ドル円見通し 米長期債利回りの低下が続き、109円割れの攻防に入る(21/4/9)

ドル円は4月8日夜安値で109.00円まで下落、3月25日以来の価格水準となった。

ドル円見通し 米長期債利回りの低下が続き、109円割れの攻防に入る(21/4/9)

ドル円見通し 米長期債利回りの低下が続き、109円割れの攻防に入る

〇ドル円、4/8夜安値109.00まで下落、米長期債利回りが一段と低下する中で一段安に陥る
〇米10年債利回り、3/30に昨年3月以降の最高水準を更新してからの低下基調、9日目に入る
〇堅調な株価によるリスク選好的なドル安感と、米長期債利回り低下によるドル売りが重なる展開
〇4/8のパウエル氏の発言がハト派的と受け止められ、株高を支え長期債利回り低下に寄与する結果に
〇ドル円、年初からの上昇一服、いったん仕切り直しの調整に入る
〇109.50以下での推移中は一段安警戒とし、109.00割れからは108.50から108.00を目指すとみる
〇109.50超えからは強気転換注意として、109.94試しとみる

【概況】

ドル円は4月8日夜安値で109.00円まで下落、3月25日以来の価格水準となった。3月23日夜安値108.39円を起点として一段高に入り3月31日昼には110.96円まで上昇して111円にあと一歩へ迫っていたが、その後は米長期債利回り上昇がストップして長期債利回り上昇に対する頭打ち感が強まり始めたことで流れが変わり、4月5日夜に109.95円まで下落して110円を割り込み、いったん戻したところから一段安に突入、7日から8日の日中までは109.50円以上を維持していたものの、米長期債利回りが一段と低下する中で一段安に陥った。8日夜安値の後は109円台序盤へ戻しているが、109.50円超えには至らずに安値圏に留まっている。

4月8日の米10年債利回りは前日比0.05%低下の1.62%。3月30日に1.77%台へ上昇して昨年3月以降の最高水準を更新したところから低下を続けており、3月30日からの低下基調は9日目に入った。一方でNYダウは前日比57.31ドル高、ハイテク株中心のナスダック総合指数は140.47ポイント高と堅調だったため、為替市場ではリスク選好的なドル安感と米長期債利回り低下によるドル売りが重なる展開となり、ユーロドルは1.1926ドルまで上昇して3月31日安値1.1704ドルからの上昇基調を継続した。

米労働省が発表した週間新規失業保険申請件数は1万6000件増の74万4000件で2週連続の悪化となり市場予想の68万件を上回った。株式市場にはやや圧迫感をもたらしたが反応は限定的で、パウエル米連銀議長のIMFイベントでの4月8日の発言がハト派的と受け止められたことは、株高を支え、長期債利回り低下に寄与した。パウエル議長はIMFのオンラインイベントにおいて「景気と雇用の回復は米連銀の想定を上回っているために今後は物価上昇圧力が強まる可能性がある」としつつも「物価上昇は一時的」「長年にわたって定着した基調的なインフレ心理が変わる公算は小さい」と述べて米連銀の長期的な低金利政策の継続姿勢を改めて示した。

【年初からの上昇一服、いったん仕切り直しの調整に入る】

ドル円は1月6日底102.57円から上昇してきた。1月末には昨年3月24日高値と6月5日高値や11月11日高値を1直線で結ぶ上値抵抗線を突破して上昇再開感を強めてきた。米長期債利回りは昨年3月と8月の低水準時をダブルボトムとして上昇期に入っていたが、年末まではまだ絶対水準が低かったことで為替市場への影響は軽微だったが、1月に入ってから一段と上昇し始めたことで為替市場も米長期債利回りの本格上昇=ドル高と受け止めて、1月6日からはドル円の上昇と共にユーロドルが下落、メジャー通貨の加重平均であるドル指数が底打ち反騰に入ってきた。2月後半からはさらに米長期債利回りが一段高に入ったことで豪ドルや英ポンドなども下落に転じたためにドル全面高の様相でドル円も110円突破へ駆けあがり、昨年3月以来の高値水準に達した。

しかし米10年債利回りは3月30日に1.77%台まで上昇した後は低下に転じた。特に4月2日の米雇用統計で非農業部門就業者数が100万人近い増加になって2月から倍増し、5日の米ISMサービス業景況指数が過去最高記録を更新する改善となったところでも米長期債利回りの反応が鈍かったことで利回り上昇への頭打ち感が意識される状況となった。
先行きは米連銀の金融緩和継続やバイデン政権による大規模な財政支出を伴う景気対策による大量国債発行を背景にさらに長期債利回りが上昇してゆく傾向にはあるのだろうが、ひとまずは年初からの急上昇は一巡したのではないかとの見方が強まった。このためドル円は3月31日高値をピークに下落に転じ、ユーロドルは3月31日安値を起点として反騰期に入った。4月8日夜もユーロドルは一段高、ドル円が一段安となり、主要2通貨におけるドル安感が強まっている。

【ドル円の調整規模】

ドル円の3月31日高値から4月8日安値までの下げ幅は1.96円。1月6日安値からの上昇途中における調整安としては2月10日への1.36円が最大であり、今回はそれを超えている。昨年3月24日の戻り天井以降の下落途中における調整的な反騰幅では、6月5日への3.86円が最大で、あとは2.10円から2.88円の範囲であった。2019年8月から2020年2月への上昇途中における調整安としては11月8日への2.07円が最大であった。今回の調整規模も2円前後の現状で一服するか、さらに拡大して8月13日への戻り幅2.88円の逆としてもう1円程度の調整安続行となるのか、微妙なところにある。

日足チャートでは26日移動平均まで下げたところにあるが、同線割れから続落の場合は52日移動平均(現在107.42円から上昇中)を試す可能性も考えられる。いずれのレベルで落ち着けるのかは米長期債利回りの低下傾向がどこまで進むか、そろそろ再上昇に入るのかによって決まってくるのではないかと思われる。109円を割り込んでやや戻している現状近辺から持ち直しに入る場合の目安は110円超え、52日移動平均まで下げた後なら26日移動平均(現在109.29円)を上抜き返すところが目安となるのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月2日夕安値からいったん戻してから一段安となったために6日朝時点では4月2日夕安値を直近のサイクルボトムとして底割れによる新たな弱気サイクル入りとして7日午後から9日夕にかけての間への下落を想定した。また4月6日深夜へ一段安してからいったん戻した値幅が4月2日夜への戻り幅を超えたため、直近のサイクルボトムを5日深夜安値とした場合は安値形成期が8日夜から12日深夜にかけての間へ延びる可能性もあるとした。
4月8日夜に一段安しているため109.50円以下での推移中は一段安警戒とし、ボトム形成期の延長入りの可能性もあるところとみるが、109.50円超えからは強気転換注意とし、7日夕高値109.94円超えからは強気サイクル入りとして9日夜から13日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落状態が続いているが、安値更新を回避して横ばいないしジリ高で推移すれば遅行スパンは好転しやすくなってくる。このため遅行スパン悪化中は一段安警戒とするが、遅行スパン好転からはいったん戻りを試しに入るとみる。その際は先行スパンが上値抵抗帯となってくると思われるが、先行スパンを突破するような上昇へ進めば3月31日からの調整安を脱却して上昇再開に入ると考える。

60分足の相対力指数は5日深夜安値から8日夜への一段安に際して指数のボトムが切り上がっているので強気逆行となる可能性がある。50ポイント以下での推移中は一段安警戒とするが、50ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとみて60ポイント前後への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4月8日夜安値109.00円を下値支持線、109.50円を上値抵抗線とする。
(2)109.50円以下での推移中は一段安警戒とし、8日夜安値割れからは108円台前半(108.50円から108.00円)を目指すとみる。108.25円以下は反騰注意とするが、109.50円を下回っての推移なら週明けも安値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)109.50円超えからは強気転換注意として7日夕高値(109.94円)試しとし、高値更新からは上昇期に入るとみて110円中盤を目指す流れへ向かうとみる。また109.50円以上を維持しての推移なら週明けは戻りを試しに向かいやすい見立てとなる。

【当面の主な予定】

4/9(金)
10:30 (豪) 豪中銀金融安定報告
10:30 (中) 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 -0.2%、予想 0.3%)
10:30 (中) 3月 生産者物価指数 前年同月比 (2月 1.7%、予想 3.5%)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -2.5%、予想 1.5%)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 -3.9%、予想 -2.3%)
15:00 (独) 2月 貿易収支 (1月 143億ユーロ、予想 203億ユーロ)
15:00 (独) 2月 経常収支 (1月 169億ユーロ、予想 213億ユーロ)

21:30 (米) 3月 生産者物価指数 前月比 (2月 0.5%、予想 0.5%)
21:30 (米) 3月 生産者物価指数 前年同月比 (2月 2.8%、予想 3.8%)
21:30 (米) 3月 生産者物価コア指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 生産者物価コア指数 前年同月比 (2月 2.5%、予想 2.7%)
23:00 (米) 2月 卸売在庫 前月比 (1月 1.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 2月 卸売売上高 前月比 (1月 4.9%)
23:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、Q&A参加


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