トルコリラ円見通し 暴落商状一服だがエルドアン大統領による利下げ圧力も気になる(21/4/9)

トルコリラ円は4月8日も小動きにとどまり、13.47円から13.38円のレンジ内での推移だった。

トルコリラ円見通し 暴落商状一服だがエルドアン大統領による利下げ圧力も気になる(21/4/9)

トルコリラ円見通し 暴落商状一服だがエルドアン大統領による利下げ圧力も気になる

〇トルコリラ円、4/8も小動き、13.47から13.38のレンジ内での推移、戻り高値の切り下げ続く
〇対ドルも小幅なレンジでほぼ横ばい、4/8は8.18リラから8.11リラの範囲での推移にとどまる
〇トルコリラ、トルコ中銀への不信任感による売り圧力が全般的なドル安を相殺している状況
〇イスタンブール100株価指数、4/6から3日続落、トルコ金融市場全般への不安感によるトルコ株放れか
〇4/15トルコ中銀金融政策決定会合、利下げに含みを持たせるようだとリラ売り再開となりかねない
〇トルコとEU、中国との関係悪化が懸念される報道も
〇13.50以下での推移中は一段安余地ありとし、13.30割れからは13.20前後を目指すとみる
〇13.50超えからはいったん戻しに入るとみて、13.60を目指す上昇を想定する

【概況】

トルコリラ円は4月8日も小動きにとどまり、13.47円から13.38円のレンジ内での推移だった。
3月22日のトルコ中銀総裁解任報道による暴落で3月19日高値15.13円から3月30日安値13.01円まで大幅下落したところから4月2日には13.48円まで戻したが、その後は日々小幅なレンジながらジリ安の推移が続いており、4月7日安値で13.32円を付けた後は新たな安値更新を回避しているものの反騰のきっかけを得ずに戻り高値の切り下がりが続いている。

対ドルでのトルコリラも小幅なレンジでほぼ横ばいの推移が続いており、4月8日は8.18リラから8.11リラの範囲での推移にとどまった。3月22日の暴落により3月19日高値7.18リラから3月30日安値8.45リラまで下落し、4月2日に7.96リラまで小反発したもののその後は膠着状態が続いている。米長期債利回りの上昇一服・頭打ち感からユーロドルが反騰に入り、ドル円が急落してドル安感が強まる状況にあり、南アランドやメキシコペソなどの新興国通貨も堅調な推移だが、トルコリラとしてはトルコ中銀への不信任感による売り圧力が全般的なドル安を相殺している状況だ。

イスタンブール100株価指数の4月8日は前日比0.09%安と小幅下落だったが、4月6日からは3日続落であり、週間ベースでは3月22日のトルコリラ暴落週に前週比9.6%安と暴落した後、3月28日の週に3.48%高の反発が入ったがその後は伸びない状況となっている。リラ安による通貨インフレにより名目的な株価上昇となっても不思議はないのだが、それよりも通貨危機的な状況やトルコ金融市場全般への不安感が投資家のトルコ株放れにつながっている印象だ。

4月8日のトルコ10年債利回りは17.64%で終了。3月22日暴落前の13.63%から3月31日には18.60%へ急伸、その後は様子見の推移であり、リラ安、トルコ株安、トルコ債券安のトリプル安はやや落ち着いているが状況改善の兆しはまだ見えず。

【4月15日のトルコ中銀金融政策決定会合で利下げ?】

3月19日付けで就任以来三度の利上げでリラ暴落を阻止してきたアーバル前中銀総裁が突然解任され、エルドアン大統領の与党議員だったカブジュオール氏が新総裁となった。解任騒動を受けて3月22日にトルコリラは暴落となり、新総裁は早期の利下げを否定する発言を繰り返してリラ暴落に歯止めをかけようと躍起になってきた。しかし新総裁はエルドアン大統領と共に「利下げがインフレを抑制する」との異説を唱えていた経緯があり、市場は今回の総裁交代がエルドアン大統領による利下げ強要の始まりではないかと懸念した。
エルドアン大統領は4月7日、アンカラでの与党会合で「インフレが最近加速したが、我々は物価上昇率を1桁に押し下げる決意だ」「金利も1桁に引き下げることを決意している」「トルコリラの最近の下落に経済的な根拠はない」と述べたと報じられた。

4月15日に次回のトルコ中銀金融政策の発表がある。
4月5日に発表されたトルコの3月消費者物価上昇率は前年同月比で16.19%となり2月の15.61%から上昇、3月の生産者物価上昇率は前年同月比で31.2%となり2月の27.09%から加速した。現在の政策金利(週間レポレート)は19.0%であり消費者物価上昇率を若干上回っているものの、生産者物価上昇を消費者物価上昇が追いかけ、リラ安による通貨インフレ圧力が拡大する状況の中で、金融引き締め姿勢を示さないと政策金利を消費者物価上昇率が上回る実質マイナス金利状態に陥り、昨年11月にかけてトルコリラが史上最安値を連日更新したような通貨危機的な状況に陥る可能性も懸念される。
カブジュオール新総裁は就任後に物価上昇を抑制する姿勢を何度も示してきているが、果たしてエルドアン大統領による利下げ圧力に抗しきれるのかどうかは疑問でもある。少なくとも利上げによるインフレ抑制はせず、現状維持で留まるのだろうが、仮にも利下げに含みを持たせるような姿勢を示すようだとリラ売り再開となりかねないところだ。

【トルコとEU、中国との関係悪化?】

EUフォンデアライエン欧州委員長と欧州理事会ミシェル常任議長(EU大統領)が4月6日にトルコを訪問した際にエルドアン大統領とミシェル大統領が着席した一方でフォンデアライエン氏には同等の椅子が用意されていなかったことが話題となっている。ネット上では「ソファゲート事件」だと取り上げられているが、トルコは3月に女性に対する暴力の防止と撲滅を目的とした「イスタンブール条約」からの脱退を発表し、EUが反発している経緯の中での女性冷遇姿勢とも受け止められる事件だ。今後の両国間の関係悪化も懸念される。

もう一つ気になる点として、中国による新疆ウイグル自治区のウイグル族に対する人権弾圧問題をめぐってトルコの野党党首と首都アンカラの市長がツイッター上でこの問題を非難したことに対し、トルコの中国大使館がツイッターで対抗措置を示唆、トルコ外務省が4月6日に同中国大使を呼び出して不快感を伝えたという報道がある。民族的な共通性のあるウイグル問題ではトルコへ難民が来ており、トルコ政府としては中国との経済関係の悪化を懸念して対応に苦慮する動きも見られているが、あからさまな中国批判はなされてこなかった。今回は与党による避難でありトルコ政府及びエルドアン大統領が中国批判を行ったわけではないが、難しい舵取りとなりそうだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月30日夜安値をサイクルボトムとした上昇期が4月2日夕高値でピークとなり、4月5日午前安値から5日夜高値へ小反発した後はジリ安の推移が続いている。このため現状は4月5日夜高値を起点とした下落期と考える。安値形成期は8日午前から12日午前にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとするが、5日午前安値から4日目に入るので反騰注意期とし、13.50円超えからは強気サイクル入りとして9日夜から12日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では4月6日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落したが、その後も両スパンの悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は先行スパン突破からとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は4月7日から8日夜にかけての安値更新に際して指数のボトムから切り上がる強気逆行の気配がみられる。50ポイントを超えないか一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとするが、55ポイント超えからはいったん戻りを試しにかかるとみて60ポイント台への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.30円を下値支持線、13.50円を上値抵抗線とする。
(2)13.50円以下での推移中は一段安余地ありとし、13.30円割れからは13.20円前後を目指すとみる。13.20円以下は反騰注意とするが、13.40円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.50円超えからはいったん戻しに入るとみて13.60円を目指す上昇を想定する。13.57円以上は反落注意とするが、15.50円を超えた後も13.45円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

4月12日
 16:00 2月 失業率 (1月 12.2%、予想 12.5%)
 16:00 2月 経常収支 (1月 -18.7億ドル、予想 -27.0億ドル)
4月13日
 16:00 2月 鉱工業生産 前年比 (1月 11.4%、予想 10.1%)
 16:00 2月 小売売上高 前年比 (1月 2.0%、予想 3.6%)
 16:00 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.3%)
4月15日
 17:00 3月 財政収支 (2月 231.7億リラ、予想 -530億リラ) 
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 週間レポレート (現行 19.0%、予想 19.0%)


注:ポイント要約は編集部

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