ユーロドルは反転下落、一段安へ
〇先週のユーロドル、米金利高とドル高から大きく下落、1.1755レベルと7月安値に迫る水準
〇ユーロ安はテーパリング思惑再燃によるドル高が要因、引き続き各国の金融政策が最大のテーマ
〇経済指標など景気回復の数字面では米国が一足先に改善、材料面ではユーロ安要因のほうが多い
〇7月安値を割り込んだことで下値目途は年初来安値1.1703レベル
〇上値は米国雇用統計発表前日のもみあい水準1.1830レベルが買い戻しの限界点に
〇今週は1.1700レベルをサポートに、1.1830レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、週前半は1.18台後半の狭いレンジの中でもみあいを続けていました。水曜にドイツ金利の動き、ADP全国雇用者数、クラリダFRB副議長の発言とユーロドルは降らされる展開となりましたが、クラリダFRB副議長のタカ派発言によるユーロドルの下げが、その後の動きを決定づけました。
翌木曜は米国雇用統計を前に動きが鈍かったものの米国雇用統計が思った以上に強くNFPは前月の数字が上方修正、失業率に至っては5.4%と大きく改善し、米金利高とドル高の動きからユーロドルは大きく下落、1.1755レベルと7月安値に迫る水準となり、週明けの早朝には7月安値を割り込んで4月5日以来のユーロ安の水準となっています。
先週のユーロ安は、上述の通りテーパリング思惑が再燃したことによるドル高がそもそもの要因と言えますが、今後米国の後は英国、そして現段階ではECBは早期の緩和縮小を否定しているものの、状況次第では市場参加者の思惑は高まる可能性もあり、引き続き各国の金融政策が最大のテーマとなっています。
またドル円の週報でも書きましたが、英国では社会実験とも言える経済活動の正常化を進めていますが、いっぽうで新型コロナの感染者はデルタ株に移ってきたことで増加しており、フランスやスペインでは1日あたりの感染者が2万人を超えてきています。ワクチン効果もあって死者は少ないものの、今後ラムダ株になるとどうなるかわからないというしかなく、一時期のような楽観から懸念が強まっている段階です。
米国との対比で考えると感染拡大は米国で目立つものの、経済指標など景気回復の数字面では明らかに米国のほうが一足先に改善していることは確かで、材料面ではユーロ安要因のほうが多いと言えるでしょう。
テクニカルにはどうか、いつもの日足チャートをご覧ください。
先々週から先週初めまでの上昇でそれまでのレジスタンスラインは上抜けたものの、先週後半の下げで結局は上値トライに失敗し、現状は6月下旬の戻り高値と7月末高値とを結んだレジスタンスラインと、それに平行に引いたラインとで構成される下降チャンネルに引き直しました。
現状は7月安値を割り込んだことで、下側のラインを試しやすい展開になってきたと考えられますが、今週末にはこのラインが年初来安値1.1703レベルと交差することとなり、下値の目途として年初来安値を考えることとなります。いっぽうで上値については米国雇用統計の発表される前日のもみあい水準であった1.1830レベルが買い戻しの限界点になっていると考えられます。
今週は上記の両水準を参考にして、1.1700レベルをサポートに、1.1830レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
今週はドイツ10年債の利回り日足チャートを見てみます。
先週前半にはドイツ国債の利回り低下でユーロ売りといった動きもありましたので、ドイツの10年債利回りのチャートを見てみます。
金曜の雇用統計後には米金利上昇の影響でドイツ金利も上昇しましたが、7月初めのマイナス0.2%から直近ではマイナス0.52%台まで0.3%以上の利回り低下となりました。金利の低下幅としては米国10年債利回りと同程度ですが、絶対的な水準を考えるとドイツ国債の利回り低下のほうが大きい印象です。
つまり金利差は拡大する動きで、この傾向は7月中旬以降顕著です。それまでは金利差縮小方向でしたが、最近では改めて金利差が拡大し、そうした動きもドル買い・ユーロ売りに動きやすくする材料と言えるでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
8月9日(月)
15:00 ドイツ6月貿易収支
8月10日(火)
08:01 英国7月小売売上高
18:00 ドイツ8月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏8月ZEW景況感
8月11日(水)
15:00 ドイツ7月CPI ☆
8月12日(木)
08:01 英国7月住宅価格
15:00 英国4〜6月期GDP速報値 ☆
15:00 英国6月鉱工業生産、貿易収支
18:00 ユーロ圏6月鉱工業生産
8月13日(金)
15:45 フランス7月CPI
18:00 ユーロ圏6月貿易収支
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月2日(月)
ユーロドルは東京市場から若干買いが先行する動きとなっていましたが、欧州市場序盤にはユーロドルだけでなくユーロ円でも買いが目立ち、それぞれ1.1897レベル、130.42レベルの高値をつけました。しかし、NY市場に入りドル円の下げとともにユーロ円でも売りが広がり、ユーロドルも押されて買われる前の水準に押して引けました。
8月3日(火)
ユーロドルは欧州市場前場まではドル円と歩調を揃えてドル安の動きとなっていましたが、NY市場前場のドル円の下げがユーロ円の下げも招いたため1.1893レベルから1.1853レベルへと下げました。その後はユーロドル、ユーロ円とも上値の重たい流れのまま引けました。
8月4日(水)
ユーロドルは、欧州市場序盤にドイツ国債の利回りが一段と低下したことから売られ、その後NY市場では弱いADPに反応してユーロ買い、さらにはクラリダFRB副議長によるタカ派な発言からユーロ売りと、忙しい展開が続きました。ユーロドルは結局一日の安値となる1.1833レベルまで水準を下げ安値引けとなりました。
8月5日(木)
ユーロドルは東京市場では動かず、その後は米金利とポンドに引っ張られた動きとなりましたが1日の値幅はわずか29pipsに留まりました。ポンドはややタカ派への変化を見込む向きもいて、MPC前に買いが入ったものの発表後には現状維持かつそれほどタカ派でもなかったことから一時下押し。しかし、議事要旨の中に予測期間中に小幅引き締めが必要となる可能性も示されていたことから、引けにかけては再び買い戻されての引けとなりました。
8月6日(金)
ユーロドルは東京朝方に前日安値を下回ったことで上値が重たい地合いが続きましたが値幅は伴わず。NY市場では強い雇用統計に反応したドル高の動きから、ストップオーダーも巻き込んで1.1755レベルの安値をつけた後に若干戻して引けました。
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