ドル円の反発に合わせて持ち直し、今夜の米CPI発表へ向かう
〇トルコリラ円、4/11夜にかけての円高局面で6.89まで下げるも4/12未明ドル円反騰で6.94まで切り返す
〇対ドル、11日終値19.28リラで最安値を更新。リラ安が勢い増す
〇エルドアン大統領、物価上昇率を1桁台に下げ、成長を上向かせるとした与党公正発展党選挙公約を発表
〇最新世論調査の支持率、野党統一候補クルチダルオール氏42.6%、エルドアン氏41.1%再選危ぶまれる
〇4/11発表されたトルコ2月鉱工業生産、前月比6.0%減となり1月の2.0%増から大幅に悪化
〇6.89以上での推移中は上昇余地あり、6.95超えからは6.97前後への上昇を想定
〇6.89割れからは下落期入りとして6.87から6.85にかけての水準を試す下落を想定
【概況】
トルコリラ円の4月11日は概ね6.94円から6.89円の取引レンジ、12日早朝の終値は6.93円で前日終値と変わらずだった。
ドル円の騰落を追いかける展開だが、ドル円は4月10日夜の植田日銀新総裁就任会見における大規模金融緩和政策継続姿勢とドル高優勢の流れにより10日夕刻安値131.99円から10日深夜高値133.86円へ上昇して4月3日高値133.74円を上抜き3月24日安値129.63円以降の高値を更新し、11日夜にかけてはユーロやポンドが上昇してドル安感がぶり返したために132.93円まで反落したが、12日未明にかけては米10年債利回りの反発もあり133.80円まで切り返した。
トルコリラ円は4月10日深夜にかけての円安局面で直前安値6.85円から深夜高値6.95円へ上昇したものの4月3日高値6.96円には一歩届かず、11日夜にかけての円高局面で6.89円まで下げたものの12日未明へドル円が反騰したために6.94円まで切り返した。
やや乱調な動きが続いているが、今夜の米3月CPI上昇率がインフレ鈍化を顕著に示すならドル全面安へ向かいドル円の下落と共にトルコリラ円が急落商状に陥る可能性があり、逆にインフレの高止まりによりFRBの利上げ継続感が強まればドル全面高となりドル円の一段高に合わせてトルコリラ円も大幅上昇へ進む可能性があると注目される。
【対ドルでは終値ベースの最安値更新続く】
ドル/トルコリラの4月11日は概ね19.31リラから19.09リラの取引レンジ、12日早朝の終値は19.28リラで前日終値の19.27リラから0.01リラのドル高リラ安だった。
4月11日は欧州長期債利回り上昇が米長期債利回りの上昇を上回る展開でユーロやポンドが上昇してドル安感が強まったものの、ファンダメンタルズが悪く長期的なリラ安基調で推移しているトルコリラへの影響は乏しく、16時発表のトルコ2月鉱工業生産が予想を下回る悪化となったこともあってリラ安を継続した。
手元のデータでは4月7日につけた19.45リラが取引時間中の史上最安値でありその後は新たな安値更新へ進んでいないものの、終値べースでは4月10日終値19.27リラを超えて11日終値19.28リラで最安値を更新した。日々の高値と安値は少数出来高によるイレギュラー気味の高安提示によりブレが大きいものの、取引中心レンジと日足の終値は3月に入ってからリラ安が勢いを増している状況にある。
2月6日のトルコ南部大地震、2月23日のトルコ中銀による利下げ、経常収支や貿易収支及び財政収支が過去最悪水準を更新してきたこと、中央政府債務残もうなぎ上りであり、米銀破綻を発端とした信用不安の発生とその後の銀行融資条件の悪化も影響し、5月14日の大統領選挙を挟んでの混乱も懸念されるために当面はリラ安がさらに勢いを増す状況にあると注意したい。
【エルドアン大統領、再選めざし選挙公約】
エルドアン大統領は4月11日に与党公正発展党(AKP)の選挙公約を発表、物価上昇率を1桁台に下げ、成長を上向かせるとした。大統領は首都アンカラの集会で「我々はインフレを1桁台に戻し、この問題から国家を間違いなく救い出す」と述べ、「2024年から2028年にかけての年間成長率を5.5%とし、2028年末までにGDPの1兆5000億ドル達成を目指す」とした。
AKPの選挙公約に対しては、エルドアン大統領が行ってきた高インフレ進行中の利下げ強行といった主要国の主流経済理論と一線を画す異説型の政策姿勢から正当派への転換が期待されていたが、11日に発表された選挙公約では経済政策の路線変更への言及はなかった。
野党が統一候補を樹立しクルド人政党も独自候補擁立を見送ったことにより統一候補のクルチダルオール氏とエルドアン現大統領の一騎打ちとなるが、最新の世論調査における支持率はクルチダルオール氏が42.6%、エルドアン氏が41.1%となり再選が危ぶまれている。
エルドアン大統領再選なら従来の政策継続により先行き不透明感は増し、政権交代なら大胆な経済政策変更による希望よりも混乱を招く可能性があり、いずれの場合もリラ安が続くのではないかと思われる。
【トルコ鉱工業生産は悪化】
4月11日に発表されたトルコの2月鉱工業生産は前月比6.0%減となり1月の2.0%増から大幅に悪化、前年同月比は8.2%減で1月の4.6%増から大幅に悪化した。
2月6日に発生したトルコ南部大地震による影響で工業地帯の被害が影響したとされるが、前月比は2022年7月の6.7%以来の低水準となり、前年同月比はパンデミック発生による2020年4月の31.5%減及び同年4月の18.0%減以来の悪化水準となった。
鉱工業生産の伸び率はGDP伸び率にも直結するため、2023年1-3月期のGDPが昨年後半の鈍化からさらに落ち込む可能性を示唆している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月5日夜安値を起点とした上昇が4月10日深夜高値への急伸で一巡となりいったん弱気サイクル入りしたと思われるが、12日未明への反騰により11日夜安値で直近のサイクルボトムをつけて既に新たな強気サイクルに入ったと思われる。
ただし、4月10日深夜とのダブルトップ形成に終わる可能性もあると注意し、11日夜安値割れを回避するうちは13日夜から17日深夜にかけての間への上昇余地ありとするが、11日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして14日夜から18日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では4月10日夜の急伸と11日夜への反落及びその後の反騰により遅行スパンは実線と交錯して方向感に欠けるが、先行スパンを上回る状況を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし、先行スパンから転落する場合は下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は4月11日夜に40ポイント台へ低下してから戻したが、60ポイント前後が抵抗となっている。次の60ポイント超えからは上昇継続とみて70ポイントを試す流れと考えるが、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.89円を下値支持線、6.95円を上値抵抗線とする。
(2)6.89円以上での推移中は上昇余地ありとし、6.95円超えからは6.97円前後への上昇を想定する。6.97円以上は反落注意とするが、円安が勢い付く場合等では7.00円に迫る上昇の可能性もあるとみる。また6.92円以上での推移か、直前高値から0.05円を超える反落が発生しないうちは13日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.89円割れからは下落期入りとして6.87円から6.85円にかけての水準を試す下落を想定する。6.85円以下は反騰注意とするが、下げ足が速まる場合は6.83円前後へ下値目途を引き下げる。また6.89円以下での推移なら13日の日中にかけても安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な予定】
4月12日
16:00 2月 小売売上高 前月比 (1月 5.4%)
16:00 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 33.9%)
4月13日
20:30 週次 外貨準備高 4月7日時点 グロス(3月31日時点 702.5)
20:30 週次 外貨準備高 4月7日時点 ネット(3月31日時点 184.7)
4月17日
17:00 3月 財政収支 (2月 -1705.6億リラ)
注:ポイント要約は編集部
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