対ドルでは最安値近辺の推移、ドル円は150円手前で上値重く5営業日続落
〇トルコ円、10/19午前安値5.31から10/20日未明高値5.36へ戻すも、10/20午前に一時的に5.30へ反落
〇終値ベースでは10/13からわずかずつ5営業日続落
〇対ドル、10/19は概ね28.19から27.77の取引レンジ、最安値更新は回避したが最安値近辺での推移
〇昨日発表のトルコ外貨準備高は増加、直近のピークである昨年12月へ徐々に迫る
〇パレスチナ・イスラエル戦争の終結が見えない状況、地政学的リスクはリラを圧迫
〇5.36を下回るうちは一段安余地ありとし、5.30割れからは5.28、5.26を順次試す下落を想定する
〇5.36超えからは、5.37と5.38を試す上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の10月19日は概ね5.36円から5.31円の取引レンジ、20日早朝の終値は5.35円で前日と変わらずだったが、小数点下三桁では18日の5.353円から5.349円へとわずかに下落しており、終値ベースでは10月13日からわずかずつ5営業日続落している。
ドル/トルコリラは10月18日に28.20リラまで史上最安値を更新し、19日は最安値更新へ進まなかったものの最安値近辺に付けており、リラの先安感は継続している。
一方でドル円は10月20日未明に149.95円を付けて10月3日夜に乱高下した後の高値を更新したが、150円乗せへの躊躇で上値が重く、149.70円台中心での小動きとなっている。10月3日夜に150.15円を付けてから数分で147.41円へ急落したのは高値警戒感による売り注文の連鎖反応と思われるが、10月17日夜にも日銀による物価見通し上方修正観測記事をきっかけとして149.69円から148.81円まで一時的に急落するなど市場の反落警戒感を反映した動きが繰り返されている。財務相や財務官による円安けん制発言のトーンが一段上がってきていること、日銀の物価見通し上方修正による金融緩和政策の正常化への動きが警戒され始めていることも上値を重くしている。
ドル円が150円突破から円安を加速させればトルコリラ円にとっては反騰入りへの追い風となるが、いったん仕切り直しで下落するようだとトルコリラ円にとってはドル高リラ安に円高も重なることとなりかねない。
【対ドルで史上最安値近辺を維持】
ドル/トルコリラの10月19日は概ね28.19リラから27.77リラの取引レンジ、20日早朝の終値は27.96リラで前日終値の28.00リラからは0.04リラのドル安リラ高だった。
8月24日のトルコ中銀による超大幅利上げ(7.5%利上げで週間レポレートを30.0%とした)をきっかけとして当日に27.27リラから25.02リラへドル安リラ高となったが、リラの先安感は継続として8月25日からドル高リラ安が再開し、8月4日安値27.34リラを9月22日に超えて史上最安値更新に入り、その後も連日のように最安値を更新して10月17日に28.04リラを付けて初めて28リラ台に到達し、18日には28.20リラへ史上最安値を更新した。終値ベースでは10月13日から18日まで4営業日連続で史上最安値を更新した。
10月19日は最安値更新を回避したものの最安値近辺での推移は続いており、20日午前は28.12リラから27.90リラのレンジで最安値更新を伺う位置に付けている。
【トルコ外貨準備高は増加】
10月19日夜にトルコ中銀が発表した週次の外貨準備高は10月13日時点のグロスで833.1億ドルとなり10月6日時点の831.5億ドルから増加し、ネットでは220.6億ドルとなり10月6日時点の207.4億ドルから増加した。
ネットの外貨準備高は6月序盤にマイナス57億ドルまで悪化したところから回復基調にあり、直近のピークである昨年12月の281.3億ドルへ徐々に迫っている。グロスの外貨準備高は6月序盤に565.2億ドルまで減少したところから回復基調にあり昨年12月の855.9億ドルに迫ってきている。
トルコ中銀はエルドアン大統領再選後に就任したエルカン新総裁により、トルコ中銀は外貨準備高を削ってリラ暴落を阻止しようとする市場介入を止めて為替レートは市場原理に基づくとし、2021年末に導入されたリラの為替差損を補填する保護預金制度を縮小させて外貨準備高増加を推進している。
外貨準備高の増加は長期的に見ればトルコの信頼感を高めるが、短期的には市場介入を行わないことでリラ安を放置することにもなる。エルカン総裁はトルコ議会において最近のリラ安は中銀が市場介入をしていない証だと主張している。
【中東情勢悪化による有事の金買い、地政学的リスクはリラを圧迫】
10月7日のパレスチナ・ガザ地区を実効支配するハマスによるイスラエルへの大規模攻撃とイスラエル側の報復を発端としてパレスチナ・ハマスとイスラエルは戦争状態に突入した。
10月17日にはガザ地区の病院が攻撃されて死者数百人が発生、イスラエルは自身の攻撃ではないとしているがアラブ諸国のみならず西側での反イスラエル抗議行動も活発化している。
10月19日にイスラエルのガラント国防相はガザ境界に集結しているイスラエル地上軍に対して「ガザを内側から見る日は近い」と述べて大規模な地上戦突入が近いことを示唆した。10月19日にはイエメンの反政府勢力フーシ派がイスラエル近海に展開する米海軍へ巡航ミサイルやドローンを使った攻撃を仕掛けた。イランに支援されているレバノンの武装勢力ヒズボラはイスラエルと交戦状態にあるが、イランは中東産油国によるイスラエルへの石油禁輸を呼び掛けている。
パレスチナ・イスラエル戦争の終結が見えないこと、周辺への飛び火懸念による地政学的リスクの増大、新たな難民問題や諸国が抱えている反政府勢力の動向などの不安要素は尽きず、暫くはトルコリラへの売り圧力も続きやすいと思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、10月16日夜に弱気転換目安とした5.36円を割り込んだために17日午前時点では16日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は19日未明から21日未明にかけての間へ延びる可能性があるとした。
10月19日午前安値5.31円から20日未明高値5.36円へ戻したが、20日午前には一時的な安値で5.30円を付ける反落も見られているため、19日午前安値を直近のサイクルボトムとし、すでに20日未明高値5.36円でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りしている可能性が高いとみる。
5.36円超えへ反騰する場合は19日午前安値を起点とした強気サイクルの継続として20日の日中から23日午前にかけての間への上昇を想定するが、連続的に5.31円を割り込む場合は弱気サイクル入りとして24日午前から26日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では10月20日未明への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、その後の反落で遅行スパンは悪化しやすい位置にあり、先行スパンへの余裕も乏しいい。
先行スパンを上回るうちは上昇再開余地ありとするが、連続的な下落で先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は10月20日未明への上昇では60ポイントに届かず20日午前には50ポイントを割り込んでいるので下向きとし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.30円を下値支持線、5.36円を上値抵抗線とする。
(2)5.36円を下回るうちは一段安余地ありとし、5.30円割れからは5.28円、5.26円を順次試す下落を想定する。5.26円以下は反騰注意とするが、5.33円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.36円超えからは5.37円と5.38円を試す上昇を想定するが、5.37円以上は反落警戒とみる。
【当面の主な予定】
10月20日
23:30 9月 中央政府債務残高 (8月 5兆8800億リラ)
10月23日
16:00 10月 消費者信頼感指数 (9月 71.50)
10月25日
16:00 10月 製造業信頼感指数 (9月 104.4)
10月26日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 30.0%)
20:30 週次 外貨準備高 10月20日時点 グロス (10月13日時点 8313.1億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 10月20日時点 ネット (10月13日時点 220.6億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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