ドル円 戻り高値を見てドル安に転換(週報8月第3週)

先週のドル円は、週前半はドル高、週後半はドル安となりましたが、基本的に米金利の動きに沿った展開だったと言えます。

ドル円 戻り高値を見てドル安に転換(週報8月第3週)

戻り高値を見てドル安に転換

〇先週のドル円、週前半はドル高、週後半はドル安と基本は米金利の動きに沿った展開
〇水曜欧州市場で短期筋のドル買いが増えたところにNY市場で発表のCPIが前月から鈍化
〇9月以降はより鈍化が強まるとの思惑で米金利低下、ドル売りへと波及する
〇金曜にミシガン大消費者信頼感10年ぶりの悪い結果で予想大きく下回り米金利大幅低下、ドル全面安に
〇今週は108.50レベルをサポートに109.90レベルをレジスタンスとする

今週の週間見通し

先週のドル円は、週前半はドル高、週後半はドル安となりましたが、基本的に米金利の動きに沿った展開だったと言えます。水曜に流れが変わったのですが、そのきっかけとなった動きは欧州市場にテクニカルに7月後半の高値圏を上抜け短期筋のドル買いが増えていたところに、NY市場で発表されたCPIが予想通りだったものの前月から伸びが鈍化したことで、9月以降は一段と鈍化が強まるのでははという思惑が米金利低下、ドル売りと波及したことがきっかけでした。

また木曜が閑散相場となり金曜も東京市場では全く動きが無く油断していたところにNY市場に入り発表されたミシガン大消費者信頼感が10年ぶりの弱い数字と、予想を大きく下回る内容となったことで米金利は一段の低下を辿りドル円も8月5日の水準まで下げることとなりました。このあたりの動きは10年債利回りとドル円との相関を見るとわかりやすいので、今週は10年債利回りから見ていきます。

今週の週間見通し

上段が10年債利回り、下段がドル円の日足チャートですが、7月中旬以降はほぼ同じ動きとなっています。それもそのはずで、米金利のサブチャートに示したドル円との相関係数は7月19日以降は0.73〜0.88とほぼ0.8という高い正の相関を示しています。当面は米金利の動きがドル円の動きに影響を与える展開が続くと見られます。

米金利は7月20日と8月4日に1.12%台まで利回りの低下を見ましたが、その後は1.37%台まで戻した後、金曜には1.28%台へと下げました。このあたりの動きは金利市場参加者を中心に米国のテーパリング前倒し思惑がなかなか収まらないという点が大きかったと思いますが、水曜のCPI、そして金曜のミシガン大消費者信頼感でFRBの見通しに改めて寄せる動きになったと言えます。

何度も書いていることですが、FRBはブレない見通しを示し、市場参加者は利益を上げるためなので当然ではあるものの、思惑先行で上下に振れるトレーディングを繰り返します。そうなると、FRBの見通しはどうなのかという点を気に留めておく必要があるでしょう。

まず基本的なスタンスとして、パウエルFRB議長は少なくとも7月と9月のFOMCにおいて検討していくこと、テーパリングの前に伝えることを6月FOMC以降繰り返していますので、来週のジャクソンホールでは金融政策変更に関する発言は出ないという見方でよさそうです。また9月14日に発表されるCPIは8月分で、既に昨年8月にはコロナから回復した後の数字であったため、FRBの見通し通りに鈍化していく可能性が高そうです。

雇用についても非農業部門雇用者数はすごい勢いで増加し、前回7月分は+94.3万人という強い数字となりました。しかし、雇用者数の総数で考えると、まだまだコロナ前の水準には遠く、2020年2月の水準と比較すると570万人下回っています。こうしたことも含め、FRBとしては9月の数字を見たいということになりますが、9月22日のFOMCで決定があり、市場に伝えたとしても次のFOMCは11月3日ですから、そうなるとテーパリングは11月からと見ることが妥当に思えます。

これまで、ややテーパリング思惑が高まったところから、現状はまた思惑が後退しFRBの示す時期に落ち着いてきているように思えます。そうであるとすると、当面はドルが買われたところはドル売りというスタンスが出やすく、かといって大きく下げるような動きがあれば、下はやはり買われるという展開になると思われます。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

いったんこれまでのラインは全て消して大きな流れとしてピンクの太線でほぼ平行上昇チャンネルを引いてあります。かなり上下の幅は広いものの、この上下の中での動きにあるという見方です。そして中期から短期の動きはこれまで何度か方向性を変えてきましたが、先週の戻り高値が大いなるダマシとなったことで、短期的には下降トレンド入りを探っている最中というところだと見ています。

まずは上昇チャンネルのサポートラインが位置する108.85レベル、そして7月高値から8月上旬安値への下げ、その後の先週の戻り高値を3点とする逆N波動のエクスパンションのターゲットとしては78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションの108.148が、4月安値と7月高値の78.6%(61.8%の平方根)押し108.36に近く、またこれらの水準は5月安値108.33レベルとも重なります。

いっぽう上値は110円の大台が遠くなってきましたので109円台後半では戻り売りを狙う向きが増えてきていると考えられます。これらのことを合わせて、今週は108.50レベルをサポートに109.90レベルをレジスタンスとする一週間を考えておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月16日(月)
08:01 英国8月住宅価格
08:50 本邦4〜6月期GDP速報値 ☆
11:00 中国7月鉱工業生産、小売売上高
21:30 米国8月NY連銀製造業景況指数

8月17日(火)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
15:00 英国7月失業率
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP改定値 ☆
21:30 米国7月小売売上高
22:15 米国7月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国8月NAHB住宅指数
23:00 米国6月企業在庫
26:30 パウエルFRB議長講演 ☆
28:45 (ミネアポリス連銀総裁講演)

8月18日(水)
07:45 NZ4〜6月期PPI
08:50 本邦7月貿易収支(通関)
11:00 NZ中銀政策金利発表 ☆
15:00 英国7月CPI ☆
17:00 南ア7月CPI
18:00 ユーロ圏7月CPI ☆
18:00 ユーロ圏6月建設支出
20:00 南ア6月小売売上高
21:30 米国7月住宅着工・建築許可
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC議事要旨公表 ☆

8月19日(木)
10:30 豪州7月失業率
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
23:00 米国7月景気先行指数

8月20日(金)
08:01 英国8月消費者信頼感
08:30 本邦7月CPI
15:00 ドイツ7月PPI
15:00 英国7月小売売上高

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月9日(月)
東京が休場となった月曜のドル円はNY市場までは若干上値の重たい展開が続きましたが、110円の大台をトライできず米金利上昇の動きとともに雇用統計後の高値に並び高値圏での引けとなりました。

8月10日(火)
金曜雇用統計以降のドル高の流れを継続、終日ドルがじり高の展開となりました。ドル円は安値110.22レベルで始まり、NY市場で110.60レベルまで上昇し、そのまま高値圏での引けとなりましたが、38銭レンジと値幅は伴いませんでした。

8月11日(水)
ドル円は前日までの流れを継続、米金利も上昇する動きの中で欧州市場序盤に110.80レベルの高値をつけました。7月中旬以降の高値圏を上抜けたものの、米金利が反転する動きとともにドル円は下げへと転じました。NY市場に入り発表されたCPIは予想通りだったものの前月からは鈍化、FRBのCPIの伸びは鈍化していくとの見通しを思い起こさせたことから米金利は下げへと転じました。NY後場の10年債入札が好調だったことも一段の金利低下につながり、米金利は1.376%から1.303%へと低下、ドル円も130.31レベルまで押し若干戻して引けました。

8月12日(木)
夏枯れ相場と呼ぶにふさわしい閑散な一日となりました。レンジはドル円が23銭に留まり、NY市場まではほとんど動意なし。NY市場ではPPI発表後に米金利の動きとともに若干の上下が見られた程度で終わりました。

8月13日(金)
前日の凪相場で油断していた参加者も多かった中、ドル円は週末を前に大きく下げることとなりました。東京市場では全く動かなかったものの、欧州市場序盤に日中安値を下回ると徐々に上値が重くなってのNY市場入り。ミシガン大消費者信頼感が予想を大きく下回る10年ぶりの悪い結果となったことを受け米金利が大幅低下、ドル全面安となりドル円は109.55レベルの安値をつけ安値圏での引けとなりました。

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