ドル円見通し 103.50円挟んだ小動き続く、年始相場へのヒントとなる動き見せられるか
〇ドル円21日に英国でのコロナ変異種感染急増で狼狽買い103.88をつけるが一時的
〇株高ドル安基調継続継続、新興国通貨も総じて強気
〇ただし、米長期金利高止まりでドルの下落速度は鈍いイメージ
〇103.35を上回るうちは上昇余地あり103.88超えから104円試し
〇103.35割れからは102.86試し、戻りが103円台序盤にとどまるうちは年明けからの円高警戒
【概況】
ドル円は12月17日安値で102.86円を付けて11月6日安値103.17円を割り込み3月のコロナショック暴落直後にV字反騰で付けた3月24日高値以降の最安値を更新した。
11月6日安値から11月11日高値へと短期的な上昇後に徐々に戻り高値を切り下げて日足レベルでの三角持ち合いの様相となりそこから転落したのだが、その後は下げ一服で手掛かりにかけて103.50円を挟んだ揉み合いにとどまっている。英国での新型コロナウイルス変異種による感染急増や英国からの入国規制の動きが相次ぐ中で為替市場が12月21日にやや狼狽的な手仕舞い売り=ドル買い戻しに動いたところではドル円においてもドル高優勢となって103.88円まで戻したが、この狼狽的なドル買いは一時的なものにとどまってドル安感も回復したために12月22日午前には103.27円まで反落している。
22日も為替市場全般の乱高下が続いたことでドル円もやや戻したり、また失速するなどを繰り返しているが、24日深夜高値は103.76円にとどまり、25日朝安値も103.45円までで、21日夜高値と22日午前安値までの高安レンジ内での動きで先週を終えた。
【株高ドル安基調の趨勢はまだ継続していると思われるが、足並みも乱れる】
変異種による感染急増やEUとのFTA交渉が難航という環境の中にあってもポンド/ドルは3月コロナショック以降の最高値を12月17日に付けた。12月21日の急落からもV字回復して24日には17日高値にあと一歩へ迫っている。感染急増と各国の入国制限などによる混乱は足かせとなるもののEUとのFTA交渉が土壇場で合意に到達したことでリスク選好感が回復している。
ユーロドルも12月17日に3月以降の最高値を更新したが、その後はやや伸び悩んでいる。ユーロ/ポンドでのポンド買いに押されている印象もあるが、一段高状態を維持しており、NYダウが12月18日に史上最高値を更新した後は3万円を挟んだ高値圏持ち合いとなっていることと歩調は合っている。
豪ドル米ドルも豪中の通商摩擦やシドニーでのクラスター発生などを気にしつつも12月17日に3月以降の最高値を更新、21日の急落も押し目買いされて最高値更新を伺うところ。
新興国通貨の中で暴落的な下落を続けてきたトルコリラも対ドルでは11月6日に底打ちしており、12月24日にトルコ中銀が2会合連続で利上げしたことで上昇基調にある。南アランドは12月25日に4月以降の最高値を更新、メキシコペソも最高値近辺での推移であり、新興国通貨も総じて強気となってきている。
【米長期債利回りの高止まりでドル円の下落もやや慎重姿勢】
そうした中で、ドル円ももう少し円高ドル安へ進んでも良いところにあると思われるのだが、株高になびいてリスクオン的な円安へ進む勢いはなく、ドル安基調を追いかけて先安感を全開として安値試しを続ける勢いでもない。
一つは米長期債利回りの上昇気配がドル円を下支えていることも考えられる。米長期債利回りを30年債で見ると、8月4日の1.19%を底としてジリ高基調にあり、11月11日には1.75%へ上昇して3月19日高値1.78%へせまり、11月20日に1.52%までいったん下げてから12月4日には1.74%へ再び上昇、その後も1.60%を上回る水準で高止まりしている。
歴史的に見れば低水準であり世界的な実質ゼロ金利状態の中では日米金利差によるドル高圧力はかつてほどではないので、8月からの米30年債利回り上昇でもドル円は下落基調を継続してきたといえる。しかしそれでも3月以来の利回り水準に来ていること、3月19日の1.78%を超えてくるとさらに利回り上昇感が強まりかねないところにあるため、ドル円としては為替市場全般のリスクオン的なドル安を繁栄しきれずにやや慎重姿勢にとどまるという選択となっているのではないかと思われる。
株高債券安で利回り上昇となり米30年債利回りが1.78%を超えて上昇する場合、ドル円は株高同調でのリスクオン的な円安感を優先させて戻しに入る可能性があると注意し、逆に株高でも利回り上昇は抑えられ気味の場合はドルストレートでのドル安を反映してドル円としても安値試しへ舵を切るのではないかと思われる。そのあたりの決着が年末にみられるか、年明けとなるか、じっくり見定める必要があると思われる。
【当面のポイント】
(1)中勢としては12月17日安値102.86円を支持線、12月21日高値103.88円を上値抵抗線として上下いずれへ抜けるのかにより先行きを判断してゆく。
(2)12月23日夕安値103.35円を上回るうちは上昇余地ありとし、12月21日高値超えからは104円台序盤試しとみる。104円到達で売られるようならやや戻り高値を切り上げた程度に終わってその後の103.50円割れからは下落局面に入るとみるが、104円台に定着してくる場合は年明けへ104円台中盤を目指しやすくなるとみる。
(3)12月23日夕安値割れからは12月17日安値試しへ向かうとみる。年末の手掛かり難な動きの範囲なら底割れ回避かわずかに割り込んでもその後は持ち直すとみるが、103円台序盤にとどまるようなら年明けからの円高ドル安を警戒する。(了)<27日17:40執筆>
注:ポイント要約は編集部
【当面の主な予定】
12/28(月)
休場(ボクシングデー) 英国、カナダ、スイス、スペイン、ノルウェー、ポーランド、ハンガリー、オーストラリア、ニュージーランド 休場(親善の日) 南アフリカ
08:50 (日) 11月 鉱工業生産・速報値 前月比 (10月 4.0%、予想 1.4%)
08:50 (日) 11月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (10月 -3.0%。予想 -2.1%)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合における主な意見(12月17-18日分)
12/29(火)
23:00 (米) 10月 ケース・シラー米住宅価格指数 (9月 2532.53)
23:00 (米) 10月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (9月 6.6%、予想 7.0%)
12/30(水)
休場(リサール記念日) フィリピン
16:00 (英) 12月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (11月 0.9%、予想 0.4%)
23:45 (米) 12月 シカゴ購買部協会景況指数 (11月 58.2、予想 56.)
24:00 (米) 11月 住宅販売保留指数 前月比 (10月 -1.1%、予想 0.1%)
24:00 (米) 11月 住宅販売保留指数 前年同月比 (10月 19.5%、予想 21.0%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
12/31(木)
休場(大晦日) 日本、ドイツ、スイス、イタリア、ノルウェー、ポーランド、韓国、タイ、 フィリピン、インドネシア、ロシア (バンクホリデー) ブラジル
英EU離脱移行期間終了
10:00 (中) 12月 国家統計局製造業PMI (11月 52.1、予想 51.9)
16:00 (ト) 11月 貿易収支 (10月 -23.7億ドル、予想 -5.1億ドル)
22:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 80.3万件、予想 83.0万件)
22:30 (米) 週間失業保険継続受給者数 (前週 533.7万人)
1/1(金)
休場(元旦)
日本、米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス、スイス、ベルギー、オランダ、イタリア、スペイン、ノルウェー、ハンガリー、ポーランド、ロシア、トルコ、ギリシャ、中国、香港、台湾、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、メキシコ、コロンビア、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ
英EU自由貿易協定(FTA)暫定発効
オーダー/ポジション状況
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