判断難しい、ドル下値トライは「ダマシ」か
〇先週のドル円、週間高値110.75を付けた後ドル売り・円買いが優勢になり109円まで下落
〇調整局面入りかと思われたが週末にドルが反騰し109.96まで切り返し109.65前後で越週
〇ドルの下値トライはだまし又は下押しが終了した可能性、いま一度見極めが必要か
〇米国とイランが間接協議を行いイラン側は前進ありとのコメント、今週も協議が続く為行方に注意
〇今週は日米首脳会談や米経済指標の発表も相次ぐ為内容に要注意、波乱の一週間となるか
〇今週のドル/円予想レンジ108.70-110.70
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドルが結果小反落。年明け以降、最大規模のドル安が一時進行したものの続かず。週末にかけては急激な戻しも観測されていた。
前週末、日米韓高官が3者協議を行い「対北朝鮮での連携強化」で一致したことを明らかにするなか、EUやイランなどが核合意をめぐる対面式会合を6日に開催。そこに米国自身も参加し、復帰問題を協議することが改めて示されている。
そうした状況下、ドル/円は110.65円レベルで寄り付いたのち、週間高値の110.75円を示現。しかし、ドル高は長く続かず、その後は一転してドル売り・円買いが優勢に。高値から1円を大きく超える109円ちょうどまで下落し、本格的な調整局面入りとの指摘も聞かれたが、週末は逆にドルが反騰高。109.96円と110円手前まで切り返し、週末NYもそのまま高値圏をキープ、109.65円前後で越週となった。
なお、週間を通して目に付いたのはドル安とともにポンド安。実際、ポンド/円は6日に153.41円の年初来高値を示現後急反落となり、週末には150円割れまで短期間で3円を超える下落をたどっている。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「核合意協議」と「中国情勢」について。
前者は、前述したような「米復帰をめぐる核合意協議」が6日に開催され、犬猿の仲である米国とイランが「仲介役を挟んだ」恰好ではあるものの、間接協議を行った。ちなみに、詳細については不明だが、共同通信ではイラン政府筋が「協議に前進があった」と前向きなコメントを残したと報じている。また、その後も7日や9日などにも協議は実施されたうえ、週をまたぎ今週も協議が続くことになったという。イランのアラグチ外務次官からは、今後の動静について「米国の経済制裁解除が先決だ」とのコメントが聞かれるなか、果たして米国の出方は如何に。今週も協議の行方には注意を払いたい。
対して後者は、対中包囲網の切り崩しを目的に中国要人による積極的な外交が目に付く。隣国である韓国について、王外相が対面式の会談を行ったことに続き、日本の茂木外相とも電話会談を実施。そのなかで、「独立自主国家として客観・理性的に中国の発展を取り扱うことを望む」などと牽制したという。また別に、習国家主席がドイツのメルケル首相と電話会談を実施し、関係改善を持ち掛けていたようだ。ただ、そうしたなか台湾については、「中国戦闘機が台湾の防空識別圏に侵入」といった威嚇行動が連日のように観測され、危機的状況がさらに高まっている感を否めない。
<< 今週の見通し >>
ドル/円は判断の難しい局面。筆者は日報で、何度か「今年のドル/円は目先高値から1週間程度の下押し、価格的には1.3円ほどの下落にとどまる傾向」とレポートしたが、8日にかけてドルは今年最大規模の下落幅を記録するなど、そのパターンが崩れている。とすれば、本来なら「いよいよ本格的な調整局面入り」となるのだが、先週末は逆に強烈な打ち返し、ドルの逆行高で下げ幅の多くを取り戻してきた。つまり、ドルの下値トライは「ダマシ」、あるいは「下押しは早くも終了した」可能性を捨て切れない。一旦相場観をニュートラルとし、情勢をいま一度見極めたいところだ。
前述したような状況下、材料的には大きく2つの要因に注目。ひとつは、先でも取り上げた今週も引き続き実施される「核合意協議」や、週末に実施される「日米首脳会談」といった重要な国際会議。関連する発言や報道にも要注意だろう。また、米金利の動きに対する注目度が高いなか、発表される米経済指標や企業決算を注視している声も少なくないようだ。強気派のなかには、米金利上昇を促すような内容を期待する向きも多い。
テクニカルに見た場合、ドル/円はここ1-2週間で目先高値110.97円から2円近い下落をたどるも、スグに1円程度戻すという、なかなか振れの大きなジェットコースター相場。今週も、そんな荒っぽい変動が続く公算が大きいものの、再び「時間調整」の様相を呈し、ここ最近のレンジである109.00-110.97円を中心とした一進一退をたどる可能性も取り沙汰されていた。ともかくドルが再び上値トライをするのか否かといった、次の一手、次の方向性をしっかりと見極めたい。
材料的に見た場合、中長期的には領有権をめぐる周辺国との対立や人権問題など話題に事欠かない「中国情勢」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「米露が冷戦への逆行懸念」、「新型コロナウイルス再拡大と変異種の発生、ワクチン開発・接種」、「バイデン米大統領による政権運営」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、3月の消費者物価指数や4月のミシガン大消費者信頼感指数速報といった米経済指標が発表される見込みのほか、米財務省による10年債や30年債の入札、米地区連銀報告の公表など材料盛沢山。それ以外でも、米金融機関を中心とした企業決算発表や日米首脳会談といった政治イベントなども予定されている。波乱の一週間か。
そんな今週のドル/円予想レンジは、108.70-110.70円。ドル高・円安については、先週末に回復できなかった110円レベルが最初の抵抗に。超えれば先月末に記録したドルの戻り高値110.97円が再び意識されそうだ。
対するドル安・円高方向は、こちらも先週安値である109円の攻防にまずは注目。割り込めば108.40円前後、そして108円レベルなどがターゲットに。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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