今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、週初は目立った材料が無い中でポンド安、米金利高といった動きが重石となり、ユーロ安でのスタートを切り1.1718レベルの安値をつけました。週半ばには米国材料として、上院補選やFOMCによる材料出尽くしからドル売りとなり、ユーロドルは1.1863レベルまで反発。週末にかけてはハト派よりなECB理事会の結果とブレグジットフェーズ2以降への懸念から1.17台半ばへ押しての週末クローズです。
先週は、FOMC、ECB理事会と米欧双方の金融政策イベントがあり、またユーロ圏首脳会談に向け英国とEUとのフェーズ1(離脱協定)における事前合意が追認され、フェーズ2(将来協定)へと移行することとなりました。フェーズ1では、清算金、EUと英国民の相手国での権利、アイルランドとの国境といった3点がテーマで進んできましたが、フェーズ2では関税など通商問題を主に、金融の相互進出などが決められます。
メイ首相は粛々と進めていく態度を変えていませんが、先週のEU首脳会議でメルケル首相が発言したように、ここからがいよいよ本題であり難しい交渉が重ねられます。EUの条約では離脱協定以外は何も規定されていないため、2019年3月29日にEU離脱時にはまだフェーズ2の合意がすべて住んでいない可能性もあるわけです。悲観的な見方では5年くらいかかるのではないかといった見方までありますが、合意無しに離脱でより深刻なのは英国側と考えられ、今後の協議に対する不透明感がポンド売り材料とされ、そこからユーロ売りに繋がっているというのが直近の動きと言えます。
しかし、ユーロにとっては悪い材料だけではありません。経済指標が示す通りで景気は悪くありませんし、先週はドイツの連立協議にあたってSPD執行部は連立に向けての協議を全会一致で承認しました。いまだSPDの方針と与党CDUの方針には溝があり、ここからがスタートとはなるものの世論調査では6割以上のドイツ国民が両党による連立を指示しています。また、現在の連立状態を終わらせ迷走を招いたSPDに対する風当たりのほうがより強いと考えると、両党とも早期に妥協点を探る流れとなってくる可能性が高いと言えそうです。これは今後のユーロの上値を抑える重石を取り去る材料となります。
そうは言っても、今週は主要なイベントが終わり、いよいよ来週のクリスマスに向けての休暇モードへと入り込んできます。26日に英国ボクシングデイ祝日をもってクリスマスが終わるという感じですから、今週から来週の火曜までは欧州、LDN市場にとっては1年間でもっとも参加者が少なくなる時期で、よほどのことがなければ動きは出にくくなります。逆によほどのことがあると、流動性に限界があるため動きが加速することもあるため、その点にだけは注意が必要でしょう。
材料的には乏しいためテクニカルに見て行きます。日足チャートをご覧ください。
*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
9月以降はドル円同様に値幅観測的には比較的キレイな動きをしていて、9月高値と11月安値の78.6%戻し(赤いターゲット)と11月高値がほぼ一致し、11月安値と11月高値の61.8%押し(青いターゲット)が先週安値とほぼ一致してきました。現在は9月高値と11月高値を結んだレジスタンスライン(ピンク)程度しか中期的に目立ったものはありませんが、足元では均衡表の雲の中へとり込む動きとなっています。
この均衡表の雲の下限が今週は1.16台後半から1.1712へと上記青いターゲット(61.8%)の1.1710とほぼ重なる位置にあり、いっぽう上限は1.1823となっています。特に変動が無ければ、この雲の上下に近い1.1700レベルをサポートに、1.1825レベルをレジスタンスと狭い値幅でのもみあいの動きになると見ておいて良さそうです。
今週のコラム
今後のブレグジットの交渉に対する懸念がポンド売りとなり、その動きがユーロ売りへと波及していますが、歩調を揃えていることもあって思いのほかユーロポンドも上値が重たい流れが継続しています。直近のところでは0.87台前半の買いと0.88台半ばの売りとで、どちらにも動きにくそうです。今後のブレグジット交渉の進み方によってはユーロ買いへと舵を切ってくる可能性はあるものの、いまはまだ静観の段階です。
そこで、ユーロクロスとしてはもう一つのメジャーなクロスであるユーロスイスを今週は見てみたいと思います。
ユーロスイスはまだ記憶に新しいところですが、2015年1月にスイス中銀が突然ユーロスイスの買い介入を放棄したことから1.20の大台を割り込み、安値は0.82〜0.90水準まであまりの流動性の低さから各社バラバラのレートをつけ、このスイス中銀ショックで破たんに追い込まれたFX業者もありました。
しかし、当初はスイス中銀ショックでスイスフランは新興国通貨並みに信用を落としていましたが、その後は着々とユーロ高方向へと動き、今月に入り1.1737レベルと急落後の最高値をつけています。そして、継続してユーロ高・スイス安のトレンドを継続しています。
日足チャートをご覧ください。
ユーロスイス日足
大きくはピンクの平行線の中で、短期的には赤い平行線の中で着実にユーロ高に向かっていることが確認できます。
スイス中銀は、現在でもスイスフランが高すぎるとの認識のもと、スイスフラン売り介入を継続していて、外貨準備は11月の発表では約7478億ドルと世界7位の水準となっています。この為替介入と経常黒字が引っかかり米国財務省の為替報告書ではスイスも監視リストに入っていますが、現在ユーロに対してもっとも弱い通貨として、今後は一段と注目が集まりそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
12月18日(月)
19:00 ユーロ圏11月CPI確報値
20:00 英国12月CBI製造業受注指数
12月19日(火)
18:00 ドイツ12月ifo景況感指数
18:30 イタリア中銀総裁議会証言
19:00 ユーロ圏10月建設支出
12月20日(水)
16:00 ドイツ11月PPI
18:00 ユーロ圏10月経常収支
21:00 メイ首相議会で質疑応答
12月21日(木)
09:01 英国12月GFK消費者信頼感
16:45 フランス12月企業景況感指数
24:00 ユーロ圏12月消費者信頼感速報値
12月22日(金)
16:00 ドイツ1月GFK消費者信頼感
16:45 フランス7〜9月期GDP確報値
16:45 フランス11月PPI
18:30 英国7〜9月期GDP確報値
**:** 英国取引所短縮取引
前週のユーロレンジ
始値 高値 安値 終値
ユーロドル 1.1769 1.1863 1.1718 1.1751
ユーロ円 133.65 133.89 132.05 132.33
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
前週のユーロ
12月11日(月)
ユーロドルは多少の上下を挟みながらも1.1812レベルへとじり高の動き、前週の売りに対する調整も出ていたことが主因でした。しかし、ポンドが終日上値の重たい展開となったため、引けにかけてはポンドの動きに押され、東京朝方の水準へと行って来いでの引けとなりました。
12月12日(火)
ユーロドルはNY市場まで目立った材料も無く動意薄でしたが、米金利高に敏感に反応し前日安値を下抜けるとストップオーダーも巻き込みながら先週安値をも下回る展開となりました。結局は1.1718レベルまで安値を切り下げた後にやや戻して引けとなりました。
12月13日(水)
ユーロドルはドル円と歩調を揃え、上院補選で共和党候補が敗北、米国CPIコア部分の数字が予想よりも弱かったこと、そしてFOMCの結果発表が2018年も3回の利上げ見通しとなったことで、押しを挟みながらも着実にユーロ買いの動きとなりました。NY後場には1.1832レベルの高値をつけ高値圏での引けとなりました。
12月14日(木)
ユーロドルは多少の上下はあったもののECB理事会までは方向感の無い展開、ECB理事会では景気見通しの上方修正が入ったことで直後は買いが先行したものの、来年の9月以降の債券購入の可能性にも触れたことからハト派な内容に反落することとなりました。NY市場では1.1771レベルまで売られた後にやや買い戻されてのクローズとなりました。
12月15日(金)
ユーロドルは、東京市場ではEU首脳会議でブレグジットの流れが進むとの期待もありじり高の動きとなりました。しかし、メイ首相は予定通りとコメントしたものの、メルケル首相がフェーズ2は一層厳しいものとなると前途多難を思わせる発言をしたことでポンドとともに下落、東京朝方の安値を割り込み1.1749レベルの安値をつけ、そのまま安値圏での引けとなりました。
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