トルコリラ円見通し 新総裁の利下げ否定発言で暴落一服からの持ち直し続く
〇トルコリラ円、3/30夜安値13.01からの上昇を継続、4/2早朝13.64まで戻り高値切り上げる
〇日足は2日連続陽線でひとまず暴落商状一服、反騰狙いの押し目買いも見られる展開
〇対ドルでも3/31からの反騰を継続、4/2早朝には8.08リラまで戻す
〇トルコの製造業PMIは改善、外貨準備高は減少
〇中銀新総裁、利下げを否定する発言、市場は4月中銀金融政策決定会合まで様子見か
〇13.35以上での推移中は上昇余地ありとし、13.65超えからは13.80前後への上昇を想定する
〇13.45割れを弱気転換注意、13.35割れからはいったん下げに入るとみて13.20前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円は3月30日夜安値13.01円から揺れ返しの上昇を継続、3月31日高値を超えて2日早朝には13.64円まで戻り高値を切り上げた。
日足は2日連続陽線であり、3月26日から30日までの3日連続陰線による下落分はまだ解消していないものの、ひとまず暴落商状一服となったことで、反騰狙いの押し目買いも見られる展開となっている。4月2日午前序盤は13.57円近辺の推移。
トルコ中銀総裁が突然解任されたことでトルコリラ3月22日に暴落的な下げとなり、3月19日高値15.13円から3月22日安値13.33円まで急落したが、さらに中銀副総裁の解任報道により3月26日から30日まで3日連続の日足陰線で30日夜には13.01円まで一段安となっていた。
かつて高金利政策に批判的な立場だったカブジュオール新総裁が就任したことで今後の追加利上げの可能性はなくなり利下げの可能性が出てきたとの認識とトルコ金融政策に対する市場の不信任が急落の背景だが、新総裁が早期の利下げを否定して物価上昇に対する引き締め政策の維持を連日強調していることで市場もひとまず様子を見ようということでやや過剰反応となっていたところから買い戻されている印象だ。
対ドルでのトルコリラも4月1日は3月31日からの反騰を継続、日足は2日連続陽線となり、4月2日早朝には8.08リラまで戻している。
トルコ中銀総裁解任報道を受けて3月22日に暴落的な下落で3月8日安値7.78リラを割り込み、8.17リラまで安値を切り下げ、さらに3月30日には8.45リラへ一段安となり昨年11月6日の史上最安値8.57リラへ迫ったが、最安値更新手前でひとまず落ち着いた状況だ。
4月1日は米長期債利回りが低下したことで為替市場全般がドル安へ向いたこともトルコリラを落ち着かせた。
イスタンブール100株価指数の4月1日は前日比2.50%高と上昇、リラ暴落一服感と世界的な株高への同調で落ち着きを取り戻している印象だ。週足の終値ベースでは先週が前週比9.6%安だったのに対して今週は4月1日時点で3.21%高と凡そ3分の1を戻したところだが、3月17日高値から3月22日の暴落時安値への下げ幅に対しては凡そ半値を戻している。
【トルコの製造業PMIは確り、外貨準備高は減少】
4月1日に発表された3月のイスタンブール製造業PMIは52.6となり2月の51.7から改善した。昨年2月に52.4だったところからコロナショック第一波の影響で昨年4月には33.4へ急低下したが、その後は持ち直しに入り7月には56.9まで戻したのだが、その後は第二波の影響もあって伸び悩みの状況が続いている。現状も第三波の拡大中であり、経済活動規制が続くとセンチメントも悪化しやすいところだ。
トルコ中銀が4月1日に発表した3月26日時点の外貨準備高はグロスで508.9億ドルとなり3月19日時点の538.9億ドルから減少した。ネットでは127.9億ドルで前週の136.8億ドルから減少した。
中銀統計では、3月26日時点のトルコ国内のハードカレンシー(交換可能通貨)及び貴金属保有高は前週の2325億ドルから2236億7000万ドルに減少した。1月には過去最高の2361億1000万ドルだったが、中銀総裁解任報道から資金流出が顕著となっている状況だ。
トルコ中銀のカブジュオール新総裁は4月1日に投資家との電話会見を行い、「高インフレを踏まえれば引き締め的な金融政策は維持される」と述べた。同総裁がかつて「高金利がインフレ高進を招く」と新聞紙上のコラムに書いたことについて質問されたことに対しては「総裁として制度上の職務に従って行動する」と述べるにとどまったが、「総裁は基本的に4月の金融政策委員会後に彼を判断してほしいと発言した」とも報じられており、4月会合での利下げはないとの強いメッセージを市場に発しているのではないかとの受け止めが広がっている。
中銀総裁及び副総裁解任騒動は一服ではあるが、トルコ金融政策への市場の不信任が解消するとは思えず、しばらくは短期的な反騰狙いの買いを呼び込みつつ戻りを売られる展開が続き、4月5日の消費者物価動向を踏まえて利上げ催促的なリラ安が再燃するか、4月15日の中銀金融政策決定会合まで様子見の展開を続けるのか、市場も判断してゆくことになるのだろう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月30日夜安値からの持ち直しにより31日午前時点では30日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして31日の日中から4月2日深夜にかけての間への上昇を想定した。31日深夜高値を1日夜への上昇で上抜いているためまだ上昇余地ありとみるが、欧州市場が連休に入り、2日夜には米雇用統計の発表もあるので徐々に上値も重くなるところと思われる。13.35円割れからはいったん下げに入るとみて2日の日中から6日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では3月31日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンから上抜けたがその後も両スパン揃っての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、高値切り上げが続かないと遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先とし、先行スパンから再び転落する場合は下げ足が早まるとみる。
60分足の相対力指数は1日夜に70ポイント台へ到達してからはやや低下しているが、60ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとみる。60ポイントを割り込んでも切り返すうちは高値更新余地ありとし、50ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.35円を下値支持線、13.65円を上値抵抗線とする。
(2)13.35円以上での推移中は上昇余地ありとし、13.65円超えからは13.80円前後への上昇を想定する。13.75円以上は反落警戒とするが、13.50円以上での推移なら週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)13.45円割れを弱気転換注意とし、13.35円割れからはいったん下げに入るとみて13.20円前後への下落を想定する。13.20円以下は反騰注意とするが、下げ足が早まる場合は3月30日夜安値13.01円試しへ向かうとみる。また13.35円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
4月5日
16:00 3月 消費者物価上昇率 前年比 (2月 15.61%)
16:00 3月 消費者物価上昇率 前月比 (2月 0.91%)
16:00 3月 生産者物価上昇率 前年比 (2月 27.09%)
16:00 3月 生産者物価上昇率 前月比 (2月 1.22%)
4月8日
20:30 週次 外貨準備高 グロス 4/2時点 (3/26時点 508.9億ドル)
4月12日
16:00 2月 失業率 (1月 12.2%、予想 12.5%)
16:00 2月 経常収支 (1月 -18.7億ドル)
4月13日
16:00 2月 鉱工業生産 前年比 (1月 11.4%)
16:00 2月 小売売上高 前年比 (1月 2.0%)
4月15日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合
注:ポイント要約は編集部
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