トルコリラ円見通し 2月8日以降は上昇一服だが14.70円割れを買い戻されて確り
〇トルコリラ円、2/9夕14.70を割り込むも2/10夜14.80台まで戻し、2/12午前序盤14.80台後半をつける
〇対ドル、2/11夜に7.00リラへ上昇、11/6以降の高値を更新
〇トルコの失業率、全体としては改善傾向だが若年層の失業率高い、新型コロナウイルスによる影響か
〇トルコ外相と米国務長官会談の見通し、バイデン政権のトルコへの姿勢が見えてくるか
〇14.80以上での推移中は、14.95超えから15.00を目指すとみる
〇14.80割れからは下げ再開注意、14.75割れからはいったん調整安で14.65から14.70を目指すとみる
【概況】
トルコリラ円は2月9日夕刻に14.70円を割り込んだところから2月10日夜に14.80円台まで戻し、その後も14.80円を割り込むところは買い戻されて確りしており、2月12日午前序盤は14.80円台後半につけている。
11月6日まで史上最安値を更新した後、トルコ中銀総裁の更迭と金融政策正常化への期待から反騰に入り、アーバル新総裁による二度の大幅利上げと追加利上げの可能性を示唆する金融引き締め姿勢を背景に2月8日には2020年8月以来となる15円到達まで大上昇を続けてきた。上昇も3か月を経過したことと15円到達による高値警戒感から調整的な動きに入ったが14.70円割れを買い戻されて押し目形成となり、高値更新を伺う展開が続いている印象だ。
為替市場全般としては2月5日からドル安へ回帰しており、新興国通貨も1月後半からの対ドルでの下落が一巡して上昇再開感が強まっている。対ドルでのトルコリラも2月5日に7.02リラ台まで上昇した後も高値圏を維持して確りしていたが、2月11日夜には7.00リラへ上昇して11月6日以降の高値を更新している。
ドル安リラ高基調が継続する一方でドル円が2月5日から下落したためにトルコリラ円は円高による圧迫感で上値がやや重くなっているとろだだが、ドル安リラ高基調が続けば円高によって押される場面は押し目買いされやすく、2月9日安値を割り込むような急落が発生しない限りは徐々に2月8日高値に迫り高値更新を伺う展開へ進みやすいと思われる。
【トルコ、若年層の高失業率】
トルコ統計局が発表した11月(2020年10−12月期)のトルコ失業率は12.9%となり10月(9-11月期)の12.7%から悪化した。2019年8月に14%まで上昇した後はジグザグを繰り返しながらもやや低下傾向を続けてきている。しかし、若年層の失業率は依然として高い。11月時点の15歳から24歳までの失業率は25.4%で10月の24.9%から悪化しており、2019年8月に27.4%まで悪化して以降は25%を挟んでの推移で高止まり状況といえる。2019年8月にかけてはトルコリラの暴落時と重なる形で若年層及び全体の失業率が悪化し、その後は全体として改善傾向にあるものの新型コロナウイルスによる影響が若年層の高失業状態の改善を妨げている印象だ。
10−12月期の労働参加率は49.3%で9-11月期の50.0%から低下、就業者数は2710万人で前年同期を100万人超下回った。
2月12日夕刻には12月の鉱工業生産、小売売上高の発表がある。市場予想では11月からは伸びが鈍化する見込みだが、堅調さを維持するか予想を上回るならリラ買いに勢いを持たせる可能性もあると思われる。
【地政学的リスク問題】
今週はシリアにおけるトルコ軍とロシア駐留部隊の双方による砲撃が繰り返されているとの報道もある。シリア内戦は混とんとした状況が続いており、トルコ軍やクルド系、シリア軍と駐留ロシア軍による実効支配エリアに分かれている。
トルコとロシアはシリアやリビア等で敵対する一方、ナゴルノ紛争後は両国が停戦監視団を結成して協力し、天然ガスではパイプラインのトルコストリームで協力、トルコがロシアのミサイルシステムを導入する等、対立と協力が複雑に入り混じる状況にある。
NATOに加盟するトルコがロシア製ミサイルシステムを導入したことによるNATO諸国及び米国によるトルコへの批判及び制裁の目が向けられてきたが、米国務省は2月10日に「ブリンケン国務長官が数日中にトルコのチャブシオール外相と会談する見通し」であると表明した。またトルコによるロシア製地対空ミサイル「S400」導入に米国が反対する政策に変更はないとも述べている。
米国は昨年12月にロシア製ミサイル導入に関して制裁を発動しているが、トランプ前大統領はトルコのエルドアン大統領に対する寛容な姿勢を取り続けて制裁についても緩いものとなってきた。しかしバイデン大統領はかつてエルドアン大統領を独裁者呼ばわりしたこともあり、バイデン政権による外交が本格化し始めるに際してはトルコへの姿勢が厳しいものになるのではないかとの懸念がある。今回の米国・トルコの外交的な接触開始により米国の姿勢も見えてくると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月8日夕高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして8日午前から10日午前にかけての間への下落を想定していたが、2月9日夕安値の後は下げ渋りとなったために10日午前時点では9日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期は11日午後から15日夕にかけての間とし、9日夕安値を割り込む場合は底割れによる新たな弱気サイクル入りとした。
2月10日夜高値の後は横ばいからややジリ高推移のためまだ上昇余地ありとみるが、14.80円割れからは弱気転換注意とし、14.75円割れからはいったん弱気サイクルに入るとみて2月12日午後から15日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では2月11日夜の上昇により遅行スパンが好転、先行スパンを上回る状況となっているため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下げ再開と見て遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は60ポイント台後半へ上昇しているため、50ポイント以上での推移中は70ポイント超えを目指す上昇を想定し、50ポイント割れからはいったん調整安に入るとみて30ポイント台序盤を目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、14.80円を下値支持線、14.95円を上値抵抗線とする。
(2)14.80円以上での推移中は14.95円超えから15.00円を目指すとみる。15円以上は反落注意とするが、14.80円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かう可能性があるとみる。また14.95円以上での推移なら週明けへ15.10円超えを目指す可能性もあるとみる。
(3)14.80円割れからは下げ再開注意とし14.75円割れからはいったん調整安に入るとみて14.60円台後半(14.65円から14.70円)を目指すとみる。14.70円以下は反騰注意とみるが、14.75円以下での推移が続くばあいは週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
2月12日
16:00 12月経常収支 (11月 -406憶ドル)
16:00 12月鉱工業生産 前年同月比 (11月 11.0%)
16:00 12月小売売上高 前年同月比 (11月 11.9%)
16:00 12月小売売上高 前月比 (11月 2.2%)
2月15日
17:00 1月財政収支 (12月 -407億リラ)
2月17日
18:30 1月自動車生産台数 前年比 (12月 10.2%)
2月18日
16:00 2月消費者信頼感指数 (1月 83.3)
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 17.0%、予想 17.0%)
20:30 週次外貨準備高 2/12時点 (2/5時点 543.7億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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