トルコの物価上昇続くが市場の反応は暴落一服で限定的
〇トルコリラ円、5日の高安レンジは13.38から13.62にとどまり小動き
〇新総裁による早期利下げ否定発言が繰り返され市場もひとまず様子見、暴落商状落ち着く
〇イスタンブール100株価指数は5日に前日比0.83%高と上昇し4/1から3連騰
〇全般的にリラ安、トルコ株安、トルコ債券安のトリプル安はひとまず落ち着いている
〇3月トルコ消費者物価指数は前月比1.08%上昇で2月の0.91%上昇から加速
〇5月のトルコ中銀金融政策決定会合へ向けリラ売り攻勢が仕掛けられる懸念を抱えた状況
〇13.65超えからは13.80前後への上昇を想定
〇5日午前安値13.38割れからは13.20前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円の4月5日は小動き。4月2日夕刻高値で13.84円まで戻したところから5日午前安値13.38円まで下げた後は13.50円台を中心とした小動きで、5日の高安レンジは13.38円から13.62円にとどまった。3月22日の中銀総裁解任による暴落商状が3月30日まで続いたものの、新総裁による早期利下げ否定発言が繰り返されたことで市場もひとまず様子見に入り暴落商状が落ち着いた状況となっているが、14円以下での安値圏にとどまっている。
対ドルでのトルコリラは4月2日夕刻高値で7.96リラへ戻したところから5日午前安値8.25リラへ反落後、やや戻して8.10リラを挟んだ小動きにとどまり、5日の高安レンジは8.07リラから8.25リラの範囲だった。
トルコ中銀総裁の突然の解任とその後の副総裁の解任報道から暴落的な下げとなって3月30日には8.45リラまで急落して昨年11月6日の史上最安値8.57リラへ迫ったが、史上最安値更新を回避して暴落商状はひとまず収まっている。
イスタンブール100株価指数は4月5日に前日比0.83%高と上昇して4月1日からは3連騰となった。3月22日のリラ暴落時には前日比9.8%安となったが、その後は落ち着きを取り戻しており、週間ベースで見れば3月21日週の前週比9.6%安から3月28日週は3.48%高、今週は5日終了時点で0.83%高となり前々週からは合計4.31%を戻した状況にある。
トルコの10年債利回りの4月5日は17.66%で終了。3月22日の暴落前に13.63%だったところから3月31日には18.60%へ急伸したが、その後はトルコ国債売り一巡で落ち着いている。
全般的にリラ安、トルコ株安、トルコ債券安のトリプル安はひとまず落ち着いている。
【トルコの物価上昇は3月も続く】
トルコ統計局が4月5日に発表した3月のトルコ消費者物価指数は前月比1.08%上昇となり2月の0.91%上昇から加速して市場予想の1.04%上昇を上回った。前年同月比は16.19%上昇となり2月の15.61%上昇から加速して市場予想の16.11%上昇を上回った。
3月の生産者物価指数は前月比4.13%上昇となり2月の1.22%上昇から加速し、市場予想の1.5%上昇を上回った。前年同月比は31.2%上昇となり2月の27.09%上昇から加速し、市場予想の27.88%上昇を上回った。
3月18日にトルコ中銀がアーバル前総裁による三度目の利上げで政策金利はそれまでの17.0%から19.0%へ引き上げられたため、3月の消費者物価上昇率の前年同月比は政策金利を下回った状況を維持した。しかし3月18日に三度目の利上げをしていなければ消費者物価上昇率との差はわずかとなり、実質的にはほぼゼロ金利状態ということになっていたところだ。この三度目の利上げを容認できないとしてエルドアン大統領はアーバル前総裁を突然解任したわけだが、3月の物価上昇率をみるとアーバル前総裁の判断が適切だったと思われる。
生産者物価指数の上昇率が異常な水準へと加速しているが、2018年9月に通貨危機的なリラ暴落を背景に46.15%へ急上昇した時の上昇角度に近い状況での推移となっている。リラ安が通貨インフレを招き、最初に生産者物価の急上昇を招き、それが消費者物価上昇にも波及するという反応構造を踏まえれば、2018年10月に消費者物価上昇率が25.24%へ上昇した時の状況を再現する可能性も懸念される。
4月5日は欧州市場が休場だったことでトルコ物価上昇率発表直後の市場反応は鈍く、5日夜もNYダウの史上最高値更新により為替市場全般がリスク選好的なドル安反応となったために積極的なトルコリラ売りが手控えられたこともありややリラ高ドル安気味の推移となっているが、現在のペースで4月の物価上昇率が加速すれば5月のトルコ中銀金融政策決定会合へ向けて利上げ催促的なリラ売り攻勢が仕掛けられる懸念を抱えた状況と思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月30日夜安値からの持ち直しにより31日午前時点では30日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして31日の日中から4月2日深夜にかけての間への上昇を想定した。
4月2日夕高値へ上昇したところから5日午前へ反落したため、4月2日夕高値を直近のサイクルトップとする。ボトム形成期は2日の日中から6日夜にかけての間と想定されるので既に5日午前安値でボトムを付けた可能性がある。このため13.65円以下での推移中は6日夜にかけての一段安余地が残るとみるが、13.65円超えからは強気サイクル入りとして7日午後から9日夕にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では4月2日夕高値からの反落で遅行スパンが悪化したもののその後の下げ渋りで再び好転しているが、先行スパンと実線は交錯した状況のため方向感に乏しい。このため13.65円超えからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、5日午前安値を割り込むところからは2日夕高値からの下落継続として遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は50ポイントを挟んだ揉み合いとなり方向感に乏しい。60ポイント超えからは上昇再開の可能性を優先するが、40ポイント割れからは下落継続とみて30ポイント割れを目指す流れと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4月5日午前安値13.38円を下値支持線、13.65円を上値抵抗線とする。
(2)5日午前安値を割り込まないうちは上昇余地ありとし、13.65円超えからは13.80円前後への上昇を想定する。13.75円以上は反落警戒とするが、13.50円以上での推移なら7日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.38円割れからは13.20円前後への下落を想定する。13.20円以下は反騰注意とするが、13.38円を割り込んだ後も13.50円以下での推移なら7日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
4月8日
20:30 週次 外貨準備高 グロス 4/2時点 (3/26時点 508.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 4/2時点 (3/26時点 127.9億ドル)
4月12日
16:00 2月 失業率 (1月 12.2%、予想 12.5%)
16:00 2月 経常収支 (1月 -18.7億ドル、予想 -27.0億ドル)
4月13日
16:00 2月 鉱工業生産 前年比 (1月 11.4%、予想 10.1%)
16:00 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 11.4%)
16:00 2月 小売売上高 前年比 (1月 2.0%、予想 3.6%)
16:00 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.3%)
4月15日
17:00 3月 財政収支 (2月 231.7億リラ、予想 -530億リラ)
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 週間レポレート (現行 19.0%、予想 19.0%
注:ポイント要約は編集部
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