ドルは上下ともトライし失敗、方向性を欠く
〇先週のドル円、週央にかけてドル買いが優勢、一時レンジ上限を超える110.80まで上昇
〇その後週末のミシガン大消費者信頼感指数悪化をきっかけに急失速、109.55まで値を下げる
〇上値トライは失敗に終わり108.72-110.80レンジに押し戻される、方向性を探る展開続くか
〇今週は8月NY連銀製造業景況指数発表、短期的には来週の「ジャクソンホール会議」に注目集まる
〇今週のドル/円予想レンジは、108.70-110.80
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドル弱含み。週の半ばに掛けてはドル買いが優勢だったが、週末にかけて急失速。週間安値圏で越週している。
前週末、東南アジア諸国連合や日米中などによるASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議が開催され、米中の鍔迫り合いが再び観測されていた。なお、コロナ禍において開催され、様々な物議を醸した東京オリンピックはなんとか無事に終了している。
そうした状況下、ドル/円は110.30円前後で寄り付いたのち、110円前後へと小緩んだものの、下値を確認後は緩やかな右肩上がり。過去1ヵ月程度推移していたレンジ上限を超える110.80円まで一時上昇している。しかし、結果としてドルの上値トライは失敗に終わり、週末に掛けては一転ドル売りが優勢に。1円以上も値を下げた109.55円へと軟化し、週末NYでもそのままドルは安値圏を維持、109.60円レベルで取引を終えている。
なお、先週はユーロ/ドルもなかなか興味深い動き。一時1.1706ドルと年初来安値に面合わせするも割り込めず、週末に掛けては逆方向。1.18ドルレベルまでユーロ買い・ドル売りが進んでいた。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「米ファンダメンタルズと金融政策」と「米中対立」について。
前者は、6日発表された米雇用統計が好数字になったうえ、米要人による強気コメントなどが相次いだことが週前半のドル高を支援。たとえば、ダラス連銀総裁からは「米経済が自身の予想通りとなれば10月からテーパリングに着手すべき」とした発言が聞かれている。しかし、週間でもっとも注視されていた米経済指標の消費者物価がやや予想を下回る数字になったほか、週末のミシガン大消費者信頼感指数が実に10年ぶりの低水準になったことが嫌気され、前述した週後半のドル安を誘発する一因に。
対して後者は、ARF閣僚会議に参加した米国務長官が「中国の核戦力増強に深刻な懸念を表明」するなか、中国外相からは「民主や人権を表看板に掲げて他国の内政に干渉する国がある」などと米国を揶揄するコメントが聞かれていた。また続く海洋安全保障に関する安全保障理事会の会合でも、米国務長官が「南シナ海での中国の行動はいじめ」などと発言したことに対し、中国国連次席大使は「米国こそが南シナ海の脅威」と反論したことが明らかになっている。そうしたなか、ブルームバーグは「米財務長官、数ヵ月以内の訪中検討」と報じていたようだ。関係改善の一助になるのだろうか。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円相場は、下値を試した前週から一転。レンジ上限を超える110.80円まで一時ドル高が進行するも勢いは続かず、レンジ内へと押し戻されている。ドル上値トライが出直しになったばかりか、再び方向性を欠いた状態となっている感も否めない。実際、8月以降の形成レンジは108.72-110.80円といった約2.1円で、本稿執筆時はほぼ真ん中に位置している。非常に居心地の良いレベルで、次の方向性を探る展開がしばらく続く可能性もある。
前述したような状況下、マーケットでもっとも注視されているものは引き続き米ファンダメンタルズならびに金利動向。ただ、先で指摘したように米雇用統計が良好だった反面、ミシガン大消費者信頼感指数が予想外の悪化を示すなど、米経済指標はまだら模様だ。なかなか明確な判断も示しにくい。今月は米FOMCの会合がなく、次回は9月21-22日開催が予定されるなか、短期的には来週26-28日の「ジャクソンホール会議」に注目か。それまでは指標内容や要人発言、株価などの動きに一喜一憂、思惑の交錯した動きをたどる展開が見込まれている。
テクニカルに見た場合、ドルは先々週に下値、先週は上値をトライするもともに失敗。結局、2.1円幅のレンジを形成し、そのなかでの推移となっている。つまり、まずは足もとの108.72-110.80円を上下どちらに放れるのか、方向性にまずは注目だ。敢えてリスクを指摘すれば、先週末に掛けての勢いから下方向にバイアスが掛かりそうだが、下抜けは容易でないと思われる。
材料的に見た場合、中長期的には、米国を中心に日欧などとも対立の構図が続く「中国情勢」や、感染拡大が止まらない「デルタ株の中心とした新型コロナ変異種」、パラリンピック開催に内閣支持率浮揚の期待をかける「日本の政局」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、8月のNY連銀製造業景況指数をはじめとする米経済指標が発表されるほか、7月27-28日開催分のFOMC議事録要旨が公表される予定だ。そうしたなか、パウエルFRB議長の講演や、米国ファクター以外では17-20日に実施される見込みの中国全人代常務委員会を注視している向きがある。
そんな今週のドル/円予想レンジは、108.70-110.80円。ドル高・円安については、先週末にかけ下回ってきた110円前後に位置する移動平均の21日線をめぐる攻防をまず注視。超えれば、先週高値110.80円が視界内に。
対するドル安・円高方向は、先週安値に近い109円半ばはなかなか強いサポート。割り込むと109.20円前後が弱いサポートだが、一気に109円前後へと下落しても不思議はない。その下となると、ここまでの月間安値108.72円が意識されそうだ。
ドル円日足
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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