トルコ中銀の連続利上げ後も高値圏を維持
〇トルコリラ円、25日朝に反落したものの早々に買い戻され13.60以上を維持
〇12月製造業景況感は106.8で改善、設備稼働率は75.6%で11月を下回った
〇アーバル中銀総裁「金融引き締め姿勢を断固として維持する」と述べる
〇トルコ中銀の引き締めスタンスでリラの暴落不安落ち着き、戻りを試しやすい環境に
〇300万回分のシノバック製ワクチンが28日に供給され、医療従事者などから接種開始
〇24日夜高値13.70超えからは13.80前後を目指す
〇13.50割れからはいったん調整安に入るとみて13.40前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円は12月24日のトルコ中銀による連続利上げ決定を受けて24日夜に13.70円まで上昇、12月19日以降の13.50円を挟んだ小持ち合いから上放れし、11月19日の前回利上げ直後の反落で付けた11月24日安値以降の高値を更新した。クリスマス休場で市場が閑散な中で25日朝には13.52円まで反落したものの早々に買い戻されて13.60円以上を維持して週を終えた。
11月13日と11月19日に同値で付けた13.82円には届いていないものの、11月24日から12月17日までのほぼ横ばいで13.40円前後を上値抵抗とした1か月間の持ち合いから上抜け、12月19日以降の一段上がったところでの小持ち合いからも上抜けてきているところだ。
12月25日に発表されたトルコ経済指標はまちまち。
12月製造業景況感は106.8となり11月の103.9から改善、市場予想の101.5を上回った。
12月の設備稼働率は75.6%で11月の75.8%及び市場予想の76.0%を下回った。
11月の観光客数は前年同月比61.93%減となり10月の59.4%減及び市場予想の52.0%減を下回った。
【トルコ中銀新総裁による連続利上げとインフレ抑制への強い姿勢が市場の信頼を回復】
トルコ中銀は12月24日、政策金利を15.0%から17.0%へ引き上げた。市場予想の16.5%への引き上げを上回る利上げ幅となったが、金融政策会合後の中銀声明では「できる限り早期にインフレ見通しリスクを排除し、インフレ期待を抑え、ディスインフレプロセスを回復させるために強力な金融引き締めを導入した」とした。11月7日に前中銀総裁が突如更迭された後に就任したアーバル新総裁は就任直後の11月19日の会合で10.25%から15.0%へ大幅な引き上げを行い、2会合連続で今回も市場予想を超える利上げを決断したことでインフレファイターとしての姿勢を強調し、市場への信頼感を取り戻した印象だ。同総裁は「インフレが目標に従う形での永続的な下落と物価の安定性が指標によって強く示されるまで(金融引き締め姿勢を)断固として維持する」と述べた。
トルコ通信社報道では、アーバル中銀総裁は25日までのトルコ議会の委員会において金融政策手段として(前総裁時代に行われてきた)後期流動性窓口貸出金利ないし金利コリドー(上下幅)を利用しない方針を示したという。また同総裁は「為替レートを決定するために外国為替の売買はしない」「透明性のある方法で外貨準備の増加を目指す」とツイートし、中銀も「持続的な物価安定は投資や生産を増やし、経済成長につながる」等の総裁のコメントをツイートした。当面はトルコ中銀の引き締めスタンスによりトルコリラの暴落不安が落ち着き戻りを試しやすい環境になってきている印象だ。
【感染急増も落ち着く、ワクチン接種も開始予定】
トルコの新型コロナウイルスの感染状況は、従来の無症状陽性者数を感染者公表値から除外していた方式から含めることとしたために11月後半から急増に入り、12月8日には新規感染者数が3万3198人となり過去最大となったが、その後は減少傾向に入り2万人を切る水準まで低下してきている。平日も含めた夜間外出禁止令による部分的ロックダウン措置が功を奏していると思われる。
トルコでは感染対策として自国産のワクチン開発を続けるとともに中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)によるワクチンの後期臨床試験(治験)に9月14日から参加している。参加者は7000人以上とされ、このうち1322人による治験の中間データではワクチンの有効率は91.25%という。シノバックはブラジルでも後期治験を行っておりそこではワクチンの有効率が50%以上とされたものの完全な結果の発表はシノバック社の意向で保留するとされたために治験の透明性への懸念もある。
トルコのコジャ保健相は「トルコ国民への同ワクチンの投与が有効かつ安全であることを確信している」と述べて今回のデータがワクチンの国内承認に使用されるとし、300万回分のシノバック製ワクチンが12月28日に供給され、医療従事者などから接種が開始されると述べた。トルコは5000万回分をシノバック社から購入して12月11日までに納品予定だったが配送が遅れたという。
感染急増と変異種による国際移動規制の強化の流れはトルコにとっては観光収入の減少継続を続けやすく不利な状況だがワクチン普及で落ち着けば来年夏の観光最盛期への復興も期待が高まるかもしれない。
【5月以降の下降チャンネルから脱却】
トルコリラ円の日足では、5月7日安値と11月6日安値を結んだ下値支持線に対して、6月2日高値と7月後半に一段安入りする直前の高値及び11月13日の戻り高値を結ぶ上値抵抗線がほぼ平行となる下降チャンネルを形成していた。12月17日まではこの範囲にあったが、12月18日の上昇でこの下降チャンネルから上抜けはじめている。
12月24日の中銀利上げによる上昇後も高値圏を維持しており、11月19日の利上げ時では早々に反落してしまった轍を踏まなかったことで下降チャンネルから脱却した状況を維持して先週を終えている。
11月13日と11月19日の高値13.82円を超えてくる場合は、11月6日まで続いた暴落相場が一巡して反騰期に入った印象が強まるところだが、昨年も8月の暴落から出直ったものの今年1月からは下落再開に入ったことを踏まえるとまだ油断できない状況にあると思われる。ただ、最近のトルコリラは南アランドやメキシコペソなどの新興国通貨の動きも踏まえて全般的なドル安には強気反応しやすくなってきているため、リスク選好的な株高とドル安が継続するなら11月高値を超えて14円台回復を目指す可能性もあるところと考える。
【当面のポイント】
12月18日深夜に13.50円を超えてからは13.50円を挟んだ小持ち合いで推移してきたが中銀利上げにより上放れし、25日朝の反落時も13.50円台を維持しているので、当面は高値試しへ進みやすい状況と思われる。
(1)当初、13.50円前後下値支持線、24日夜高値13.70円を上値抵抗線とみる。
(2)13.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、24日夜高値超えからは13.80円前後を目指すとみる。13.80円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、13.60円以上での推移なら29日夜、30日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)13.50円割れからはいったん調整安に入るとみて13.40円前後への下落を想定する。13.50円以下での推移が続く場合は30日も安値試しへ向かいやすいとみるが、13.40円前後は押し目買いされやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
12月29日
16:00 12月経済信頼感指数 (11月 89.5、予想 86.2)
12月31日
16:00 11月貿易収支 (10月 -23.7億ドル、予想 −18.0億ドル)
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨公開
20:30 週次外貨準備高 12/25時点(12/18時点 498.0億ドル)
1月4日
16:00 12月消費者物価 前年同月比 (11月 14.0%)
16:00 12月消費者物価 前月比 (11月 2.3%)
16:00 12月生産者物価 前年同月比 (11月 23.11%)
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