転落した。その後も両スパン揃っての悪化が続いているが、10日未明安値から持ち直しているために遅行スパンは好転を試しやすい位置に来ている。このため遅行スパン好転からは高値試し優先とするが、先行スパンが上値抵抗帯となりやすいと注意する。遅行スパンが好転できずに10日未明安値を割り込む場合と、一時的に好転しても再び悪化するところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は20ポイント台へ低下したところから40ポイント超えへ戻している。50ポイント前後は抵抗感が出やすいが50ポイント超えから続伸に入る場合は9月8日高値へ迫るような上昇も想定される。50ポイント前後が抵抗となって伸びきれない場合は9月8日高値へ迫れずに一段安へ崩れる可能性もあると注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)9月10日未明安値109.61円を下値支持線、110.00円を上値抵抗線とする。
(2)10日未明安値割れ回避のうちは110円前後試しへ向かうとみる。110円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、110円突破から勢い付く場合は8月16日以降のジグザグ上昇の継続とみて9月8日高値110.44円超えを目指す流れとみる。また110円台を維持して終了なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)10日未明安値を割り込む場合はジグザグ上昇パターンからの転落も懸念されるとみて109.25円、さらに109.00円を試す流れとみる。109.10円前後は買われやすいとみるが10日未明安値を割り込んだ後も109.75円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/10(金)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 3.9%、予想 3.9%)
15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 1.0%、予想 0.6%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前月比 (6月 -0.7%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前年同月比 (6月 8.3%、予想 3.0%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・物品 (6月 -119.88億ポンド、予想 -110.00億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支・全体 (6月 -25.14億ポンド、予想 -16.00億ポンド)
18:30 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、発言

21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 1.0%、予想 0.6%)
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 7.8%、予想 8.2%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前月比 (7月 1.0%、予想 0.5%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前年同月比 (7月 6.2%、予想 6.6%)
22:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
23:00 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 1.1%、予想 0.6%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 2.0%)


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