トルコリラ円見通し トルコ統一地方選での与党敗北で1日夜へ急伸するも反落
〇トルコ円、4/1午後までは4.66台で小動き、対ドルでリラ急伸・円安の押し上げで21時台4.77まで上昇
〇対ドルでのリラ買いが一巡、ドル円も深夜以降は上げ渋りで、4/2早朝には安値4.68台へ下落
〇対ドル、トルコ統一地方選挙の結果を受け、4/1夜には31.36へドル安リラ高進む
〇反騰した後はリラ売りの揺れ返しとなり、32リラ台へ
〇統一地方選挙での与党敗北が、金融・経済政策の正常化促進となるか
〇イスタンブール小売物価指数は上昇、高い状況が続く
〇4.67を上回るうちは上昇再開余地ありとし、4.72超えからは4.75、4.77を順次試す上昇を想定する
〇4.67割れからは戻り一巡による下落期入りとみて、4.65、4.63を順次試す下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の4月1日は概ね4.79円から4.66円の取引レンジ、2日早朝の終値は4.71円で先週末終値の4.66円から0.05円の円安リラ高だった。
3月31日のトルコ統一地方選挙で与党が大敗し、最大都市イスタンブールや首都アンカラ等で野党CHPが勝利し、CHPは全国得票率でエルドアン大統領率いる与党AKPを上回った。大勢が判明した当初はリラ安反応だったものの、トルコ市場時間に入るとエルドアン政権が民意を尊重して金融・経済政策の正常化を継続するとの期待からリラ高へ風向きが変わった。
トルコリラ円はドル安リラ高に加え、米長期債利回りが連休明けに急上昇したことによりドル円が午前の151円台序盤から深夜に151.75円へ上昇したことによる円安の押し上げも加勢となり、4月1日午後までは4.66円台で小動きだったものの対ドルでリラが急伸したことと円安の押し上げにより21時台高値で4.77円まで上昇した。しかし対ドルでのリラ買いが一巡し、ドル円も深夜以降は上げ渋りとなったために徐々に水準を切り下げてゆき、2日早朝には安値で4.68円台へ下落した。
トルコリラ円の反騰レベルは3月21日にトルコ中銀が予想外の追加利上げを決定した時の上昇時に近い印象であり、ドル/トルコリラにおけるリラ高が3月21日と同様に一時的なものに終わるのか見定める必要がありそうだ。
【ドル/トルコリラ、統一地方選での野党勝利で一時リラ買い】
ドル/トルコリラの4月1日は概ね32.48リラから31.36リラの取引レンジ、2日早朝の終値は32.08リラで先週末終値32.35リラからは0.27リラのドル安リラ高だった。
3月31日のトルコ統一地方選挙で野党がエルドアン大統領率いる与党AKPに大勝したことを受け、当初はリラ売り優勢となって32.48リラ(ベンダーによっては32.55リラ等)へドル高リラ安反応がみられたが、トルコ市場時間に入ってからはエルドアン政権が選挙大敗により正常的な政策を継続する可能性が高まったとしてリラ買いへと風向きが変わり1日夜には31.36リラへドル安リラ高が進み、3月21日にトルコ中銀が現状維持予想に反して5.0%利上げを決定したことによるリラ買いで付けた3月22日の31.53リラを超えるドル安リラ高となった。しかし31.36リラまで反騰した後はリラ売りの揺れ返しとなって32リラ台を回復、4月2日午前は32.08リラから32.33リラのレンジで推移しており、リラ買いの流れは続いていない印象だ。
【与党敗北が金融・経済政策の正常化促進となるか】
統一地方選挙では、開票率100%時点の得票率は野党第一党のCHPが37.77%、与党AKPが35.49%となった。大都市ではCHPが14議席でAKPは12議席、州都ではCHPが35議席でAKPが24議席、地方はAKPが356議席でCHPは337議席だった。メトロポリタン区とされるイスタンブールやアンカラ等12都市市長選では最大都市イスタンブールと首都アンカラ等の8区でCHPが勝利、AKPは3区に留まった。特にエルドアン大統領にとって最大の政敵であるイマモール氏がイスタンブール市長選で再選を果たしたことの影響が大きく、エルドアン大統領にとっては最大の敗北という様相となった。
野党大躍進により議会運営は厳しくなり、民意を踏まえてエルドアン大統領も金融・経済政策の正常化を継続せざるを得ず、特に高インフレ・高金利・リラ安・増税が政府批判につながった状況を改善してゆかなければ、エルドアン大統領の任期終了後の次回大統領選挙でCHPが勝利して政変となることも考えられる。
外資はこの状況を今のところは好機とみているものの、政局不安定さへの懸念とともに果たしてインフレ抑制と利下げ、リラ高へと経済の風向きを変えられるのかどうか懐疑的な見方もある。
【イスタンブール小売物価指数 前月比3.93%上昇、前年比78.25%上昇】
4月1日に発表されたイスタンブールの3月小売物価指数は前月比3.93%上昇、前年比は78.25%上昇と高い状況が続いている。WPI(卸売物価指数)は前月比3.78%上昇、前年比は63.21%上昇だった
。4月3日には3月CPI(消費者物価指数)の発表があるが、市場予想は全体の前月比が3.5%(2月は4.53%)、前年比が69.10%(2月は68.20%)と見込んでいる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、3月21日深夜高値からの下落が続いてきたが、3月30日早朝へ続落したところから戻し、統一地方選での与党敗北をきっかけに急伸したことにより、3月30日早朝安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたと思われる。サイクルトップ形成期は3月26日夜高値を基準として29日夜から4月2日夜にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとするが、4月1日夜高値からの反落ですでにサイクルトップを付けた可能性があると注意し、4.67円割れからは弱気サイクル入りとして4日早朝から6日早朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では4月1日夜への急伸で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いたが、その後の反落で急伸幅の半値以上を削っているためすでに下落期に入っている可能性があると注意し、遅行スパン悪化からは下落期入りとみて安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は4月1日夜の急伸時に80ポイントを超えてから50ポイント台まで急低下した。50ポイント以上を維持する内は60ポイント超えから反騰開始とみて70ポイント台への上昇を想定するが、50ポイント割れからは下向きとして30ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.67円を下値支持線、4.72円を上値抵抗線とする。
(2)4.67円を上回るうちは上昇再開余地ありとし、4.72円超えからは4.75円、4.77円を順次試す上昇を想定する。4.75円以上は反落警戒とするが、4.70円を上回っての推移なら3日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)4.67円割れからは戻り一巡による下落期入りとみて4.65円、4.63円を順次試す下落を想定する。4.65円以下は買われやすいとみるが4.67円を下回っての推移なら3日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
4月3日
16:00 3月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (2月 4.53%、予想 3.50%)
16:00 3月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (2月 67.07%、予想 69.10%)
16:00 3月 コアCPI 前月比 (2月 3.6%)
16:00 3月 コアCPI 前年同月比 (2月 72.9%)
16:00 3月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (2月 3.74%)
16:00 3月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (2月 47.29%)
4月4日
20:30 週次 外貨準備高 3月29日時点 グロス (3月22日時点 706.8億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 3月29日時点 ネット (3月22日時点 152.1億ドル)
4月8日
16:00 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 0.0%)
16:00 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 1.1%)
注:ポイント要約は編集部
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