『上下しつつも方向感を見出せず。来週はトルコ中銀会合に注目』
今週のレビュー(1/10−1/14)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初8.33円で寄り付いた後、@世界的なリスク回避ムードを背景に、週明け早々に週間安値8.20円まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、Aトルコ政府によるリラ建て預金保護措置の適用範囲拡大(企業の外貨預金口座や金預金口座も対象)や、Bアラブ首長国連邦の政府系ファンドADQのCEOによる「リラ安によるトルコ資産の下落は長期的にみれば絶好の買い時」との発言(オイルマネーの流入期待)、C注目されていたパウエルFRB議長証言が予想された程タカ派的では無かったことに伴う安堵感、D米12月消費者物価指数が市場予想の範囲内に収まったことに伴う米金融政策の正常化前倒し観測の後退(米長期金利低下→リスク回避ムード後退)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値8.71円まで上昇しました。もっとも、引けにかけては、Eエルドアン大統領による「できるだけ早期に物価を引き下げる」との発言や、F移民対策を巡るトルコEU関係の悪化懸念などが重石となり、本稿執筆時点(日本時間1/15午前4時55分現在)では8.46円前後で推移しております。
来週の見通し(1/17−1/21)
トルコリラの対円相場は8円台での方向感に欠ける値動きが続いております。但し、@ローソク足が主要チャートポイントの下側に位置していること(上方にレジスタンスポイントが複数並んでいること)や、A強い売りシグナルを示唆するパーフェクトオーダーが継続していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、上値余地は乏しい(リスクは引き続きダウンサイド)と判断できます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@エルドアン大統領の求心力低下(今月の世論調査によると、エルドアン氏の支持率は38.6%と2015年以降で最低水準)や、Aトルコ中銀による追加利下げ観測(トルコ中銀はエルドアン大統領の圧力のもと、インフレを利下げで抑制する独特なロジックを展開。事実インフレが加速する中、トルコ中銀は昨年9月以降で計500bpの利下げを実施済み)、B米FRBによるタカ派スタンス(今週は複数の米当局者より3月利上げに前向きな発言)、Cトルコ経済の先行き不透明感(深刻なスタグフレーション懸念。世界銀行は2022年の同国経済成長率予測を4.5%から2.0%へ下方修正。2023年の同国経済成長率予測も4.5%から3.0%へ下方修正)、Dトルコ中銀による外貨準備急減(脆弱な通貨防衛能力への警戒感)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。 尚、来週は1/20に予定されているトルコ中銀金融政策決定会合に注目が集まります。政策金利は14.00%で据え置かれる公算が大きいものの、エルドアン大統領は今週も「インフレ抑制」に前向きな発言を行っているため、一部では声明文や記者会見で追加利下げを滲ませる発言が出てくるとの見方も根強く残っています。この為、来週はトルコ中銀の金融政策の先行きを巡って週後半以降にボラティリティが一気に高まる恐れがありそうです。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.50ー9.00
トルコ円日足
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