CPI発表から一時急伸するも下落に転じて5日ぶりの反落
〇トルコリラ円、トルコ7月消費者物価上昇率の結果を受けリラ売りから切り返し13.15と一段高へ
〇しかし、ダウ先物や原油が急落、リスク回避的な動きが強まったことも重なり深夜には12.86まで急落
〇トルコ7月消費者物価上昇率は前月比でやや鈍化したが、高騰状況で前年同月比は6月からさらに上昇
〇物価上昇が続けば利下げは困難、8月消費者物価が政策金利を超えてしまうと利上げを強いられる可能性
〇13円以下で推移か超えても維持できない場合は一段安警戒、12.86割れから12.80前後への下落を想定
〇13.00-13.05は戻り売りにつかまりやすい、13.05超えからは強気転換注意とし13.15へ迫る上昇を想定
【概況】
トルコリラ円の8月3日は13.15円から12.86円の取引レンジ。
米長期債利回りの低下傾向を背景としたドル安基調の中で対ドルでのトルコリラが上昇を続けてきたためにトルコリラ円は7月27日深夜安値12.78円から上昇に入り、日足は28日から8月2日まで4連騰、2日高値では13.13円を付けて6月21日以降の高値を更新していた。
8月2日夜高値の後は上昇一服となり3日の日中は13.06円を挟んだ揉み合いで推移して16時の7月トルコ物価上昇率発表へ向かった。7月の消費者物価上昇率は前年比で18.95%へ上昇して6月の17.53%からさらに伸びたため、発表当初はいったんリラ売りとなったが早々に切り返して16時台高値で13.15円まで一段高となった。
しかし勢いは続かずに20時過ぎからは下落に転じ、21時台にダウ先物や原油が急落した局面でリスク回避的な動きが強まったことも重なって13円を割り込むと売りの連鎖反応で3日深夜にはこの日の安値となる12.86円まで急落した。深夜以降はNYダウの反発等で市場心理も落ち着いたためにトルコリラ円も売り一巡でやや買い戻されたものの13円台回復へは進めず、4日午前序盤は12.90円台での推移となっている。
【対ドルでは6月14日以来の高値へ続伸】
ドル/トルコリラの8月3日は8.44リラから8.27リラの取引レンジ。
8月2日夜に8.30リラへ急騰した後は8.35リラを挟んで横這いの推移だったが、7月のトルコ物価上昇率発表からいったん8.38リラへ急落したものの早々に反騰に転じて8.27リラへ一段高となった。しかしリラ買いが一巡するとドルの買い戻しへ向かい21時台からは急落商状となって深夜にはこの日の安値となる8.44リラまで下落した。その後は下げ一服だが8.40リラを挟んだ揉み合いにとどまっている。
6月25日に8.79リラの史上最安値まで下落したところから揺れ返しの上昇に入り、7月16日高値8.46リラからは7月28日までを8.60リラを挟んだ横ばい推移となっていたところ、7月29日に持ち合いを上放れし始めて7月30日夕高値、8.37リラ、8月2日夜高値8.30リラと高値を切り上げてきていた。8月3日夕高値8.27リラへの上昇もこの流れを継続したものだったが、深夜への反落により下落基調にブレーキがかかった印象だ。
【トルコの物価高騰続く】
トルコ統計局が8月3日に発表した7月消費者物価上昇率は前月比が1.8%となり6月の1.94%から若干鈍化したが市場予想の1.54%を上回った。前年同月比は18.95%で6月の17.53%からさらに加速して市場予想の18.5%を上回った。
7月の生産者物価上昇率は前月比が2.46%で6月の4.01%から鈍化したが前年同月比は44.92%となり6月の42.89%から加速した。
消費者物価の前年同月比では、食料品・飲料が24.92%、輸送が24.62%、家具生活用品が23.7%、カフェレストランが20.63%、住宅が19.31%で平均を超えている。
生産者物価の前年同月比では、中間財が57.23%、エネルギーが42.42%、非耐久財が31.44%、耐久財が31.58%、鉱山が34.35%、製造業が47.86%、電気ガス等が15.10%等となっている。資源や原材料価格の高騰がインフレの主要因であり、通貨安もインフレ効果となっている。
消費者物価上昇率は前月比でやや鈍化したものの依然として高騰状況にあり、前年同月比は6月からさらに上昇した。政策金利である週間レポレートの19.00%に対しては0.05%の余裕しかなくなった。物価上昇が続けばエルドアン大統領が望む利下げは困難であり、8月の消費者物価が政策金利を超えるようなことになれば利上げを強いられる可能性もある。このため、当初は当面の利下げはないとしてのリラ買い優勢の動きだったが、それよりも実質マイナス金利状態へ再び転落することへの懸念と利上げ催促によるリラ売りが優勢に転じた印象だ。
8月12日の次回トルコ中銀金融政策決定会合で将来の利下げへの希望的な観測を強調せずに必要に応じて利上げの可能性もあるという姿勢を力強く示せばリラ高のきっかけになりえるが、利上げへの消極姿勢ならリラ売りが再び加速する可能性もあるところだ。
【鍋底型の上昇を継続できるか】
トルコリラ円は6月2日安値で12.44円まで急落したところから6月11日高値13.21円までいったん戻し、6月21日に12.48円まで下げたところで底割れを回避して持ち直しに入ってきた。6月21日以降は戻り高値を切り上げつつその後の安値も底上げ基調を維持してのジリ高推移であり、2020年11月から2021年2月にかけての大上昇期と比較すればジリ高程度の推移で勢いには欠けるが、すでに1か月を超えて上昇基調を維持してきた。
6月2日と6月21日の両安値がダブル底型となっていること、日足の終値ベースでは6月21日が2月以降の最安値となりその後のジリ高により鍋底型を形成している印象もある。ダブル底も鍋型底も、中間にある高値としての6月11日高値13.21円を超えるようだと底打ち反騰の継続として4月29日の戻り高値13.38円や、勢い付く場合には4月2日の戻り高値13.84円等を目指す可能性も出てくるかもしれない。しかし、8月3日に5日ぶりの反落となり13円台を維持できなかったためにこれまでのジリ高にもブレーキがかかった印象だ。8月3日夜安値12.86円を割り込む場合は上昇一巡からの下げ再開へ向かい始める可能性が高まると注意したい。特に7月27日安値12.75円を割り込む場合は下落再開感が優勢となりやすいと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月27日深夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして7月28日夜から7月30日夜にかけての間への上昇を想定してきたが、7月30日夜高値へ続伸したところから8月2日午後安値までいったん下げてから一段高したために8月3日午前時点では7月30日夜高値を直近のサイクルトップ、8月2日午後安値を同サイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとした。また高値形成期は8月4日夜から6日夜にかけての間と想定したが、物価上昇率の発表等からの波乱に注意がいるとして13.00円割れを弱気転換注意とし、8月2日午後安値12.91円割れからは弱気サイクル入りとした。
8月3日夜の急落で8月2日午後安値を割り込んだため、8月3日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして5日午後から9日午後にかけての間への下落を想定する。13.05円前後までを戻り抵抗とし、13.05円超えからは強気転換注意として3日夕高値試しとするが、強気サイクル入りには3日夕高値を上抜く必要があるとみる。
60分足の一目均衡表では8月3日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。その後も両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。安値更新を回避して推移すれば遅行スパンは好転しやすくなるので、遅行スパン好転悪化からはいったん戻りを試すとみるが先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とし、強気転換には先行スパンを上抜き返す上昇が必要と考える。
60分足の相対力指数は3日夜の急落時に20ポイント台へ低下してからやや戻しているものの50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし、強気転換には50ポイント超えから続伸するような反騰が必要と考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月3日夜安値12.86円を下値支持線、13.05円を上値抵抗線とする。
(2)13円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とし、3日夜安値割れからは12.80円前後への下落を想定する。12.80円以下は反発注意とするが、下げ足が速まる場合は12.70円台前半へ下値目途を引き下げる。
(3)13.00円から13.05円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみるが、13.05円超えからは強気転換注意として8月3日夕高値13.15円へ迫る上昇を想定する。
【当面の主な予定】
8月05日
20:30 外貨準備高(グロス) 7/30時点 (7/23時点 626.6億ドル)
8月10日
16:00 6月 失業率 (5月 13.2%)
8月12日
16:00 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 1.3%)
16:00 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 40.7%)
16:00 6月 小売売上高 前月比 (5月 -6.1%)
16:00 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 27.0%)
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 週間レポレート (現行 19.0%)
※ポイント要約は編集部
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