ドル円見通し FOMCにサプライズ無しでドル安反応(21/7/29)

ドル円はFOMC声明発表直後に110.28円までいったん買われたものの早々に109.80円台へ失速した。

ドル円見通し FOMCにサプライズ無しでドル安反応(21/7/29)

FOMCにサプライズ無しでドル安反応

〇ドル円、FOMC前のポジション調整で買い戻しが先行、28日夜に110円台序盤へ戻す
〇FOMC議長会見後特段のサプライズ無しでドル安反応、ドル円は早々に109.80台へ失速
〇米長期債利回りは総じて低下反応、NYダウは前日比127.59ドル安と下落
〇為替市場は総じてドル安反応、ユーロドルは28日未明高値を超えて21日夕以降の高値を更新
〇FOMC声明文「今後の複数回の会合で経済の進捗状況の検証を続けていく」という文言が入る
〇7/27深夜安値109.57割れからは109円前後への下落を想定
〇29日未明高値110.28を超える場合はさらに高値試し、23日深夜高値110.58を目指す流れ

【概況】

ドル円はFOMC声明発表直後に110.28円までいったん買われたものの早々に109.80円台へ失速した。NYダウが連騰で史上最高値を更新する中でリスク選好性が高まったために7月19日夜安値109.05円から23日夜高値110.58円まで上昇してきたが、27日はNYダウが5連騰一服で下落したことで深夜には109.57円まで安値を切り下げていた。28日はFOMC前のポジション調整で買い戻しが先行したために28日夜には110円台序盤へ戻していたが、FOMC後の議長会見等を見て特段のサプライズは無しと市場は受け止めてドル安反応へ進みユーロ等が上昇、ドル円は戻り一巡で失速した。

米10年債利回りは前日比変わらずの1.24%で終了。夕刻の1.23%から夜に1.27%まで上昇していたが、FOMC後に1.22%へ下落、その後は下げ渋りとなった。30年債利回りは前日比0.01%低下の1.89%、2年債利回りは0.01%低下の0.20%で終了。FOMCにサプライズ感がなかったとして長期債利回りは総じて低下反応だった。一方でNYダウは前日比127.59ドル安と下落、5連騰の後は27日、28日と2日間で200ドルを超える下落だが、35000ドルを挟んで最高値近辺での揉み合いの様相。ナスダック総合指数は米長期債利回り低下傾向やIT大手の好決算等で前日比102.00ポイント高と上昇した。
為替市場は総じてドル安反応で、ユーロドルは28日未明高値を超えて21日夕以降の高値を更新、ポンドドルも20日夜安値からの上昇を継続、豪ドル米ドルはいったん下げてから反騰、南アランドやメキシコペソ等も対ドルで上昇した。

【FOMCは量的緩和縮小への議論開始、ジャクソンホール公演で方針説明へ】

米連邦準備制度理事会(FRB=米連銀)は7月27-28日の連邦公開市場委員会(FOMC=金融政策決定会合)で事実上のゼロ金利政策と量的緩和策の維持を全会一致で決定した。
FRBは声明で、量的緩和の縮小に向けて「雇用最大化と物価安定の政策目標達成へ前進している」とし、「今後の会合で経済情勢の進捗を検証していく」とした。物価上昇の上ブレについては「主に一時的な要因を反映している」との従来の見方を維持した。まだ米連銀の政策目標に到達していないために今後の複数会合で情勢を見極めて量的緩和の縮小の準備に入るという姿勢だ。

FOMC声明文では従来なかった「経済は政策目標に向かって改善している。FOMCは、今後の複数回の会合で経済の進捗状況の検証を続けていく」という文言が入った。また議長会見では「量的緩和縮小について初めて突っ込んだ議論をした」「米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れを同時に減らすと思う」と述べて議論の進展を示したが、「利上げ検討からは明らかに遠い」「政策目標達成へ一段と大きく前進するまで量的緩和は維持する」とした。

内容は市場の予想範囲でありサプライズ感はなかった。米連銀は現状で米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドル購入している。縮小開始に際してはそれぞれ50億ドル規模の縮小から着手されるのではないかと予想されているが、開始時期については年末か年明け以降か見解も分かれるところだ。
会見においてパウエル議長は「ジャクソンホールで開催される毎年恒例の金融・経済シンポジウムで行う講演の原稿を執筆中だ」と述べた。同会合は8月26-28日に開催される。市場はこの会合での議長講演でより具体的な量的緩和縮小等の判断基準や手法及び時期について示されるのではないかとみているが、議長発言は市場の見方を肯定しつつ市場に心構えを求めているようにも思える。

【7月27日深夜安値割れを回避できるか、7月19日夜安値割れへ向かうか試される】

ドル円は7月14日高値110.69円と7月23日夜高値110.58円は対となり、19日深夜安値109.05円を挟んで左右対称となっているため、7月23日夜高値を越えれば7月19日深夜安値を頭、8日深夜と27日深夜の安値を両肩とした逆三尊型の底打ちとなり上昇基調を再構築することも可能なところにある。しかし27日深夜安値割れから19日深夜安値に迫るような下げとなれば逆三尊型も崩れ、7月19日深夜安値割れからは7月2日高値111.65円を起点とした中勢レベルの下落継続となり先安感も強まるところにある。
FOMC後はドル安反応であり、米10年債利回りは7月20日からの戻りが一巡して再び低下傾向を見せておりドル円には売り圧力となる。株高継続でのリスク先行感が投機通貨買いを助長してドル安感を強める場合もドル円には売り圧力となる。まだFOMC後の反応も定まっていない時間帯だが、29日夜の米国市場時間でドル安が進むようだとドル円も安値試しへ向かいやすくなるのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月22日夜安値から3日目となる27日深夜安値でサイクルボトムを付けて戻したが、23日深夜高値から3日目となる29日未明高値でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りしていると思われる。次のボトム形成期は30日夜から8月3日深夜にかけての間と想定されるため、29日未明高値を超えないうちは一段安警戒とし、29日未明高値を超える場合は上昇再開として29日夜から8月2日深夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では27日深夜からの反騰で遅行スパンが好転したが29日未明高値からの反落で再び悪化しつつある。先行スパンもいったん上抜けたものの再び転落しつつある。このため29日未明高値を超えないうちは一段安警戒として遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、29日未明高値超えからは上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は28日夜に70ポイント手前まで上昇していたがその後の反落で50ポイントを割り込んでいる。60ポイント台を回復するような反発がみられないうちは一段安警戒として30ポイント割れを試す流れとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月27日深夜安値109.57円を下値支持線、29日未明高値110.28円を上値抵抗線とする。
(2)110円以下での推移中は下向きとし、109.57円割れからは109円前後への下落を想定する。109円以下は反発注意とするが110円以下での推移なら30日の日中も安値試しへ進みやすいとみる。
(3)110円から110.28円手前までは戻り売りにつかまりやすいとみるが、110.28円を超える場合はさらに高値試しへ向かうとみて23日深夜高値110.58円を目指す流れとみる。また110円以上での推移なら30日も高値試しへ向かう可能性があると予想する。

【当面の主な予定】

7/29(木)
10:00 (NZ) 7月 NBNZ企業信頼感 (6月 -0.4、予想 )
10:30 (豪) 4-6月期 輸入物価指数 前期比 (1-3月 0.2%、予想 1.0%)
16:55 (独) 7月 失業者数 前月比 (6月 -3.80万人、予想 -2.80万人)
16:55 (独) 7月 失業率 (6月 5.9%、予想 5.8%)
18:00 (欧) 7月 消費者信頼感・確定値 (速報 -4.4)
18:00 (欧) 7月 経済信頼感 (6月 117.9、予想 118.5)
21:00 (独) 7月 消費者物価指数・速報値 前月比 (6月 0.4%、予想 0.5%)
21:00 (独) 7月 消費者物価指数・速報値 前年同月比 (6月 2.3%、予想 3.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 41.9万件、予想 38.0万件)

21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 323.6万人、予想 319.6万人)
21:30 (米) 4-6月期 GDP・速報値 前期比年率 (1-3月 6.4%、予想 8.5%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費・速報値 前期比年率 (1-3月 11.4%、予想 10.5%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE・速報値 前期比年率 (1-3月 2.5%、予想 5.9%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前月比 (5月 8.0%、予想 0.3%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前年同月比 (5月 13.9%、予想 -3.3%)
26:00 (米) 財務省7年債入札

7/30(金)
07:45 (NZ) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 -2.8%)
08:30 (日) 6月 失業率 (5月 3.0%、予想 3.0%)
08:30 (日) 6月 有効求人倍率 (5月 1.09、予想 1.10)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産・速報値 前月比 (5月 -6.5%、予想 5.0%)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (5月 21.1%、予想 20.9%)
08:50 (日) 6月 小売業販売額 前年同月比 (5月 8.2%、予想 0.2%)
10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前期比 (1-3月 0.4%)

10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前年同期比 (1-3月 0.2%)
14:00 (日) 6月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (5月 9.9%、予想 7.1%)
17:00 (独) 4-6月期 GDP・速報値 前期比 (1-3月 -1.8%、予想 2.1%)
17:00 (独) 4-6月期 GDP・速報値 前年同期比 (1-3月 -3.1%、予想 9.6%)
18:00 (欧) 6月 失業率 (5月 7.9%、予想 7.9%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数・速報値 前年同月比 (6月 1.9%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価コア指数・速報値 前年同月比 (6月 0.9%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・速報値 前期比 (1-3月 -0.3%、予想 1.8%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・速報値 前年同期比 (1-3月 -1.3%、予想 13.2%)

21:30 (米) 4-6月期 雇用コスト指数 前期比 (1-3月 0.9%、予想 0.9%)
21:30 (米) 6月 個人所得 前月比 (5月 -2.0%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 6月 個人消費支出(PCE) 前月比 (5月 0.0%、予想 0.7%)
21:30 (米) 6月 PCEデフレーター 前年同月比 (5月 3.9%、予想 4.1%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前月比 (5月 0.5%、予想 0.6%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (5月 3.4%、予想 3.7%)
22:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
22:45 (米) 7月 シカゴ購買部協会景況指数 (6月 66.1、予想 63.0)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 80.8、予想 80.8)

※ポイント要約は編集部

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