トルコリラ円見通し 米長期債利回り上昇によるドル高がトルコリラも圧迫
〇トルコリラ円、11/11夕に13.85まで下げる、その後14.00まで戻したが再び13.80台へ下落
〇トルコリラ円の日足、1/8・1/11と2日連続の陰線、今のところ高値更新後の調整という印象
〇米長期債利回り上昇により1/7夜からドル全面高が新興国通貨市場にも波及、トルコリラも反落
〇トルコ10月失業率は前月から変わらず、11月経常収支は赤字拡大
〇14円以下での推移中は一段安余地ありと、13.80割れからは13.70前後への下落を想定
〇14.05超えからはいったん戻しに入るとみて14.10前後への上昇を想定
【概況】
トルコリラ円は1月7日夕刻に14.25円まで上昇して11月6日以降の高値を更新したが、その後は高値更新へ進めずに上値が重くなり、1月8日夕刻に14円を割り込んだところは買い支えられていたが、11日午後には米長期債利回り上昇によるドル全面高の中でトルコリラも対ドルで下落したことから14円を再び割り込み、11日夕刻には13.85円まで下げた。11日夜にいったん14.00円まで戻したものの再び13.80円台へ下落、12日午前は13.90円を挟んで揉み合いとなっている。
トルコリラ円の日足は1月8日、11日と2日連続の陰線となった。12月30日から31日にかけても高値更新後の2日連続陰線となったところから切り返して一段高しているので、現状も今のところは高値更新後の調整という印象だが、さらに3日連続陰線で下げるようだと12月11日以降の上昇一服によりいったん調整安へ進む可能性も出てくるところと注意したい。
【米長期債利回り上昇でドル高リラ安】
NYダウが史上最高値を更新し、米上下院のねじれ解消によりバイデン新政権による景気刺激策・財政支出拡大見通しを背景に米国市場では株買い債券売りが進んでおり、米長期債利回りの上昇が顕著になっている。米10年債利回りは1月4日時点で0.90%台だった米10年債利回りが1月5日に0.96%。6日に1.05%、7日に1.08%、8日には1.12%へと急上昇し始めたことで為替市場の受け止め方も変わったが、11日には1.15%へさらに上昇している。
対ドルでのトルコリラは、トルコ中銀総裁更迭と財務相後退から金融政策姿勢の変更を意識して11月6日の史上最安値8.57リラから反騰に転じた。11月19日に新総裁による大幅利上げをきっかけに7.48リラまで上昇、いったん材料消化で反落したものの12月11日から上昇再開に入り12月28日には11月19日高値を超えて一段高に入り、1月7日には7.23リラまで高値を伸ばしてきた。
米長期債利回り上昇の当初も対ドルでの上昇基調は変わらなかったが、7日夜からはドル全面高が新興国通貨市場にも波及してメキシコペソ等が下落、トルコリラも1月8日に7.40リラへ反落、11日夜には7.51リラまで続落して12月28日以来の7.50リラ水準となった。
トルコの10年債利回りは1月11日時点で12.70%台であり、米10年債利回りが急上昇したといっても比較すればはるかに高水準にあるが、ドル高感がリラの反騰基調にブレーキを掛けたという状況だろう。ただ、日足では1月7日から11日まで3日連続の陰線で下落しており、12月11日からのドル安リラ高が一服していったん調整的なドル高リラ安へ進む可能性も見られるところだ。
【トルコの10月失業率は12.7%で前月から変わらず】
トルコの10月失業率は12.7%で9月と変わらず、市場予想の13.0%を若干下回った。トルコの失業率は2018年4月の9.6%から2020年1月の14.7%へ悪化した後は漸減傾向にあり、2020年9月に12.7%まで低下傾向で推移してきた。10月は横ばいだったが11月は感染急増による夜間外出禁止等による規制もあり悪化も懸念されるところだ。
トルコの11月経常収支は40.6億ドルの赤字で10月の3.4億ドルの赤字から拡大、市場予想の34億ドルの赤字を上回った。トルコは慢性的な経常赤字国だが、2020年は3月の54.57億ドルが最大で、2019年11月から経常赤字が続いている。
失業率及び経常収支発表を前後しての市場の反応は限定的だったが、11日午後に14円を割り込んだところからの売り注文の連鎖で13.86円まで急落した後の戻りが16時過ぎの14.02円でピークとなり、その後はドル高リラ安に圧されて再び失速している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日夜への上昇で4日午後高値を上抜いたために7日午前時点では高値更新による新たな強気サイクル入りとして7日午後から11日午後にかけての間への上昇を想定した。7日夕刻へ一段高したところから小反落していたため、8日午前時点では7日深夜安値14.00円を割り込む場合は弱気サイクル入りとしたが、8日夕刻に一時的に14円を割り込んだところは買い戻されていたものの11日午後に14円を割り込んで一段安に入ったため、現状は7日夕高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしている状況と思われる。安値形成期は8日夜から12日夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、14.05円を超えないうちは一段安余地ありとし、14.05円超えからは強気サイクル入りとして12日夕から14日夕にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では1月11日の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落しているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化から下げ再開とするが、先行スパン突破からは強気転換として遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6日深夜から7日夕刻への一段高では指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せて下落に転じた。50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとするが、50ポイント超えからはいったん戻しに入るとみて60ポイント台への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.80円を下値支持線、14.05円を上値抵抗線とする。
(2)14円以下での推移中は一段安余地ありとし、13.80円割れからは13.70円前後への下落を想定する。13.70円以下は反騰注意とするが、13.95円以下での推移が続く場合は13日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)14.05円超えからはいったん戻しに入るとみて14.10円前後への上昇を想定する。14.10円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、14.05円を超えてからも14円以上での推移なら13日は高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
1月13日
16:00 11月鉱工業生産 前年同月比 (10月 10.2%、予想 8.4%)
16:00 11月小売売上高 前年同月比 (10月 12.0%、予想 9.5%)
16:00 11月鉱工業生産 前月比 (10月 4.2%、予想 1.8%)
19:00 12月自動車生産 前年同月比 (11月 5.4%)
1月14日
20:30 週次外貨準備高 1/8時点 (12/31時点 500.0億ドル)
1月15日
17:00 12月財政収支 (11月 134.3億リラ)
1月20日
23:30 12月中央政府債務 (11月 187.2億リラ)
1月21日
16:00 1月消費者信頼感指数 (12月 80.1)
20:00 トルコ中銀政策金利 (現行 17.0%、予想 17.0%)
20:30 週次外貨準備高 1/15時点
注:ポイント要約は編集部
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