7月18日の史上最安値に迫る
〇トルコリラ円、ウォラーFRB理事が利下げに言及でドル円下落、11/29早朝に5.09まで下げる
〇午前序盤にドル円は147円を割り込み、トルコ円も5.08を割り込んで史上最安値更新に入っている
〇対ドル、米長期債利回り低下で為替市場がドル全面安となるもトルコリラの先安感は変わらず最安値更新
〇本日、貿易収支確報、明日は7ー9月期GDPの発表予定
〇5.11から5.13にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる
〇5.06割れからは5.03、5.01を順次試す下落を想定
【概況】
トルコリラ円の11月28日は概ね5.14円から5.09円の取引レンジ、29日早朝の終値は5.09円で前日終値の5.13円から0.04円の円高リラ安となった。
対ドルでトルコリラの史上最安値更新が止まらない中、トルコリラ円はドル円の反発時に戻しても戻り高値が切り下がる右肩下がりの展開が続いてきたが、11月28日夜にFRBのタカ派として知られるウォラー理事が利下げの可能性に言及したことをきっかけに米長期債利回りが低下してドル円が下落したため、トルコリラ円は29日早朝に5.09円まで下げた。
トルコリラ円の史上最安値は本稿では7月18日の5.08円と規定しているが、ベンダーによっては7月18日の5.09円や7月19日の5.07円等もある。
11月29日午前序盤にドル円は147円を割り込み11月21日安値147.15円を割り込んで11月13日夜高値151.90円以降の安値を更新したが、トルコリラ円も5.08円を割り込んでおり、史上最安値更新に入っているようだ。
【対ドルでは11週連続で史上最安値更新】
ドル/トルコリラの11月28日は概ね28.94リラから28.69リラの取引レンジ、29日早朝の終値は28.89リラで前日終値の28.88リラからは0.01リラのドル高リラ安だった。
11月28日はウォラーFRB理事が講演で利下げに言及したことをきっかけとして米長期債利回りが低下して為替市場はドル全面安となったが、トルコ中銀による連続利上げが続いて政策金利が40%に到達してもインフレ率が60%を超えて実質マイナス金利状態にあるために、対ドルでのトルコリラの先安感は変わらないとして全般的なドル安の影響は受けず、27日に続いて取引時間中の史上最安値を28.94リラへ伸ばし、終値としても史上最安値を更新している。
11月29日午前序盤も28.93リラから28.74リラのレンジで推移しつつ最安値更新を伺う位置に付けている。
【11月29日に貿易収支確報、30日に7-9月期GDPの発表あり】
11月29日にはトルコ統計局による10月貿易収支確報の発表がある。11月6日に貿易省が発表した通関ベースの速報で10月の貿易赤字は67億ドルだっため、統計局による10月貿易赤字も9月の50億ドルから67億ドル前後へ拡大するとみられている。
リラ安による購買力低下で輸入は今年5月の343億ドルで頭打ちとなる一方、輸出は毎月のように波があるものの2023年3月に236億ドルまで拡大後に4月の193億ドルへ減少してから持ち直しつつあり、リラ安による輸出促進で堅調さを維持している。
11月30日に発表予定の7-9月期GDPについては、前期比が4-6月期のマイナス0.1%からプラス3.5%へ改善し、前年同期比は5.6%増と予想されており4-6月期の3.8%を超えて2022年10-12月期以降の低迷から抜け出す可能性もある。前年同期比は2021年7-9月期に前年のパンデミックに対する反動で22.3%増となったところを除いて2022年7-9月期までは8%前後の高水準を維持していたが、2022年10-12月期からは5%以下へ停滞してきた。鉱工業生産が2023年4月に前年比8.2%減まで悪化してからは改善傾向にあるものの、直近の今年9月で4.0%増にとどまっているため、今回のGDPについても予想中央値を下回る可能性も指摘されている。
トルコ経済は高インフレと高金利に増税が重なった状況にある中で、外貨準備高を増強しつつ財政再建も行って外資による投資意欲を高めようと努力しながらインフレ低下を待つ状況にあるが、しっかりとした成長を示せるかどうか、外資導入の拡大へも影響が大きいのではないかと思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、11月21日夕安値をサイクルボトムとして21日未明から23日未明にかけての間への上昇を想定してきたが、11月23日夜へ高値を切り上げてから反落して前回サイクルトップからも5日以上を経過したため、27日午前時点では23日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして27日の日中から28日夕にかけての間への下落を想定した。
11月28日午前時点では24日午後安値を起点としてボトム形成期が29日午後から12月1日午後にかけての間へ延びる可能性があると指摘したが、29日午前へ一段安しているので引き続きボトム形成中とみる。11月28日夕刻に小反発してから一段安しているため、28日午前安値を基準とすればボトム形成期は12月1日午前から5日午前にかけての間まで伸びる可能性もあると注意したい。
強気転換には11月28日夕の反発時高値5.14円を超える必要があるとみる。
60分足の一目均衡表では11月23日夜高値からの下落で遅行スパンが悪化し、27日の続落で先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンからの転落が続くうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。
60分足の相対力指数は11月29日午前に20ポイント台へ低下しておりまだ安値試しを続けやすい状況と思われる。強気転換には40ポイントを超えてさらに続伸する反騰が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.06円を下値支持線、5.13円を上値抵抗線とする。
(2)5.11円から5.13円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)5.06円割れからは5.03円、5.01円を順次試す下落を想定する。5.02円以下は反騰注意とするが、5.11円以下での推移が続く場合や直前安値から0.05円を超える反発がみられないうちは30日も安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な予定】
11月29日
16:00 10月 貿易収支確報 (9月 -50.1億ドル)
16:00 11月 経済信頼感指数 (10月 96.5)
11月30日
16:00 7-9月 GDP 前期比 (4-6月 3.5%)
16:00 7-9月 GDP 前年同期比 (4-6月 3.8%、予想 5.6%)
20:30 週次 外貨準備高 11月25日時点 グロス (11月17日時点 892.3億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 11月25日時点 ネット (11月17日時点 289.9億ドル)
12月1日
16:00 11月 イスタンブール製造業PMI (10月 48.4)
12月4日
16:00 11月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (10月 3.43%)
16:00 11月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 61.36%)
16:00 11月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (10月 1.94%)
16:00 11月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (10月 39.39%)
注:ポイント要約は編集部
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