トルコリラ円見通し ドル円の続伸で押し上げられたが対ドルでも確り
〇トルコリラ円、7/1ドル円の一段高に押し上げられ、6/23高値をわずかに超えて12.90円台に到達
〇対ドル、7/1為替市場はドル高基調・新興国通貨安の中でもトルコリラは確り
〇トルコの製造業の堅調さ続く、外貨準備高増加、観光業についての朗報も
〇物価上昇への懸念続く、利上げできない環境も続く可能性
〇12.75以上での推移中は上昇余地ありとし、12.91超えからは12.95前後を目指すとみる
〇12.75割れからは下げ再開を警戒して、12.60台後半への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の7月1日は12.90円から12.71円の取引レンジ。
6月21日に12.48円まで下げたものの6月2日安値12.44円割れを回避して下げ渋りからやや持ち直しの動きとなっていたが、6月23日に12.89円まで戻した後は12.80円に届かずに12.60円前後では買い戻される揉み合い型での推移となっていた。しかし7月1日は為替市場全般がドル高に圧される中でも対ドルでトルコリラが確りし、ドル円が6月30日夜からの反騰を継続して6月24日高値を超えて4月23日以降の最高値を更新し、1日深夜にかけても一段高したため、トルコリラ円は対ドルでの確りとドル円の一段高に押し上げられて12.80円の抵抗を突破して6月23日高値をわずかに超えて12.90円台に到達した。
7月2日夜の米雇用統計次第では波乱も警戒されるところだが、ドル円の上昇に支えられてやや先行した買いが優勢の動きと思われる。また週次の外貨準備高が6月25日時点で592.4億ドルとなり前週の560.2億ドルから増加したこともリラ買い要因となったようだ。外貨準備のグロスは4月末に469億ドルまで減少していたがその後は徐々に回復、この3週間では顕著な拡大となっている。外貨準備高増加はリラ防衛の体力がやや回復していることを示す。
【新興国・資源通貨安の中でもトルコリラは対ドルで確り】
ドル/トルコリラの7月1日は8.72リラから8.62リラの取引レンジ。
6月26日早朝に8.799リラへ下落して史上最安値を更新したもののその後は下落一服でやや持ち直しの動きとなっているが、6月23日高値8.57リラ超えには至らず、史上最安値圏での下げ渋り程度の範囲にとどまっている。
7月1日は米新規失業保険申請件数が予想を下回ったことや2日夜の米雇用統計が堅調な数字になるだろうとの期待から為替市場はドル高基調での推移となり、豪ドル米ドルは2日未明に0.7453ドルまで下げてFOMCショック後の6月21日安値0.7478ドルを割り込み2月25日高値以降の安値を更新した。南アランドも対ドルで6月7日高値以降の安値を更新して下落基調が進んだ。またメキシコペソも6月25日からはジリ安の推移が続くなど、資源通貨、新興国通貨は全般に売られたのだが、トルコリラはそれらとは逆行して確りした。史上最安値を更新した後ということで全般的な動きとはずれが出ているのだろうと思われるが、今晩の米雇用統計からドル全面高になる場合はトルコリラへの売り圧力も強まると注意したい。
【トルコの製造業の堅調さ続く】
7月1日に発表されたイスタンブール6月製造業PMIは51.3となり5月の49.3から上昇した。大幅な改善予想もあったが堅調な上昇幅だった。
昨年のパンデミック第一波により2020年4月には33.4へ急激な悪化となったが、2020年7月には56.9まで急激に回復した。その後は感染第二波や第三波の影響でやや右肩下がりとなり5月には49.3まで低下して好況目安の50を割り込んだものの第三波も落ち着いて復調している印象だ。
トルコの製造業は堅調に回復してきており、観光業がまだ低迷したままだが、トルコのエルバン財務相は6月末の経済界での懇親会で4-6月期のGDP見通しは前年同期比で20%となり1-3月の7.0%を大幅に上回って2020年7-9月期からは4期連続のプラス成長を見込むとの強気の予想を披露している。
懸案の観光業についても、ドイツがトルコへの一般渡航警告規制を解除したことは朗報。ドイツは感染拡大の「リスク地域」の対象からトルコも含む80か国を解除した。1週間あたりで10万人のうち感染者が200人以下の地域に対しては7月1日付けで警告が解除された。欧州各国での渡航制限が徐々に緩和してきていること、ワクチン普及も進んでいることでトルコへの観光客増加も期待されるところだ。
【物価上昇への懸念は続く】
トルコ政府は7月1日に消費者向け電気料金を15%、住宅用天然ガス価格を12%それぞれ引き上げた。またトルコ国有企業のガス販売会社BOTASは1日、産業用天然ガス価格を20%、電力生産に使われるガスについては20.2%値上げすると発表した。原油高等の原材料費の高騰による公共料金の引き上げということだろうが、物価上昇が続くトルコにとってはさらに物価上昇を招きやすい状況に入ってきた印象だ。
7月5日にはトルコの6月物価上昇率の発表があるが、消費者物価の前年同月比は5月の16.59%から17%台へ加速すると予想され、生産者物価の前年同月比も5月の38.33%から40%超へと伸びるのではないかと予想されている。
エルドアン大統領は6月1日にインフレが現状でピークとなれば利下げへ進めると言及したことで6月2日にトルコリラは対ドル及び対円で急落した。トルコ中銀はインフレが低下しない限りはインフレ率を下回るような利下げはしないとしているが、国際原材料価格の騰勢は続いており、7月の物価上昇率はさらに加速しかねない状況となりつつあり、利上げできない環境も続くのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月26日早朝安値からの戻りが29日早朝高値で一巡して下落期に入っていたが、30日夜の上昇で29日早朝高値を超えてきたため、7月1日午前時点では30日午前安値を起点として新たな上昇期に入っているとし、7月2日朝から6日朝にかけての間への上昇を想定した。7月2日午前序盤へ続伸しているので引き続きトップ形成中とみるが、2日夜には米雇用統計の発表もあり乱高下となる可能性もあるところのため12.75円を割り込む下落発生からは弱気サイクル入りとして7月5日午前から7日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では30日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いたが、その後も両スパン揃っての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、高値切り上げへ進めないと遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは安値試し優先とする。その際に先行スパンからの転落を回避するならその後に遅行スパンが好転するところからは上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まると注意する。
60分足の相対力指数は30日夜から2日早朝へと一段高してきた際に指数のピークがフラットとなり弱気逆行の気配がみられる。50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、50ポイント割れからは下げ再開を警戒して30ポイント前後への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.75円を下値支持線、12.91円を上値抵抗線とする。
(2)12.75円以上での推移中は上昇余地ありとし、12.91円超えからは12.95円前後を目指すとみる。12.95円以上は反落警戒とするが、12.80円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。また勢い付く場合は13円に迫る可能性もあるとみる。
(3)12.75円割れからは下げ再開を警戒して12.60円台後半への下落を想定する。12.65円以下は反騰注意とするが、12.75円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる、また下げ足が速まる場合は12.60円前後へ下値目途を引き下げる。
【当面の主な予定】
7月5日
16:00 6月 消費者物価上昇率 前月比 (5月 0.89%)
16:00 6月 消費者物価上昇率 前年同月比 (5月 16.59%)
16:00 6月 生産者物価上昇率 前月比 (5月 3.92%)
16:00 6月 生産者物価上昇率 前年同月比 (5月 38.33%)
7月8日
20:30 週次 外貨準備高 7/2時点
7月9日
16:00 5月 経常収支 (4月 -17.12億ドル)
7月12日
16:00 5月 失業率 (4月 13.9%)
7月14日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合
※ポイント要約は編集部
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