中銀総裁解任騒動からの暴落一服で下げ渋る
〇トルコリラ円、下げ一服でやや持ち直しに入り31日深夜には13.44まで戻す
〇大局的なリラ安懸念が解消できなければ戻り一巡から次の下落へと進みやすい状況
〇対ドルでも暴落一服でやや持ち直し、8.24を挟んで小康状態
〇31日発表の2月トルコ貿易収支は33億ドルの赤字、市場予想やや下回る
〇5日トルコの3月物価上昇率発表要注目、事前予想は消費者、生産者共に上昇見込み
〇31日深夜高値13.44超えからは13.50を目指すとみる
〇13.20割れからは下げ再開を警戒して30日夜安値13.01試し
【概況】
トルコリラ円は中銀総裁の突然の解任による衝撃で3月22日に暴落的な下げとなって暴落前の3月19日高値15.13円から22日安値13.33円まで急落した。3月25日までは暴落一服で下げ渋っていたものの中銀副総裁の解任報道からさらに安値を切り下げて3月26日から30日まで3日連続の日足陰線で一段安となり30日夜には13.01円まで安値を切り下げた。
3月30日夜安値からは下げ一服でやや持ち直しに入り、31日深夜には13.44円まで戻し、その後も13.40円を挟んだ水準で確りしている。ドル円の上昇継続感も踏まえてトルコリラ円への押し目買いの動きも見られるとの報道もあるが、いったん崩れ始めると当局が取引規制により値動きを抑えようとしてもいずれ破綻して下落再開へ向かい史上最安値を更新するというのがこれまでの歴史でもあり、短期的なリバウンド期待による買いで戻しても大局的なリラ安懸念が解消できなければ戻り一巡から次の下落へと進みやすい状況にあると思われる。
対ドルでのトルコリラは3月30日に8.45リラへ続落して22日暴落以降の安値を更新したが、その後は暴落一服でやや持ち直しに入り、31日深夜に8.20リラへ戻してからも8.24リラを挟んで小康状態となっている。
対ドルでのトルコリラは11月6日の史上最安値8.57リラに迫った状況だが、底割れはひとまず回避しているところだ。中銀総裁及び副総裁解任騒動により市場の信用は失墜したが、新総裁が早急な利下げ予想に対する否定的な発言を繰り返していることで市場の混乱もやや落ち着いたものの、トルコ中銀及び解任騒動の責任者であるエルドアン大統領への市場の不信任は簡単には解消できないものと思われる。
イスタンブール100株価指数の3月31日は前日比0.29%安と下落した。3月22日のリラ暴落時に前日比9.79%安の暴落連鎖となり、3月23日に安値を更新したが、その後は新たな安値更新を回避して下げ渋りを続けている。トルコ中銀の新総裁による今後の金融政策姿勢、エルドアン大統領の経済政策姿勢をもう一度見定めたいというところで小康状態となっている印象だ。
【トルコの輸出入は改善、経済信頼感指数は昨年3月コロナショック前の水準へ戻る】
3月31日に発表された2月のトルコ貿易収支は33億ドルの赤字で1月の30.3億ドルの赤字から若干拡大したが、市場予想の34億ドルの赤字よりはやや少なかった。輸出の伸び率は前年同月比で10.6%増となり12月に12.1%増となってからはプラス圏を維持している。昨年4月に42.6%減まで落ち込んだところからは回復している。輸入の前年同月比は10.0%増で1月の0.4%減から持ち直した。昨年4月に25.5%減まで落ち込んだところからは持ち直しの基調が続いてきたが、10月以降はやや減速気味の推移となっている。
3月のトルコ経済信頼感指数は98.9となり2月の95.8から改善して1月の96.2を上回り、昨年4月にコロナショックで52.4まで低下したところからの持ち直し基調を続けており昨年1月の98.3を超えてきた。
製造業の回復、貿易の回復基調は見られるものの、現下はコロナ感染拡大の第三波にはいっており、感染増加ペースが第二波のピークを超えてきていることを踏まえると、今後は回復基調にブレーキもかかりやすい。その上でトルコ中銀総裁解任騒動によるリラ暴落もあり、不確実性が高まる状況にあると思われる。
【4月5日の物価上昇率が焦点】
4月5日にトルコの3月物価上昇率の発表がある。消費者物価上昇率は前年比で2月に15.61%へ上昇、生産者物価上昇率も2月に27.09%へと上昇した。3月の消費者物価上昇率に対する市場の事前予想は17.25%へさらに伸びる見込みで、生産者物価上昇率も29.14%へ伸びると見込まれている。
リラ暴落の影響はまだ反映しきれない状況での数字だが、リラ暴落による通貨インフレ感が今後はさらに強まる可能性もあり、4月に向けて物価上昇が続く可能性が高まっている。特に生産者物価の上昇が著しいために消費者物価への転嫁により消費者物価が生産者物価を追いかける流れとなることも懸念されている。
3月30日にゴールドマン・サックスがトルコのインフレ率は4月に18%へ上昇してピークを付けるとし、年末までには15%へ低下するとの見通しを発表した。従来は年末時点のインフレ率予想を12.5%としていたが上方修正した。またトルコ中銀の利下げが可能になるのは2021年10-12月以降と予想した。
今後の物価上昇率については世界的な景気回復がどの程度進み国際商品市況がどこまで強含むのかにもよる。感染拡大が再び深刻化すれば需要低迷で世界的な物価上昇が落ち着く可能性もあるものの、バイデン政権による巨額インフラ投資などにより物価上昇が継続する可能性もある。また米長期債利回り上昇とドル高基調が続くようだとトルコリラも信任低下によるリラ売りも加わってドル高リラ安となり、通貨インフレ的な物価上昇が継続しかねない。
4月15日には次回のトルコ中銀金融政策決定会合も予定されている。カブジュオール新総裁は30日の中銀年次会合において「現在のようにインフレ率が高水準にあるときは引き締め的な金融政策が必要」「インフレ率の持続的な低下が明確になるまでは政策金利をインフレ率を上回る水準に維持する」と表明しており、リラ暴落を踏まえて利下げを行うことはないだろうと思われるが、4月5日の物価上昇率次第では市場が利上げ催促的なリラ売りへ進む可能性もあるところと注意したい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月30日夜安値からの持ち直しにより31日午前時点では30日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして31日の日中から4月2日深夜にかけての間への上昇を想定した。31日深夜へ戻り高値を切り上げた後も確りしているのでまだ上昇余地ありとみるが、13.20円割れからは下げ再開を警戒し、30日夜安値13.01円割れからは弱気サイクル入りとして4月2日から6日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では3月31日夜の上昇で先行スパンから上抜けてきているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落する場合は下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は31日夜に60ポイント台へ到達してからも50ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとみるが、50ポイント割れを切り返せなくなる場合は下げ再開注意とし、40ポイント割れからは下げ再開と一段安入りを想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月30日夜安値13.01円を下値支持線、13.50円を上値抵抗線とする。
(2)13.20円以上での推移中は上昇余地ありとし、31日深夜高値13.44円超えからは13.50円を目指すとみる。13.50円以上は反落注意とするが、13.30円以上での推移なら2日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)13.20円割れからは下げ再開を警戒して30日夜安値試しとし、底割れからは13.00円前後への下落を想定する。また13.20円以下での推移が続く場合は2日も安値試しへ向かいやすいとし、13.30円割れから下げ足が早まる場合は12.80円前後へ下値目途を引き下げる。
【当面の主な予定】
4月1日
16:00 3月 イスタンブール製造業PMI(2月 51.7、予想 52.3)
20:30 週次 外貨準備高・グロス 3/26時点 (3/19時点 538.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高・ネット 3/26時点 (3/19時点 136.8億ドル)
4月5日
16:00 3月 消費者物価上昇率 前年比 (2月 15.61%)
16:00 3月 消費者物価上昇率 前月比 (2月 0.91%)
16:00 3月 生産者物価上昇率 前年比 (2月 27.09%)
16:00 3月 生産者物価上昇率 前月比 (2月 1.22%)
4月12日
16:00 2月 失業率 (1月 12.2%、予想 12.5%)
16:00 2月 経常収支 (1月 -18.7億ドル)
4月13日
16:00 2月 鉱工業生産 前年比 (1月 11.4%)
16:00 2月 小売売上高 前年比 (1月 2.0%)
4月15日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合
注:ポイント要約は編集部
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