『ドル円は約3週間ぶり安値圏へ急落。但し続落余地は乏しいか』
〇今週のドル円、週初115.86まで上昇するも週末にかけ113.49まで急落
〇パウエルFRB議長議会証言の内容が予想ほどタカ派の内容でなかったこと
〇米CPIが高水準ながら予想通りだったことに加え、PPI、小売売上高も予想下回る数値
〇これらを受けてドル買いポジションの巻き戻しが発生、ドル全面安へ
〇ユーロドル、約2ヵ月間続いた1.1200ー1.1400のコアレンジを上抜け1.1483まで急伸
〇ドル円、テクニカルの地合い悪化するも、一目均衡表の「雲」が下方にあり下値余地乏しい
〇ファンダメンタルズもドル高・円安トレンドの継続を示唆する材料が揃う
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):113.00ー115.50、(EURUSD):1.1300−1.1500
今週のレビュー(1/10−1/14)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初115.64で寄り付いた後、早々に週間高値115.86まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、@前週末金曜日の米雇用統計後のドル売りの流れ(米非農業部門雇用者数が市場予想を下回る冴えない結果)や、A株価急落に端を発したリスク回避の円買い圧力、B中国恒大集団を巡る先行き不透明感(広東省深セン市の本社ビルから恒大集団の看板が撤去されたとの観測報道)、C注目されたパウエルFRB議長証言が予想された程タカ派的ではなかったことに伴う安堵感(パウエル氏はインフレ抑制への強い姿勢を示しつつも、利上げのタイミングや回数はデータ次第との姿勢を崩さず)、D米12月消費者物価指数(結果7.0%、予想7.0%、前回6.8%、※前年同月比)が約40年ぶり高水準を記録しつつも市場予想の範囲内に収まったこと、
E米12月生産者物価指数(結果9.7%、予想9.8%、前年同月比)の市場予想を下回る結果、F上記DEを背景としたインフレ沈静化期待(米利上げ観測後退→米長期金利低下→米ドル売り)、Gテクニカル的な地合いの悪化(ローソク足が心理的節目115.00や114.00の大台を割り込むと共に、主要サポートポイントを軒並み下抜け)、Hロイター通信による「日銀はインフレ2%目標の達成前に利上げを開始できるか議論している」との観測報道、I米12月小売売上高(結果▲1.9%、予想0.0%、※前月比)の冴えない結果が重石となり、週末にかけて、12/20以来、約3週間ぶり安値となる113.49まで急落しました。もっとも、一目均衡表雲上限に続落を阻まれると、引けにかけて持ち直し、本稿執筆時点(日本時間1/15午前5時10分現在)では、114.13前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1353で寄り付いた後、@欧州圏における新型コロナウイルス・オミクロン株の感染拡大懸念や、A欧米金融政策の方向性の違い(米10年債利回りが一時1.80%台まで急上昇)、B株式市場の軟調推移(リスク回避のドル買い・円買い)、Cウクライナを巡る地政学的リスク(重要イベントを控えた警戒感)が重石となり、週明け早々に週間安値1.1285まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、DラガルドECB総裁による「物価上昇を非常に深刻に懸念している」との発言や、Eナーゲル独連銀総裁による就任演説での「インフレ高進は一概には一時的とは言えない」との発言、F上記DEを背景としたECBのハト派スタンスの後退観測、G米金利低下に伴うドル売り圧力(パウエルFRB議長証言が予想された程タカ派的ではなかったことや、米消費者物価指数が市場予想の範囲内に収まったことなどが背景)、
H欧州株の堅調推移、Iテクニカル的な買いシグナル点灯(約2ヵ月間続いた1.1200ー1.1400のコアレンジを上抜けたことに伴うストップBUY)、JデギンドスECB副総裁による「ユーロ圏のインフレ加速は従来考えていたような一時的なものでない」「今年のインフレ率は予想を上回るリスクがある」とのタカ派的な発言が支援材料となり、週末にかけて、昨年11/11以来、約2ヵ月ぶり高値となる1.1483まで急伸しました。もっとも、引けにかけては、K米長期金利の再上昇(米金利上昇→米ドル高)や、L米主要株価指数の下落(米株下落→リスク回避の米ドル買い)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間1/15午前5時10分現在)では、1.1418前後で推移しております。
来週の見通し(1/17−1/21)
<ドル円相場>
ドル円は1/4に記録した約5年ぶり高値116.36をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約3週間ぶり安値となる113.49まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線や、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線も下抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、ダウンサイドには市場参加者に注目されている一目均衡表「雲」が控えているため、ここからの更なる続落は容易では無いと考えられます(下値余地は限定的)。事実、今週末は悪材料噴出にも係わらず、雲上限を割り込むことが出来ませんでした(同水準にサポートされる形で引けにかけて反発)。来週はポジション調整一巡後の反発リスクに警戒が必要でしょう。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米金融政策の正常化前倒し観測(今週はリッチモンド連銀バーキン総裁やクリーブランド連銀メスター総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、カンザスシティ連銀ジョージ総裁、シカゴ連銀エバンス総裁など複数の米当局者から「3月利上げ」の地均し発言が相次ぐ結果)や、A本邦の金融緩和長期化観測(米国とは対象的に本邦では金融緩和の長期化が見込まれると共に、黒田総裁は昨年12月の日銀金融政策決定会合後の記者会見で更なる円安を容認。今週はロイター通信より「日銀はインフレ2%目標の達成前に利上げを開始できるか議論している」との観測報道が出るも実現へのハードルは高い)、B上記@Aを背景とした日米金融政策格差など、ドル高・円安トレンドの継続を示唆する材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、今週末よりブラックアウト期間に突入するため、来週は米当局者発言が予定されておりません。また、米経済指標も目立ったものが見当たらないことから、来週は1/18の日銀金融政策決定会合(含む展望レポート)に注目が集まりそうです。特に1/14に「日銀はインフレ2%目標の達成前に利上げを開始できるか議論している」との観測報道が流れているため、展望レポートでの物価上昇率見通しの上方修正や、黒田総裁記者会見などに警戒が必要でしょう(ハト派スタンスの継続が示される場合などには、円高の巻き戻しが発生する恐れがあるため、黒田総裁記者会見後のドル円のアップサイドリスクに要注意)。
来週の予想レンジ(USDJPY):113.00ー115.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は週央以降に急伸し、約2ヵ月間に亘り続いた1.1200ー1.1400のレンジ相場を上抜けしました(週末にかけて11/11以来、約2ヵ月ぶり高値となる1.1483へ急上昇)。この間、一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線やボリンジャーミッドバンドを上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となりつつあります。目先は1.14台後半に控える90日移動平均線をクリアに上抜けられるか否かに注目が集まりそうです。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@欧州経済の先行き不透明感(欧州圏における新型コロナウイルス感染拡大状況)や、A欧米金融政策の方向性の違い(早期利上げが織り込まれつつある米国と、金融緩和の長期化が見込まれる欧州との金融政策格差)、Bウクライナを巡る地政学的リスク(欧州安保協力機構はロシア軍がウクライナ国境付近に部隊を集結している問題について協議するも、欧米とロシアの溝は埋まらず)など、ユーロドルの下落を想起させる材料が残っています。
こうした中、来週は上記@とAの材料を見極める上で、1/18のドイツZEW景況感調査や新型コロナウイルス感染拡大状況のヘッドライン、1/20のECB理事会議事要旨に注目が集まります。ドイツZEW景況感調査が冴えない結果となる場合や、ECB理事会議事要旨でハト派的な姿勢が確認される場合などには(※一部ではハト派姿勢が後退しているとの見方が出ていることから、そうした見方を否定する内容となればユーロの売り戻しが活発化する可能性あり)、欧州経済の先行き不透明感と、ECBによる金融緩和長期化観測を通じて、ユーロドルには再び下落圧力が加わるものと推察されます。以上を踏まえ、当方は引き続き、ユーロドル相場の下落(ポジション調整一巡後の反落)をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1300−1.1500
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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