ドル円見通し 米10年債利回り上昇で150円に迫るも高値警戒感で届かず
〇昨日のドル円、NY時間に149.95を付けるも150円乗せには慎重姿勢続き、ドル買いが勢い付かず
〇パウエルFRB議長、追加利上げにも利上げ見送りにも含み持たせる発言
〇昨日発表の米経済指標はまちまちの結果
〇FRB議長発言を巡り10年債と30年債利回りは上昇、2年債利回りは低下、米株価は続落
〇149.50以上での推移中は上昇余地あり、150円到達後の急落には注意
〇149.50割れからはいったん仕切り直しの下落期に入るとみて、149.00前後への下落を想定する
【概況】
ドル円はNY時間に149.95円を付けて10月3日の乱高下以降の高値を更新したが、150円到達後の急落経験から150円乗せには慎重姿勢を続け、米10年債利回りが2007年以来の5%台に到達する上昇だったもののドル買いが勢い付かなかった。
米FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は19日に「政策金利水準は十分高くないかもしれない」と述べて追加利上げの可能性を示唆したものの、最近の長期金利上昇が政策金利を引き上げる必要性を低下させている可能性があると述べた。追加利上げと利上げ見送りの狭間にいる印象だったため、米10年債利回りは上昇したが利上げに敏感な2年債利回りが大幅低下したためにドル円の上昇には弾みとならなかった。
今週に入ってから日銀が物価見通しを上方修正する可能性や元日銀審議委員のマイナス金利解除への言及、神田財務官らによる市場介入を含めた円安けん制姿勢もあり、10月3日夜に150.15円を付けてから数分で147.41円へ急落し、10月17日にも一時148.81円まで反落するなど、下ブレへの警戒感も大きいところだ。
【パウエルFRB議長、追加利上げにも利上げ見送りにも含み持たせ曖昧】
米FRBのパウエル議長は19日の会合において、「米景気は非常に強い」とし、「追加利上げの是非や金融引き締めの期間を指標やリスクに基づいて決める」と述べた。議長は利上げにもかかわらず米国の成長率が2%を上回って推移していることは「驚き」とし、「政策金利水準は十分高くないかもしれない」とし、「インフレを持続的に2%へ低下させるため十分に景気抑制的な政策スタンスで取り組む」、成長率や労働市場の堅調さ等による「追加的な証拠」があれば「一段の金融引き締めは妥当となる可能性がある」とした。しかしその一方で長期金利上昇によりFRBが一段の利上げを行う必要が低下したのではないかとの質問に対して「原則的にはその通りだ」と述べている。
フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は19日に、インフレ再燃の兆しがあれば利上げ打ち止めを支持する自らの見解を見直す用意があると述べている。FRB高官や地区連銀総裁らの最近の発言では長期金利上昇が政策金利の引き上げを代替しているとして追加利上げにやや消極的なハト派姿勢も見られるが、インフレが鈍化しているもののまだ水準そのものは高いことから利上げ終了を積極的に示す状況でもないということだろう。
FRBは10月31-11月1日に次回FOMCを開催するが、市場は現状維持と予想している。12月FOMCでの利上げ確率は4割弱から3割程度とみている。
【10月19日の米経済指標はまちまち】
米労働省による新規失業保険申請件数は10月14日までの週間で前週比1万3000件減少の19万8000件となり4週ぶりに改善し、市場予想の21万2000人を下回った。1週遅れの失業保険受給者総数は10月7日までの週間で173万4000人となり、前週から2万9000人増加して市場予想の171万人を上回った。
米フィラデルフィア連銀による10月製造業景況指数はマイナス9.0となり、9月のマイナス13.5から改善したが市場予想のマイナス6.6を下回った。価格関連では支払価格が9月の25.7から23.1へ低下、受取価格は14.8から14.6へ若干低下した。
米コンファレンス・ボード(CB)による9月の米景気先行指数は104.6となり、8月から0.7%低下して市場予想の0.4%低下を下回った。一致指数は前月比0.3%上昇、遅行指数は0.2%上昇だった。CBは「利上げやインフレ圧力にもかかわらず米経済は現時点で相当な底堅さを見せている」としたが、「この傾向は長続きせずに来年前半には緩やかな景気後退に入るだろう」との見通しを示した。
米不動産業者協会(NAR)による9月中古住宅販売件数(年換算)は前月比2.0%減の396万戸となり、市場予想の389万件を上まわったものの4か月連続のマイナスだった。
【米長期債利回りはまちまち、ダウは続落】
パウエルFRB議長発言を巡り、10月19日の米長期債利回りの反応は分かれた。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.08%上昇の4.99%となったが、一時は5.001%をつけて2007年7月以来の5%台到達となり、10月16日からの連騰を続けた。
30年債利回りは0.12%上昇の5.11%となり10月16日から連騰した。
10年債と30年債はパウエルFRB議長の追加利上げへの含みを持たせる発言から上昇したが、利上げに敏感な2年債利回りは議長の「長期金利上昇による政策金利引き上げの必要性低下」への同意発言に反応し、一時5.26%まで上昇してから低下に転じて前日比0.06%低下の5.16%で終了した。
一方で、NYダウは米10年債利回り上昇と中東情勢深刻化を嫌って前日比250.91ドル安と下落、18日の332.57ドル安から続落となり、ナスダック総合指数も128.12ポイント安で18日の219.45ポイント安から続落した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は10月17日夜に148.81円へ急落してから18日未明に149.85円まで反騰したため、17日夜安値を目先の底とした上昇期として高値形成期を20日未明にかけて想定した。
NY時間に149.95円まで高値を伸ばしたものの150円に届かずやや失速気味のため、いったん調整安に入りやすいところとみて、149.50円割れからは下落期入りとして24日夜にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では150円手前での揉み合いのため方向感に欠ける。150円超えから続伸の場合は遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、149.50円割れからは下向きとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は50ポイントを挟んだ揉み合いのため、60ポイント超えから続伸の場合は上昇が勢い付くとみて70ポイント台中盤への上昇を想定するが、40ポイント割れからは下落期入りとして30ポイント割れを試す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、149.50円を下値支持線、150.00円を上値抵抗線とする。
(2)149.50円以上での推移中は上昇余地ありとみる。150円到達後の急落には注意がいるが、150円超えからはから10月3日夜高値150.15円試し、さらに150.50円を目指す可能性もあるとみる。
(3)149.50円割れからはいったん仕切り直しの下落期に入るとみて149.00円前後への下落を想定する。149円以下は反騰注意とするが、勢い付く場合には148円台後半(148.85円から148.50円)へ下値目途を引き下げる。149.50円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
10/20(金)
米EU首脳会談
15:00 (独) 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 0.3%、予想 0.4%)
15:00 (英) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.4%、予想 0.2%)
15:00 (英) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 -1.4%、予想 -0.1%)
15:00 (英) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 0.6%、予想 -0.4%)
15:00 (英) 9月 小売売上高・徐自動車 前年同月比 (8月 -1.4%、予想 -0.2%)
22:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
25:15 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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