『与党ANCの支持率低下と米FRBによる利下げ観測後退がランドの重石』
〇今週の南ア円、南ア指標の好調、金・プラチナ価格の堅調推移等に週前半8.24まで上昇
〇その後は南ア政局不安再燃、米金利上昇等に8.05まで急落、週末は8.10前後で推移
〇南ア円、転換線下抜け調整売り継続、来週にかけてのトレンド転換を要警戒
〇ファンダメンタルズも南ア経済・政局の先行き不透明感、中銀早期利下げ観測が重石に
〇南アランド円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(ZARJPY):7.95ー8.20
今週のレビュー(4/8−4/12)
今週の南アフリカランド円相場(ZARJPY)は、週初8.11円で寄り付いた後、(1)南ア3月外貨準備高(結果623.2億ドル、前回616.5億ドル)の急増や、(2)南アフリカの主要輸出産品である金・プラチナ価格の堅調推移(南アフリカの交易条件改善期待)が支えとなり、翌4/9にかけて、週間高値8.24円(昨年11/16以来、約5カ月ぶり高値圏)まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(3)急ピッチな上昇に対する反動売りや、(4)一部メディアによる「世論調査で与党・アフリカ民族会議(ANC)の支持率が37%まで低下している」とのネガティブ報道(南アフリカの政局不透明感再燃)、(5)米3月消費者物価指数(結果+3.5%、予想+3.4%)および、米3月消費者物価コア指数(結果+3.8%、予想+3.7%)の市場予想を上回る結果、(6)上記5を背景とした米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米長期金利上昇・米ドル買い→新興国通貨から米国への資金流出圧力再燃)が重石となり、週末にかけて、週間安値8.05円まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間4/13午前0時40分現在)では、8.10円前後で推移しております。
来週の見通し(4/15−4/19)
南アランドの対円相場(ZARJPY)は4/9に記録した約5カ月ぶり高値8.24円をトップに反落に転じると、週末にかけて一時8.05円まで急落しました(日足ローソク足が一目均衡表転換線を下抜けするなど、大規模な調整売りが継続中)。ダウンサイドに位置する21日移動平均線や一目均衡表基準線を下抜けできれば、地合いの悪化が鮮明となるため、来週はテクニカル的なトレンド変化(上昇トレンド終焉→下落トレンド開始)に警戒が必要でしょう。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)南アフリカ経済の先行き不透明感(先月発表された南ア2月消費者物価指数は前年同月比+5.6%と前月の+5.3%から伸び率加速→景気減速下でのインフレ底打ちでスタグフレーション懸念再来)や、(2)南ア中銀による早期利下げ観測後退(先月開催された南ア中銀会合でクガニャゴ総裁は「インフレ目標の中央値である4.5%への回復は想像以上に遅い」と発言→景気減速下にも係わらずインフレ底打ちの影響で利下げに踏み切りにくい→南ア経済に更なる下押し圧力)、(3)南アフリカの政局不透明感(今週は世論調査で与党ANCの支持率が37%まで低下しているとのネガティブ報道あり→5/29に予定されている南ア選挙でANCが大幅に議席を失うリスク)、(4)日本政府・日銀による為替介入警戒感(ドル円相場が約34年ぶり高値圏へと急上昇→実弾介入が実施されればドル円急落を通じて南アランド円に強い下押し圧力が加わる恐れ)など、南アランド円相場の下落を連想させる材料が揃っています。
こうした中、来週は上記1を見極める目的で、南ア3月消費者物価指数や、経済的な結びつきの強い中国の主要経済指標(中国第1四半期GDP、中国3月固定資産投資、中国3月小売売上高、中国3月鉱工業生産)に注目が集まります。南ア3月消費者物価指数が市場予想を上回る場合には、スタグフレーション懸念への警戒感から南アランドに強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されます。また、中国の主要経済指標が下振れる場合にも、中国経済の減速懸念→経済的な結びつきの強い南ア経済の減速懸念の波及経路で、南アランド円相場に下押し圧力が加わると考えられます。与党ANCの支持率低下や、米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測など、南アランドを取り巻く環境は悪化の一途を辿っているため、当方では引き続き、南アランド円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(ZARJPY):7.95ー8.20
注:ポイント要約は編集部
南アフリカランド円日足
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