トルコリラ円見通し トルコ中銀の金利据え置きは決め手にならず12円台後半中心の持ち合い続く(21/8/16)

13日深夜には12.80円まで下げ、14日早朝は12.84円で終了した。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の金利据え置きは決め手にならず12円台後半中心の持ち合い続く(21/8/16)

トルコ中銀の金利据え置きは決め手にならず12円台後半中心の持ち合い続く

〇トルコリラ円、13日早朝に12.98へ高値を伸ばすも軟調推移で深夜に12.80まで下げる
〇13日の米ミシガン大消費者信頼感指数予想を大幅に下回りドル全面安に
〇ドルトリコはドル安リラ高で推移するも、トルコ円は円高に圧され上値の重い展開に
〇13.15を超えないうちは戻り売り有利で12.48試し、底割れで9月後半〜10月中旬にかけ12.03を試すか
〇13.15を超えるところから13.21試し、高値更新からは13.50超えを目指すとみる

【概況】

トルコリラ円は8月12日夜のトルコ中銀金融政策決定会合における主要政策金利の据え置き決定から12.97円まで上昇、13日早朝には12.98円まで高値を伸ばしたが8月11日早朝に一時的な急伸で付けた高値13.01円には届かず、その後はやや軟調な推移となり13日深夜には12.80円まで下げ、14日早朝は12.84円で終了した。
トルコ中銀の政策金利現状維持については市場予想通りでサプライズ感はなく、中銀は声明で「インフレ率を下回る政策金利の設定は行わない」との従来姿勢を繰り返したが、7月のトルコ消費者物価上昇率が前年同月比で18.95%まで上昇して政策金利の週間レポレート19.00%に対してほとんど余裕がなくなっていることに対して「必要に応じて利上げする」との積極姿勢は示さなかった。

8月11日の米7月コアCPI上昇率が6月から鈍化したことで為替市場全般がドル安へと風向きを変え、8月13日夜のミシガン大消費者信頼感指数が予想を大幅に下回ったことで13日夜から14日早朝にかけてはドル全面安となりドルトルコリラでは8月11日夜からドル安リラ高で推移したが、一方ではドル円が110円を割り込んで109.50円台まで急落したため、トルコリラ円はドル安リラ高に支えられつつも円高に圧迫されて上値の重い展開となった。

【対ドルでのリラ安一服、最安値更新をひとまず回避】

ドル/トルコリラは6月25日に8.79リラの史上最安値を付けたところでリラ売り一巡となり8月3日高値8.27リラまで上昇してきたが、その後は米長期債利回りの上昇によるドル高とトルコ中銀金融政策決定会合を控えてリラ売りが再燃したことで下落に転じて8月11日安値8.67リラまで下落してきた。中銀金融政策の内容次第では再び史上最安値更新を試しかねない下落だったが、中銀金融政策発表後のリラ買いの動きと8月11日の米消費者物価コア指数の伸び鈍化によるドル安をきっかけに持ち直しに入った。
8月3日高値から8月11日安値までの下落幅の半値戻しラインが8.47リラにあるが、8月13日は8.48リラへ上昇して半値戻しに迫ったものの若干届かずに8.51リラで終了している。

【米連銀のテーパリングへの姿勢の強さと利下げできないトルコ中銀の差】

為替市場全般は米連銀による量的金融緩和の縮小開始=テーパリングが秋にも着手されるのか市場が懸念するほどには急がれないのかを思惑しつつ、米経済指標に対してやや過敏に一喜一憂している。8月11日からはドル安だが、今後の米経済指標が予想を超える強さを示してゆけば再び8月4日から11日にかけてのドル高局面のような勢いでドル高が進んでゆく可能性もあるところだ。
ドル/トルコリラとしては米経済指標が弱めで米連銀のテーパリング開始も急がれない情勢ならドル安基調に乗じて戻り高値を試しに向かう可能性があるが、米経済指標が強くドル高感が再認識される場合は米連銀とは真逆に利上げを希望するエルドアン大統領による圧力を踏まえて中銀スタンスの差が意識されてリラ売りが攻勢的に進む可能性も抱えている状況だ。

エマージング市場では、ロシアが7月23日に政策金利を6.5%へ引き上げている。パンデミック対策で2020年には4.25%まで引き下げていたが物価上昇を抑えるために今年はすでに4回の利上げを実施している。ロシアの物価上昇率は6月時点で前年比6.5%となり2016年8月以来の高水準となったが、トルコと比較すればかなり低い。
メキシコ中銀は8月12日に政策金利を4.25%から4.50%へ引き上げた。ブラジルも8月4日に5.25%へ利上げしている。世界的な物価上昇が各国の金融政策を難しくしており、物価上昇を抑え込む動きが進んでいる。それら諸国と比較してトルコの政策金利は極めて高く物価上昇率は異常な水準で推移し、それでも大統領が利下げを要求するという考え難い状況にある。金融市場全般がやや楽観ムードで推移しているうちはよいが、金融市場全般がリスク回避へ舵を切り始める場合にはトルコ金融政策の異様さが再認識されてリラ売りへの躊躇が外れることもあり得るということは念頭に入れておきたい。

【中勢のポイント 持ち合い放れ待ち】

【中勢のポイント 持ち合い放れ待ち】

6月2日安値12.44円から6月11日高値13.21円へ上昇した後は、この高安レンジ内での推移が続いている。6月21日安値12.48円では6月2日安値割れを回避してダブル底を形成しているが、終値ベースでは6月21日が2月以降の最安値であり、6月21日を起点として戻り高値を切り上げるジグザグの上昇基調を維持してきているものの8月3日高値13.15円では6月11日高値に一歩届かなかった。
8月9日への下落では7月27日安値12.75円を割り込んでいるため、6月21日以降の底上げパターンは崩れたものの、7月8日安値12.55円割れには至らずにいるため、現状から持ち直せは底上げパターンを再構築して高値試しへ向かう可能性は残る。

概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルで見れば、2月16日と3月19日の両高値をダブルトップとして下落してきたが、ダブルトップの中間点にある3月8日安値から3か月半となる6月21日安値で6月2日安値とのダブル底を形成して戻してきている状況にある。このため、6月21日安値12.48円を割り込まないうちはこのサイクルの上昇期を継続する可能性があるが、6月11日高値を8月3日高値で越えられずに失速した状況にもあるため、8月9日安値12.67円を割り込む場合はこのサイクルのピークを8月3日高値で付けて下落期に入っている可能性が高まる。

以上を踏まえれば、中勢としては8月3日高値13.15円を超えないうちは戻り売り有利として6月21日安値試しとし、底割れからは9月後半から10月中旬にかけての間への下落期に入り昨年11月の史上最安値12.03円を試しに向かう可能性が高まると考える。
ただし8月3日高値13.15円を超えるところからは6月11日高値13.21円試しとし、高値更新からは13.50円超を目指す上昇期に入るとみて押し目買い有利の展開で進むと考える。

【当面の主な予定】

8月16日
 17:00 7月 財政収支 (6月 -250.3億リラ)
8月19日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨
 20:30 週次外貨準備高(グロス) 8/13時点 (8/6時点 677.4億ドル)
8月20
 23:30 7月 中央政府債務残高 (6月 202.7億リラ)
8月23日
 16:00 8月 消費者信頼感指数 (7月 79.5)
 17:00 7月 観光客数 前年同月比 (6月 853.4%)
8月24日
 19:00 7月 自動車生産台数 前年同月比 (6月 3.8%)
8月25日
 16:00 8月 製造業景況感 (7月 114.8)
 16:00 8月 設備稼働率 (7月 76.7%)


※ポイント要約は編集部

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