ポジション偏るも基本はドル高継続か(週報5月第5週)

先週のドル/円相場はドルが大きく続伸。昨年11月以来、半年ぶりの140円台を回復し、週末NYもそのままドル高値圏で大引けた。

ポジション偏るも基本はドル高継続か(週報5月第5週)

ポジション偏るも基本はドル高継続か

〇先週のドル円、半年ぶりの高値140.73を示現し週末NYも高値圏、140.60レベルで取引を終え越週
〇先週発表された米GDP改定値やPCEデフレーター等の重要指標が良好、ドルの支援要因に
〇米通貨当局者など要人からタカ派発言が連発、追加利上げ観測が再燃
〇今週は米国で重要指標の発表相次ぐ、さらなるドル高要因となるか
〇フィボナッチでみた次のターゲット142円半ばが現実的な射程範囲内に、更なる上値トライにも要注意
〇ドル安・円高方向は、先週末安値の139.50をめぐる攻防に注目、138円後半などでは底堅そう
〇今週のドル円予想レンジは、138.50-142.50

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが大きく続伸。昨年11月以来、半年ぶりの140円台を回復し、週末NYもそのままドル高値圏で大引けた。

前週末は、日本で実施されたG7広島サミットが色々と話題に。一方、21日に再開された米債務上限問題をめぐる与野党協議はまたもや物別れに終わったと発表されている。
そうした状況下、ドル/円は137.90-95円で寄り付いたのち、週間を通して「寄り付き安・大引け高」の様相。週間安値137.50円を早々に付けたのちは緩やかな右肩上がり。途中、139円手前では一時上げ渋る局面も見られたが、上抜けるとそのまま一気に140円台へ。半年ぶりの高値となる140.73円を示現し、週末NYもそのままドルは高値圏。140.60円レベルで取引を終え越週となった。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「米債務上限問題」と「米金融政策」について。
前者は、G7広島サミット期間中の21日にバイデン米大統領と野党共和党のマッカーシー下院議長による電話会談が実施されたことを皮切りに、翌日は両氏が直接会談。また与野党担当者による協議が以降も連日実施されたが、結局合意に達するには至っていない。ただバイデン氏、マッカーシー氏ともに先行きには楽観的な見通しを示していることで、為替市場におけるドル売りに歯止めがかかっているようだ。その一方、格付け会社フィッチが米格下げの可能性を示したことが金融市場で一時大きな話題に。また、そののちは単なる資金不足・資金枯渇だけでなく、米国の信用力低下などへ波及的悪影響も取り沙汰され、一部においては警戒感がさらに喚起されていた感もある。なお、当初「Xデーは6月1日」と指摘していたイエレン財務長官だが、週末に発言を軌道修正。新たなXデーは「6月5日」になったという。

対して後者は、先週発表された米経済指標、なかでも重要とされるものは良好な内容のものが多く、ドルの支援要因に。幾つか例を挙げると、1-3月期GDP改定値や4月のPCEデフレーター、5月のミシガン大消費者信頼感指数などが予想を上回っている。それもあってか、米通貨当局者など要人からもタカ派発言が連発で聞かれ、たとえば週の半ば24日にウォラーFRB理事からは「6月のFOMCで利上げを見送る可能性はあるものの、利上げ局面を終了させる公算は小さい」との認識が示され、ドルの買い要因に。その後もクリーブランド連銀総裁から「物価の上昇圧力は非常に高く、政策金利が5%を上回る水準とすることをなおも支持」といった発言が聞かれ、追加利上げ観測が再燃していたようだ。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円相場は連日の高値更新。ドル高が止まらず、週末にはついに140.73円まで値を上げている。何度か取り上げている、昨年高値151.94円を起点とした大きな下げ幅のフィボナッチでみた次のターゲットは61.8%戻しの142円半ば。到達には時間がかかるかもと考えていたのだが、気が付くと同レベルまで2円もなく、現実的な射程範囲内へと捉えられてきた。短期的には行き過ぎの感を否めず、実際にポジションもかなり偏ってはいるが、リスクそのものはドル高方向にバイアス。さらなる上値トライにも要注意だ。

注目材料のひとつ米金融政策については、「年内利下げ観測」が後退したことに続き、追加利上げ観測もジワリと高まってきた。先で取り上げたウォラーFRB理事発言もあり、仮に6月FOMCで利上げが見送られても、以降の会合で「再び利上げが実施される」といった見方も取り沙汰されているようだ。いずれにしても、基本的にはドルの支援要因に。一方、米債務上限問題はこの週末に、「バイデン大統領とマッカーシー下院議長が基本合意」とのニュースが伝えられている。加えて、マッカーシー氏は31日に議会で採決すると表明したとされ、最悪期は脱したか。まだ若干の不安要素はあるにせよ、こちらもドルの支援要因か。

テクニカルに見た場合、ドル/円は上方向に位置したテクニカルポイントを次々に上抜けたこともあり、リスクはドル高方向にバイアス。しかし、起点を11日の133.75円としても2週間で約7円の上昇をたどっている計算だ。またシカゴIMMの投機ポジションをみても円ショートはかなり規模で積み上がっていることも気掛かり。一時的ということであれば、140円を割り込み137-138円台まで下落する可能性もあるという見方も一部からは聞かれていた。

そうしたなか今週は、5月の消費者信頼感指数や同雇用統計など、先週に続き非常に重要な米経済指標の発表が相次ぐ。もちろん内容次第だが、先週は先でも指摘したように良好な指標が多くドル高の支援要因となっただけに、今週も同様の動きを期待する向きは少なくない。

そんな今週のドル/円予想レンジは、138.50-142.50円。ドル高・円安については、先週高値140.73円が最初の抵抗。超えると強い抵抗はしばらくなく、141円台に乗せるまではやや苦戦しそうだが、乗せてしまうとドルは大幅高をたどる危険性も。
対してドル安・円高方向は、先週末安値の139.50円をめぐる攻防にまずは注目。下回っても底堅く138円後半などではかなり底堅そう。ポジションは偏っているが、それでも大崩れは予想しにくい。

ポジション偏るも基本はドル高継続か

ドル円日足

注:ポイント要約は編集部

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