日銀黒田総裁、上機嫌の記者会見で円安容認
黒田総裁、円は「驚くような水準でも行き過ぎでもない」
本日の金融政策決定会合後の記者会見で黒田総裁は今回景気判断を「一歩進めた」と説明し、終始上機嫌の様子でしたが、政策に変更がなかった割にいつもよりも注目ポイントの多い会見内容であったように思います。
特に為替に関しては、「日米の金利政策の方向性の違いが明確になる中、今後円安が進行した場合にそれを回避するために金利を引き上げる選択肢はあるのか」との記者の質問に対し、物価目標達成にはまだ距離があり政策変更は考えていないことを明言。現在の為替は円安というよりドル高であり、金融政策の違いが為替に影響を与える可能性を認めつつも、円安が行き過ぎるという見通しは持っておらず、現在の水準も高々今年2月の水準に戻っただけで驚くような水準とは思っていないと為替の現水準と今後の円安の進行の双方について容認姿勢を明確にした形となりました。
現状肯定に徹し、景気回復の勢い温存姿勢
黒田総裁はその後も国債買い入れの減額や金融緩和政策の出口に関する誘導質問、ETF買入れ減額の可能性に関する質問などを巧みにかわし、現在の円安・株高・景況感の改善に水を差すようなコメントは一言も述べること無く会見を終了。
ただ、会見中二回にわたり、長期金利の誘導水準を1%、0.1%などと言い間違え、しばらく気がつかないという奇妙な場面があり、金融政策の根幹部分であるだけに、金利水準については何か含むところがあるのではないかとも想像させました。
これを受けた為替市場の反応は、しかしながら極めて限定的で、ドル円は円安容認発言直後こそ118円に接近して上昇したものの、117.96付近で反落するとその後会見中に118円トライはなく、発言前の水準前後で方向感を失いました。
黒田総裁の今回の会見では、やや急激に進んだ円高、部分的なバブルの萌芽と需給バランスの崩れが心配される賃貸住宅向けローンの拡大、海外の長期金利の上昇による日本との金利差の拡大等も含め、すべてについて現状肯定的な姿勢を示しており、口には出さないながら、景気改善の方向に向かっている現在の状況を阻害する恐れのある一切の発言について慎重、さらに、通常は考えられない為替水準に言及してでも今の流れを維持したいとの意図が強く感じられるものでした。
薄い海外市場での再解釈待ちながらドル円は底堅い動きか
ロンドン時間に入りドル円は118円台を回復、日経平均先物も19,600円台に上昇。欧州の株価指数先物も概ね上昇しています。
すでに休暇入りで参加者が少なく閑散とした欧米市場ですが、今日の会見内容が海外で再度咀嚼される可能性もあり、基本的にはドル円は底堅い動きが予想されます。
今晩米国で重要な経済指標等の発表は予定されていません。
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