トルコリラ円見通し FOMC後の円高に圧迫される(21/7/29)

トルコリラ円の7月28日は12.88円から12.78円の取引レンジ。

トルコリラ円見通し FOMC後の円高に圧迫される(21/7/29)

FOMC後の円高に圧迫される

〇昨日のトルコリラ円、27日の高安レンジ内にとどまり12.88から12.78の小動き
〇トルコリラ円はドル円の動きに左右される展開、円高に押される形で29日早朝へ下落
〇対ドルでもFOMCを前後してほとんど反応なく8.57から8.51の取引レンジで小動き
〇エルドアン大統領による金融政策への不信感根強く積極的なリラ買いは手控えられている
〇8/3に7月トルコ物価上昇率の発表、利上げ催促的なリラ売り圧力が再び増す可能性も
〇7/27深夜安値12.75割れからは12.70前後への下落を想定
〇28日夜高値12.88超えからは12.90台序盤(12.90から12.93)を目指すとみる

【概況】

トルコリラ円の7月28日は12.88円から12.78円の取引レンジ。
7月16日に12.97円を付けて6月21日安値12.48円以降の戻り高値を切り上げたところから19日に12.67円まで反落し、その後は16日から19日までの高安レンジ内にとどまる動きが7日間続いているが、28日もこの範囲にあり、27日の高安レンジ内にとどまっての小動きだった。
ドル円の動きに左右される展開でトルコリラ円は7月27日深夜安値で12.75円まで下げたが、ドル円が28日夜にかけて戻したところでトルコリラ円もこの日の高値となる12.88円までいったんは上昇した。しかし27日早朝高値12.90円には届かずに戻り高値切り下がりに終わって29日午前序盤には12.80円を割り込むところまで失速している。
米連銀のFOMC声明発表と議長会見が29日未明にあり、声明発表直後にドル円が一時的な上昇反応を見せて27日深夜以降の戻り高値を切り上げたものの特段のサプライズはないとみて早々に下落に転じて110円割れとなったため、トルコリラ円も円高に押される形で29日早朝へ下落したようだ。

【FOMCに対するドル/トルコリラの反応は薄く横這い続く】

ドル/トルコリラの7月28日は8.57リラから8.51リラの取引レンジで小動き。
6月25日の史上最安値8.799リラから7月16日高値8.46リラまで戻した後は上昇一服となり、8.55リラを挟んでほぼ横ばいの推移が続いている。7月26日夕刻に8.62リラまで一時的に下げたものの長続きせずに元の水準へ戻し。27日と28日はさらにレンジを狭めての横ばいとなっている。
7月29日未明のFOMCでは量的緩和縮小への議論が進んでいることが示されたものの議長会見で米連銀の目標達成と量的緩和縮小着手はまだ先とされた。6月の前回会合で量的緩和縮小議論に着手するとされたことでドル高を招いたが、年末ないしは年明けと想定される量的緩和縮小開始はまだ先として為替市場は今回のFOMCに対してドル安反応を示した。ユーロドルは28日未明高値を超えて21日夕以降の高値を更新、ポンドドルも20日夜安値からの上昇を継続、豪ドル米ドルはいったん下げてから反騰、南アランドやメキシコペソ等も対ドルで上昇したが、トルコリラはFOMCを前後してほとんど反応を見せなかった。

米連銀もいずれは量的緩和縮小へ動く。すでにカナダ中銀や豪中銀等が量的緩和に着手しており、パンデミック対策としての世界規模での金融緩和拡大もいずれは終了して正常化へ向かう。その際に量的緩和による過剰流動性供給が投機マネーを刺激して新興国投資へ向かった流れが逆流するのか、量的緩和縮小を問題にしないレベルで新興国の景気拡大により新興国投資が積極的に継続するのかにより新興国通貨の動向も左右されてゆくのだろうが、まだそうした動きを織り込んだ動きに入るのは時期尚早というところだろう。

【来週の物価上昇率発表までは様子見の動き続くか】

トルコリラとしては物価上昇に歯止めがかからない状況の中でトルコ中銀による利下げは当面ないとの見方が下支え要因となっているために6月までの史上最安値更新の流れがストップしているが、エルドアン大統領による利下げ要求等の金融政策への不信感は根強いために積極的なリラ買いは手控えられていることで動きも鈍っているという印象だ。

8月3日には7月のトルコ物価上昇率の発表がある。消費者物価の前年同月比は6月に17.53%へ上昇して5月の16.59%から伸びが加速した。2019年10月に8.55%まで低下したところから上昇基調にあるが、2018年に通貨危機的なリラ安が発生した時には同年10月に25.24%まで上昇した経緯がある。生産者物価上昇率も6月は前年同月比で42.89%と高騰しており、2018年9月に46.15%まで高騰した時に次ぐレベルとなっている。パンデミック後の需給ギャップやサプライチェーンの根詰まりによる原材料価格高騰が背景ではあるが、そこにリラ安による通貨インフレが重なっているために新興国の物価上昇率としては異常な水準となっている。
物価上昇が続くうちはトルコ中銀も利下げに踏み切れないが、7月の消費者物価上昇率に対する市場予想は18.5%へさらに加速するとの見方だ。物価上昇率発表後に利下げはまだ先としてリラ買い反応となる可能性もあるが、利上げ催促的なリラ売り圧力が再び増す可能性もあるところとして注目したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月26日夕刻へいったん下げてから大きく戻したために27日午前時点では23日深夜高値を直近のサイクルトップ、26日夕安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとしたが、27日夜の下落で26日夕安値を割り込んだために28日午前時点では底割れによる弱気サイクル入りとして29日夕から8月2日夕にかけての間への下落を想定した。また28日の戻り抵抗を12.87円前後までとしてその後の反落注意としたが、28日夜に12.88円まで戻してから反落しているので引き続きボトム形成中とみて27日深夜安値割れを試す流れとみる。27日深夜安値を直近のサイクルボトムとした場合は次のボトム形成期が30日夜から8月3日深夜にかけての間へ延びる可能性もあると注意し、強気転換は28日夜高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では28日夜高値からの反落で遅行スパンが再び悪化し、先行スパンからも転落している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は28日夜高値超えからとし、その際は先行スパンも上抜いてくるので遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は28日夜の上昇局面で60ポイントまで戻したがその後に50ポイント割れへ低下しているのでまだ一段安余地ありとして30ポイント割れを目指す流れとみる。強気転換にはもう一度60ポイントまで戻してからも50ポイント以上を維持するような上昇が必要と考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月27日深夜安値12.75円を下値支持線、28日夜高値12.88円を上値抵抗線とする。
(2)12.85円以下での推移中は一段安警戒とし、12.75円割れからは12.70円前後への下落を想定する。12.70円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、下げ足が速まる場合は12.65円前後へ下値目途を引き下げる。また12.80円以下での推移なら30日の日中も安値試しへ向かう可能性が残るとみる
(3)12.85円超えからは強気転換注意として12.88円試しとし、12.88円超えからは12.90円台序盤(12.90円から12.93円)を目指すとみる。12.90円台序盤は反落警戒圏とみるが12.88円を超えた後も12.85円以上での推移なら30日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。

【当面の主な予定】

7月29日
 16:00 7月 経済信頼感指数 (6月 97.8)
 20:30 外貨準備高 7/16時点 (7/9時点 625.8億ドル)
7月30日
 16:00 6月 貿易収支 (5月 -41.3億ドル)
 17:00 6月 観光客数 前年同月比 (5月 3038.38%)
 20:30 外貨準備高 7/23時点
8月02日
 16:00 7月 イスタンブール製造業PMI (6月 51.3)
8月03日
 16:00 7月 消費者物価上昇率 前月比 (6月 1.94%、予想 1.54%)
 16:00 7月 消費者物価上昇率 前年同月比 (6月 17.53%、予想 18.50%)
 16:00 7月 生産者物価上昇率 前月比 (6月 4.01%)
 16:00 7月 生産者物価上昇率 前年同月比 (6月 42.89%)

※ポイント要約は編集部

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