ドル円見通し ウォラーFRB理事の利下げ言及で下げ足を強める(23/11/29)

ドル円は、29日8時台には147円を割り込む位置に付けており、11月21日夕安値割れからの一段安に入っている。

ドル円見通し ウォラーFRB理事の利下げ言及で下げ足を強める(23/11/29)

ウォラーFRB理事の利下げ言及で下げ足を強める

〇ドル円、米長期債利回り低下で11/29未明147.31、8時台には11/21夕安値147.15割れからの一段安
〇タカ派のウォラーFRB理事による利下げの可能性を示唆するハト派的発言が背景
〇NYダウは反騰、8/1の年初来高値に迫る。利下げ期待が強まりリスクオン優勢として買われている
〇147.00割れなら146.85近辺、さらに安値切り下がりが続く場合は146.50、146.00試しを想定
〇今年3/8高値と6/30高値からの下落時は8円前後規模の下げ幅、先行きは145円以下へ進む可能性も
〇148円手前は戻り売りにつかまりやすい
〇148円超えから続伸ならば11/21安値とのダブル底形成による反騰入りで148円台後半への上昇を想定

【概況】

ドル円は米国のインフレ鈍化による米長期債利回り低下を見ながら11月13日夜高値151.90円から11月21日夕安値147.15円まで大幅下落し、11月23日未明高値149.74円までいったん戻したものの11月23日の米感謝祭を挟んで149.50円を挟んだ持ち合いにつかまって先週を終えていた。
週明けの11月27日は戻り一巡感で149円を割り込み持ち合いから下放れに入ったが、28日は昼前に147.98円を付けたところから夕刻に148.82円まで戻したものの、ウォラーFRB理事による利上げ終了を示唆するハト派的発言をきっかけに米長期債利回りが一段と低下したために昼前安値を割り込み、29日未明には147.31円を付けて11月21日夕安値147.15円に迫った。その後も下げ渋り程度だったが、29日8時台には147円を割り込む位置に付けており、11月21日夕安値割れからの一段安に入っている。

【タカ派で知られるウォラーFRB理事が利上げに言及】

FRBのウォラー理事は11月28日の講演で「十分にインフレが低下すれば現行の高水準での政策金利を維持する必要はなくなる」と述べたが、最近のFRB高官としては初めて利下げの可能性を示唆する発言として注目された。ウォラー理事は「ディスインフレが数カ月以上続いてインフレ低下を確信できるなら、政策金利を引き下げ始めることができる」、「利下げは景気悪化への対応とは関係なく行われる」とも述べており、発言をきっかけに米長期債利回りは一段と低下した。

一方で、ボウマンFRB理事は11月28日の講演においてインフレは依然として高いとし、「2%の目標へ引き下げるため金融政策を十分景気抑制的とするためには追加利上げが必要だと引き続き予想している」と述べた。ウォラー理事とは反対の利上げ余地への言及だったが、市場はウォラー理事発言への反応を優先したようだ。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は利上げや利下げについて具体的に言及しなかったものの、インフレ低下については「全体として食品セクター以外で進展を遂げてきた」、まだ目標にまで低下していないが「2023年はインフレ率の低下が過去71年で最大となる軌道にある」と述べており、インフレ鎮静化が進んでいることで追加利上げの可能性が後退している印象を与えたと思われる。

【11月28日の米経済指標に対する反応は限定的】

米コンファレンス・ボードが発表した11月の消費者信頼感指数は102.0となり、10月の99.1を上回って4か月振りの上昇となり市場予想の101.0を上回った。現況指数は10月の138.6から138.2へ低下、期待指数は10月の72.7から77.8へ改善した。
9月の米連邦住宅金融局住宅価格指数は前月比0.6%上昇となり、8月の0.6%と変わらなかったが市場予想の0.4%を上回った。9月のケース・シラー米住宅価格指数は前年同月比で3.9%上昇となり、8月の2.2%を大きく上回ったが市場予想の4.0%には届かなかった。
リッチモンド連銀による11月の製造業指数はマイナス5となり、10月のプラス3から悪化して市場予想のプラス1を下回った。

【米長期債利回りは低下、ダウは反騰】

11月28日の米長期債利回りはウォラー理事発言等をきっかけに総じて低下し、為替市場はドル全面安となりドル円の下落につながった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.06%低下の4.33%となり、27日の0.08%低下からの続落で10月23日に5.02%でピークを付けて以降の最低を更新した。
30年債利回りは前日比0.03%低下の4.51%となり、27日の0.06%低下から続落して一時4.50%をつけて10月23日に5.18%でピークを付けて以降最低を更新した。
利上げ問題に敏感な2年債利回りはウォラー理事発言への反応が顕著となり、前日比0.15%低下の4.74%となり10月19日に5.26%でピークを付けて以降の最低を更新した。
一方でNYダウは前日比83.51ドル高と反発し、高値では35518.67ドルを付けて8月1日の年初来高値35679.13ドルに迫り、ナスダック総合指数も前日比40.74ポイント高と上昇した。来年の利下げ期待が強まったことでリスクオン優勢として買われている。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

60分足レベルで見れば、11月13日夜高値を起点として11月15日夜安値までを一段目の下げとし、11月21日夕安値までを二段目の下げとすれば、11月23日未明高値を起点として三段目の下げに入った印象だ。147円割れからさらに続落せずに148円超えへ戻せば11月21日安値とのダブル底形成として反騰入りする可能性もでてくるが、146円台で安値切り下げが続く場合は三段目の下げがさらに発展している状況とみて12月5日にかけての安値試しを続けやすくなるとみる。

60分足の一目均衡表では11月27日午前からの下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパンが一時的に好転しても先行スパンからの転落が解消しないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は11月29日午前に30ポイントを割り込んだ状況にあり、まだ安値試しを続けやすいとみる。強気転換には40ポイントを超えて50ポイントに迫る上昇が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、147.00円、次いで146.85円を下値支持線、148.00円を上値抵抗線とする。
(2)148円手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、148円超えから続伸する場合は11月21日安値とのダブル底形成による反騰入りの可能性があると注意して148円台後半への上昇を想定する。
(3)147.00円割れなら146.85円近辺、さらに安値切り下がりが続く場合は146.50円、146.00円試しを想定する。146円以下は反騰注意とするが、今年3月8日高値と6月30日高値からの下落時はともに8円前後規模の下げ幅となっているため、先行きは145円以下へ進む可能性もあるのではないかと考える。

【当面の予定】

11/29(水)
10:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%)
14:00 (日) 安達日銀審議委員、記者会見
19:00 (欧) 11月 消費者信頼感・確定値 (速報 -16.9、予想 -16.9)
19:00 (欧) 11月 経済信頼感 (10月 93.3、予想 93.7)
22:00 (独) 11月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (10月 0.0%、予想 -0.1%)
22:00 (独) 11月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (10月 3.8%、予想 3.5%)

22:30 (米) 10月 卸売在庫 前月比 (9月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP・改定値 前期比年率 (速報 4.9%、予想 5.0%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費・改定値 前期比年率 (速報 4.0%、予想 4.0%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE・改定値 前期比年率 (速報 2.4%、予想 2.4%)
24:05 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

11/30(木)
OPECプラス閣僚級会合
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -4.7%)
08:50 (日) 10月 小売業販売額 前年同月比 (9月 5.8%、予想 5.9%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前月比 (9月 0.5%、予想 0.7%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (9月 -4.4%、予想 4.4%)
09:00 (NZ) 11月 ANZ企業信頼感 (10月 23.4)
09:30 (豪) 7-9月期 民間設備投資 前期比 (4-6月 2.8%、予想 1.0%)
09:30 (豪) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -4.6%、予想 1.4%)
10:30 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 49.5、予想 49.6)

14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 35.7、予想 35.6)
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -6.8%、予想 -7.0%)
14:30 (日) 中村日銀審議委員、記者会見
17:55 (独) 11月 失業者数 前月比 (10月 3.00万人、予想 2.25万人)
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.8%、予想 5.8%)
19:00 (欧) 11月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (10月 2.9%、予想 2.7%)
19:00 (欧) 11月 コアHICP・速報値 前年同月比 (10月 4.2%、予想 3.9%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 6.5%、予想 6.5%)

22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.9万件、予想 21.8万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 184.0万人、予想 186.8万人)

22:30 (米) 10月 個人所得 前月比 (9月 0.3%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 PCE(個人消費支出) 前月比 (9月 0.7%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 PCEデフレーター 前年同月比 (9月 3.4%、予想 3.1%)
22:30 (米) 10月 コアPCEデフレーター 前月比 (9月 0.3%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 コアPCEデフレーター 前年同月比 (9月 3.7%、予想 3.5%)
23:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部景況指数 (10月 44.0、予想 46.0)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 1.1%、予想 -0.9%)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前年同月比 (9月 -13.1%)


注:ポイント要約は編集部

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