ドル円の急伸に支えられるが下げ渋り持ち合いの範囲
〇トルコリラ円、30日は12.79から12.61の取引レンジ、前日の日足陰線に対して陽線での切り返しに
〇対ドルは8.74から8.62で前日とほぼ変わらない推移にとどまる
〇米雇用統計が予想以上に良ければドル高が加速しトルコリラも売られやすくなる可能性
〇トルコ5月貿易収支は41.3億ドルの赤字で市場予想と一致、輸出入は昨年同時期と比べ回復感を示す
〇12.67以上で推移中は上昇余地あり、12.80超えから12.90前後を目指すとみる
〇12.67割れから下げ再開を警戒し12.60前後試し、12.60割れから12.50から12.55へ下値目途引き下げ
【概況】
トルコリラ円の6月30日は12.79円から12.61円の取引レンジ。前日とほぼ変わらずの高安範囲だったが、前日の日足陰線に対して陽線での切り返しとなった。
6月21日安値で12.48円まで下げて6月2日安値12.44円へ迫ったものの底割れを回避し、6月23日に12.89円まで戻したところからは上げ渋っており、この4日間は12.80円手前から12.60円前後までのレンジでの騰落で日足は陰線と陽線を交互に付けている。
6月30日は米経済指標の強さからドル円が急伸し、夕刻の110.40円台から深夜には111円台を回復、1日早朝には6月24日付けた4月23日以降の高値である111.11円を超えて111.16円まで高値を伸ばしたことがトルコリラ円には押し上げ要因となったが、12.80円に届かない範囲にとどまった。
ドル/トルコリラの6月30日は8.74リラから8.62リラの取引レンジで前日とほぼ変わらないレンジでの推移にとどまった。米経済指標が強かったことと先週末でFOMC後の揺れ返し的なドル安が一巡してドル高感が再燃していることが圧迫要因だが、6月26日早朝に8.799リラへ下落して史上最安値を更新したことで下落一服感が出ており、29日及び30日の値動きは若干リラの買い戻し優勢の動きだった。しかし30日夜に8.62リラへ上昇したところでは戻り売りにつかまっており、8.62リラから8.64リラにかけては上値が重くなっている状況だ。
為替市場全般は1日夜の米新規失業保険申請件数とISM製造業景況指数、2日夜の米労働省雇用統計へと重要指標が続く中でドル高感が加速するのか、いったんドル安へ風向きを変えるのか試されるところにある。先のFOMCで米連銀が量的緩和縮小開始の議論に着手して利上げ想定時期を前倒ししたことから、特に2日夜の米雇用統計が予想以上の良好さを示す場合はドル高が加速してトルコリラも売られやすくなると注意したい。
【対外貿易は回復基調を維持、5月サービス部門PPIは伸びが加速】
トルコ統計局が発表した5月の貿易収支は41.3億ドルの赤字となり市場予想と一致したが、4月の30.8億ドルを上回った。恒常的な貿易赤字国ではあるが、輸出入の伸びは堅調さを示した。輸出は前年同月比で63.7%増となり4月の113.6%増に続いて昨年同期のパンデミック期との比較において回復感を強めた。輸入も前年同月比51.6%増となり4月の62.5%増に続いて回復感を示した。
6月30日に発表された5月のサービス部門生産者物価指数の伸び率は前月比13.24%となり4月の9.75%から加速した。前年同月比では28.55%となり4月の26.26%から加速した。前年同月比は2020年5月に9.72%まで伸び率が鈍化していたがその後は上昇基調にあり、2020年10月に20%を超えた後も顕著な低下を見せずに2018年9月の31.0%以来の高水準となっている。
トルコ中銀は7月14日に金融政策決定会合を開くが、その前の7月5日に6月の物価上昇率の発表が控えている。5月の消費者物価上昇率は前年同月比で16.59%だったが市場予想では17%台への上昇が見込まれている。5月の生産者物価上昇率は38.33%だったが40%超えの予想も出ている状況だ。
物価上昇が収まらない限りはトルコ中銀も懸案の利下げへ踏み切れないと思われるが、物価上昇を抑制するための利上げをしなければ市場も利上げ催促的なリラ売り攻勢をとりかねないところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月26日早朝安値からの戻りが29日早朝高値で一巡して下落期に入っていたが、30日夜の上昇で29日早朝高値を超えてきたため、30日午前安値を起点として新たな上昇期に入った可能性がある。このため、30日午前安値12.61円を上回るうちは7月2日朝から6日朝にかけての間への上昇余地ありとみる。ただし戻りは短命の可能性もあるので12.67円割れを弱気転換注意とし、12.61円割れからは下落期入りとして7月5日朝から7日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では30日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いた。その後も両スパン揃っての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、高値切り上げへ進めないと遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は30日夜の上昇で70ポイント台へ乗せたがその後の伸び悩みで50ポイント台へ低下している。50ポイントを一時的に割り込んでも回復するうちは60ポイント超えから上昇再開とみるが、45ポイント割れからは下げ再開を警戒して30ポイント前後への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.67円を下値支持線、12.80円を上値抵抗線とする。
(2)12.67円以上での推移中は上昇余地ありとし、12.80円超えからは12.90円前後を目指すとみる。12.85円以上は反落注意圏とみるが、12.70円以上を維持しての推移なら2日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.67円割れからは下げ再開を警戒して12.60円前後試しとし、12.60円割れから下げ足が速まる場合は12.50円から12.55円にかけてのゾーンへ下値目途を引き下げる。また12.67円以下での推移が続く場合は2日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7月1日
16:00 6月 イスタンブール製造業PMI (5月 49.3)
20:30 週次外貨準備高 6/25時点 (6/18 560.2億ドル)
7月5日
16:00 6月 消費者物価上昇率 前月比 (5月 0.89%)
16:00 6月 消費者物価上昇率 前年同月比 (5月 16.59%)
16:00 6月 生産者物価上昇率 前月比 (5月 3.92%)
16:00 6月 生産者物価上昇率 前年同月比 (5月 38.33%)
7月8日
20:30 週次 外貨準備高 7/2時点
7月9日
16:00 5月 経常収支 (4月 -17.12億ドル)
7月12日
16:00 5月 失業率 (4月 13.9%)
7月14日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合
※ポイント要約は編集部
関連記事
-
南アフリカランド(ZAR)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
南アランド円週報:『約1カ月ぶり安値を更新するなど上値の重い展開が継続中』(11/23朝)
南アランドの対円相場は、11/7に記録した約4ヵ月ぶり高値8.86円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時8.44円まで下落しました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
トルコリラ円週報:『トルコ中銀は政策金利の据え置きを決定。一巡後の反発に期待』(11/23朝)
トルコリラの対円相場は、9/16に記録した史上最安値4.10円をボトムに切り返すと、11/15にかけて、約3カ月半ぶり高値4.56円(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2021.07.02
トルコリラ円見通し ドル円の続伸で押し上げられたが対ドルでも確り(21/7/2)
トルコリラ円は対ドルでの確りとドル円の一段高に押し上げられて12.80円の抵抗を突破して6月23日高値をわずかに超えて12.90円台に到達した。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2021.06.30
トルコリラ円見通し 6月2日安値割れ回避での下げ渋り続く(21/6/30)
トルコリラ円の6月29日は12.79円から12.61円の取引レンジ。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。