ドル円見通し 3か月の上昇に対する調整安
〇ドル円年初来の米長期金利上昇で102円台から8.39円上昇後、金利低下に転じ3/31以降2円近く下げる
〇週末発表の米3月PPI前年同月比+4.2%に上昇加速、ただ、FRBは一過性との見解
〇米10年債利回り昨年3月0.31%に低下後8月以降上昇本格化、年明け以降上昇加速、今後2%超えも想定
〇ドル円未だ上昇期、米長期債利回りの上昇基調が続けば112.21、114.54等目指す可能性も
〇109.50割れでも切り返すうちは上昇の可能性110円超えからは110.30-70レベルを目指すか
〇109.30割れからは109円試し、109円割れからは108円前半へ 108円序盤は買われやすい水準で反発か
【概況】
ドル円は1月6日安値102.57円から3月31日高値110.96円まで凡そ3か月の上昇で8.39円の上げ幅を実現してきたが、その背景は米長期債利回りが年初から一段と上昇を加速させたことであった。米10年債利回りが3月30日に1.77%台へ到達したところから低下に転じたため、ドル円は反落に入り4月8日深夜には109.00円(ベンダーによっては108.98円)まで下落、3月31日からの下げ幅は2円近くとなった。
4月9日は米生産者物価上昇率が市場予想を超えたことで米長期債利回りがいったん上昇したためにこれまでの低下傾向から再上昇へ向かう可能性が浮上したとしてドル円も反発に転じて109.95円までいったん戻した。3月31日からの下げ幅に対しては凡そ半値を戻した水準となったが、その後に米長期債利回りが再び低下したこともありいったん109.54円まで小反落し、109.60円台で週を終えた。
【米国の物価上昇は一時的か?】
4月9日の米10年債利回りは前日比0.04%上昇の1.66%で終了。3月30日に1.77%台を付けたところをピークに低下に転じて9日早朝に1.61%まで水準を切り下げたが、9日夜の米生産者物価指数の発表直後にはいったん1.68%へ上昇した。
米労働省が発表した3月の生産者物価指数は前月比1.0%上昇で2月の0.5%から大幅に加速して市場予想の0.5%も上回った。前年同月比は4.2%上昇で市場予想の3.8%を上回り2月の2.8%上昇から加速した。変動率の大きな食品とエネルギーを除いたコア指数も前月比で0.7%上昇となり2月の0.2%から加速、前年同月比も3.1%上昇となり市場予想の2.7%及び2月の2.5%上昇を上回った。
原油相場の上昇や穀物相場の上昇などにより総じて国際商品が上昇していることに加え、感染拡大が落ち着いて経済活動が再び活発化する中で需給ギャップが生じていることが最近の米国物価上昇を招いているが、これに対して米連銀はパウエル米連銀議長などが一時的なものとし、ゼロ金利及び量的緩和政策の長期継続方針を維持している。
4月9日にも米連銀のクラリダ副議長が通信社インタビューで「旺盛な需要と供給のボトルネックを背景にインフレ率は今後数か月で目標の2%を上回る見込みだが、そのほとんどが一過性となり年内に2%前後に戻る」との見通しを示している。4月13日には米消費者物価の発表があるが、2月時点では全体の前年同月比が1.7%上昇、コア指数が1.3%の上昇であり、3月についての市場予想は全体が2.5%上昇、コア指数が1.5%の上昇となっている。
【年初からの上昇に対する調整期】
ドル円は1月6日安値を起点として本格的な上昇期に入った。1月6日からの上昇はドル指数の底打ち、ユーロドルの天井と合致しており、豪ドルやポンドドルなどが2月後半まで上昇期を伸ばしたもののそれらも3月入りから下落に転じてきた。いずれも米長期債利回り上昇によるドル高圧力を背景としている。
米10年債利回りは昨年3月のコロナショック第一波において0.31%まで急落したところを大底として上昇に転じ、昨年8月の0.50%をダブル底として上昇基調が本格化に入り、年明けに1.2%を超えたところから上昇がさらに加速した。3月30日には1.77%台へ上昇したが昨年コロナショック前の1月後半以来の水準だが、2019年11月のピーク時に付けた1.97%には届いていない。1.77%台まで上昇した段階で、利回り益確保のために債券買いも入って長期債利回り低下となったのだろうと思われるが、大きな流れとしては2%を超えてゆく展開も想定されるところだ。米10年債利回りはこれまでも数日の調整を入れてから一段高を繰り返しており、1月12日から1月28日まで数えで12日間の低下が入ったところが最長の調整期であった。今回は3月30日から4月8日までは7日営業日であり、仮に週明けから水準の切り上げが始まると調整終了から上昇再開感が強まる可能性がある。
ドル円は引き続き米長期債利回り動向を見ながらの展開と思われるが、凡そ3か月で8円強の上昇後に2円近い調整を入れたところにある。移動平均で見れば26日移動平均まで下げた状況であり、ここで下げ止まれない場合は52日移動平均(現在107.43円)前後を試す可能性が残るが、110円台回復から戻り高値を切り上げてくるなら4月8日深夜安値を押し目底として次の上昇期に入る可能性も考えられる。
ドル円の1月6日からの上昇レベルは、週足においては概ね80週前後の底打ちサイクルによる反騰であり、2016年6月24日底、2018年3月26日底、2019年8月26日底からの上昇などと同レベルの勢いを持つものと思われる。すでに上昇幅としては8.39円に達しているため、2019年8月26日から2020年2月20日までの上昇幅7.76円を超えているが、2018年3月26日からの上昇は2018年10月4日まで28週で9.91円高、2016年6月24日から同年12月15日高値までは26週で上昇幅が19.61円であり、80週サイクルの上昇期としては26週前後(半年規模)となるケースが続いていることを踏まえるとまだ上昇余地が十分にあるのではないかと思う。
110円超でいったん調整につかまったのは、2016年12月天井と2018年10月4日高値、2020年2月20日高値を結ぶ下降チャンネルの抵抗線に到達したことでの上昇一服という側面もある。年度末の利益確定売りも上値を抑えたと思われるが、米長期債利回りの上昇基調がなお継続的とすれば、3月31日高値を超えて2020年2月20日高値112.21円、2018年10月4日高値114.54円等を目指す可能性もあるのではないかと思われる。
【当面のポイント】
中勢は1月6日底を起点とした上昇基調がまだ続くとみる。すでに4月8日夜安値を押し目底として上昇再開に入る可能性があるとみるが、もう一段安したところで押し目形成となって上昇再開へ向かう可能性も多少残ると考える。
(1)当初、109.30円を下値支持線、110.00円を上値抵抗線とする。
(2)109.50円を割り込んでも切り返すうちは4月8日夜安値からの上昇継続の可能性を優先し、110円超えからは110円台中盤(110.30円から110.70円)を目指すとみる。110.70円前後はいったん戻り売りにつかまりやすいとみるが、110円台で足場を固めて次の上昇へ進みやすいとみる。
(3)109.30円割れからは109.00円前後試しとみる。109円前後は押し目買いされやすいとみるが、109円割れから続落の場合は108円台前半(108.50円から108.00円)を試すとみる。年初からの上昇幅に対する3分の1押しが108.16円前後にあるため、108円台序盤は買われやすい水準とみてその後の109円台回復からは上昇再開に入ると考える。(了)<11日16:00執筆>
【当面の主な予定】
4/12(月)
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前月比 (2月 0.4%、予想 0.4%)
08:50 (日) 3月 国内企業物価指数 前年同月比 (2月 -0.7%、予想 0.5%)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前月比 (1月 -5.9%、予想 1.7%)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 -6.4%、予想 -5.3%)
22:00 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
26:00 (米) 米財務省3年債、10年債入札
26:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
27:00 (米) 3月 月次財政収支 (2月 -3109億ドル、予想 -6580億ドル)
4/13(火)
タイ ソンクラーン(旧正月 4月15日まで)
未 定 (中) 3月 貿易収支・米ドル建て (2月 378.8億ドル、予想 520.0億ドル)
未 定 (中) 3月 貿易収支・人民元建て (2月 2472.8億元)
08:01 (英) 3月 英小売連合(BRC)小売売上高 前年同月比 (2月 9.5%、予想 12.0%)
08:50 (日) 3月 マネーストックM2 前年同月比 (2月 9.6%、予想 9.7%)
09:00 (豪) 3月 HIA住宅販売 前月比 (2月 22.9%、予想 20.0%)
10:30 (豪) 3月 NAB企業景況感指数 (2月 15)
10:30 (豪) 3月 NAB企業信頼感指数 (2月 16)
15:00 (英) 2月 月次GDP 前月比 (1月 -2.9%、予想 0.5%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産指数 前月比 (1月 -1.5%、予想 0.5%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産指数 前年同月比 (1月 -4.9%、予想 -4.5%)
15:00 (英) 2月 製造業生産指数 前月比 (1月 -2.3%、予想 0.5%)
15:00 (英) 2月 貿易収支・物品 (1月 -98.26億ポンド、予想 -105.00億ポンド)
15:00 (英) 2月 貿易収支・全体 (1月 -16.30億ポンド、予想 -24.00億ポンド)
18:00 (独) 4月 ZEW景況感 (3月 76.6、予想 79.0)
18:00 (欧) 4月 ZEW景況感 (3月 74.0)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前月比 (2月 0.4%、予想 0.5%)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 1.7%、予想 2.5%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前月比 (2月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前年同月比 (2月 1.3%、予想 1.5%)
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
25:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、FRBイベント参加
26:00 (米) 米財務省30年債入札
4/14(水)
08:50 (日) 2月 機械受注 前月比 (1月 -4.5%、予想 2.8%)
08:50 (日) 2月 機械受注 前年同月比 (1月 1.5%、予想 2.4%)
09:30 (豪) 4月 ウエストパック消費者信頼感指数 (3月 111.8、予想 113.0)
11:00 (NZ) NZ中銀(NZ準備銀行、RBNZ) 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
18:00 (欧) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 0.8%、予想 -1.2%)
18:00 (欧) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 0.1%、予想 -1.4%)
20:45 (欧) パネッタECB理事、欧州議会出席
21:30 (米) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 1.3%、予想 0.9%)
21:30 (米) 3月 輸出物価指数 前月比 (2月 1.6%、予想 1.0%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
23:30 (英) ハスケル英中銀委員、講演
25:00 (米) パウエルFRB議長、講演
26:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
27:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
28:00 (米) クラリダFRB副議長、イベント参加
29:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、イベント参加
31:05 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、経済問題討論会参加
4/15(木)
10:30 (豪) 3月 新規雇用者数 (2月 8.87万人、予想 3.50万人)
10:30 (豪) 3月 フルタイム就業者数 (2月 8.91万人)
10:30 (豪) 3月 労働参加率 (2月 66.1%、予想 66.1%)
10:30 (豪) 3月 失業率 (2月 5.8%、予想 5.7%)
10:00 (豪) 4月 メルボルン研究所・消費者インフレ期待 (3月 4.1%、予想 4.2%)
14:00 (日) 4月 地域経済報告(さくらリポート)
15:00 (独) 3月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
15:00 (独) 3月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.7%、予想 1.7%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 19.00%、予想 19.00%)
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 74.4万件、予想 70.0万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 「前週 373.4万人、予想 370.0万人)
21:30 (米) 4月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (3月 51.8、予想 40.0)
21:30 (米) 4月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 (3月 17.4、予想 18.5)
21:30 (米) 3月 小売売上高 前月比 (2月 -3.0%、予想 5.5%)
21:30 (米) 3月 小売売上高・除自動車 前月比 (2月 -2.7%、予想 4.8%)
22:15 (米) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -2.2%、予想 2.6%)
22:15 (米) 3月 設備稼働率 (2月 73.8%、予想 75.6%)
23:00 (米) 2月 企業在庫 前月比 (1月 0.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 4月 NAHB住宅市場指数 (3月 82、予想 84)
24:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
27:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
28:45 (米) クラリダFRB副議長、シャドウオープンマーケット委員会出席
29:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
29:00 (米) 2月 対米証券投資・全体 (1月 1063億ドル)
29:00 (米) 2月 対米証券投資・短期債除く (1月 908億ドル)
4/16(金)
日米首脳会談(ワシントン)
ユーロ圏財務相会合、非公式EU財務相理事会
11:00 (中) 1-3月期 GDP 前期比 (10−12月 2.6%、予想 0.5%)
11:00 (中) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10−12月 6.5%、予想 18.2%)
11:00 (中) 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 33.8%、予想 28.0%)
11:00 (中) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 35.1%、予想 18.0%)
18:00 (欧) 2月 貿易収支・季調済 (1月 242億ユーロ、予想 220億ユーロ)
18:00 (欧) 2月 貿易収支・季調前 (1月 63億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
18:00 (欧) 3月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
18:00 (英) カンリフ英中銀副総裁、ウッズ同副総裁、講演
21:30 (米) 3月 住宅着工件数・年率換算件数 (2月 142.1万件、予想 160.2万件)
21:30 (米) 3月 住宅着工件数 前月比 (2月 -10.3%、予想 12.7%)
21:30 (米) 3月 建設許可件数・年率換算件数 (2月 168.2万件、予想 175.0万件)
21:30 (米) 3月 建設許可件数 前月比 (2月 -10.8%、予想 1.7%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (3月 84.9、予想 89.0)
オーダー/ポジション状況
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21日(木)のドル円相場は下落後に持ち直す展開。
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東京市場のドルは154円台後半で推移、今晩も要人発言で上下に動く可能性アリ(24/11/21)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、時間外の米10年債利回りも上げ一服となったことでドルは一時154円台を付ける場面も見られた。
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2021.04.12
判断難しい、ドル下値トライは「ダマシ」か(週報4月第2週)
先週のドル/円相場は、ドルが結果小反落。年明け以降、最大規模のドル安が一時進行したものの続かず。週末にかけては急激な戻しも観測されていた。
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Edited by:照葉 栗太
2021.04.10
来週の為替相場見通し:『年初来続いたドル高地合いの逆流に警戒』(4/10朝)
ドル円は3/31に記録した約1年ぶり高値110.97をトップに反落に転じると、今週後半にかけて一時109.00まで急落しました。
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