エルドアン氏再選でリラ安不安が拡大するも、目先はドル円追いかける展開
〇トルコリラ円、ドル円上昇に合わせ5/29午前序盤7.06を付け週末からやや高値を切り上げる
〇対ドル、5/26に1ドル20リラ台へと史上最安値を更新
〇エルドアン現大統領の再選を受け、5/29午前序盤19.90ー20.23の範囲で乱調な展開
〇ドル高リラ安に円安効果を半減させられ、トルコリラ円は高値切り上げへの勢い欠く
〇7.00以上での推移中は上昇余地あり、7.06超えからは7.08前後への上昇を想定
〇7.00割れから続落の場合は6.97試し、6.97割れからは6.90円台序盤(6.90ー6.93)を試す下落を想定
【概況】
トルコリラ円の5月26日は概ね7.05円から6.86円の取引レンジ、27日早朝の終値は7.03円で前日終値の7.02円から0.01円の円安リラ高だった。週間では5月19日終値6.89円から0.14円の円安リラ高となった。
対ドルでトルコリラが史上最安値を連日のように更新する中で、トルコリラ円はリラ安に圧迫されつつもドル円の上昇を見て戻り高値を切り上げてきた。
ドル円は5月26日の米4月PCE(個人消費支出)デフレーターが市場予想を上回ったことによるドル高で27日未明に140.72円へ上昇して年初来高値を更新し、トルコリラ円は26日午前から午後にかけて対ドルでリラ安が繰り返し試される中で6.86円近辺へ下落したものの、乱調な展開を通過するとドル円の上昇に合わせて持ち直し、27日早朝には7.05円まで戻した。
5月27日に米連邦政府債務上限を巡りホワイトハウスと野党共和党が原則合意に達して5月31日にも下院採決へ向かうと報じられたことで5月29日早朝にドル円は年初来高値を更新した。トルコ大統領選挙決選投票においてエルドアン現大統領が再選を果たしたことでドル/トルコリラは先安感が強まっているものの、トルコリラ円は一時6.97円へ反落したものの早々に切り返してドル円の上昇に合わせて29日午前序盤には7.06円を付けて週末からやや高値を切り上げている。
【1ドル20リラ台へ突入】
ドル/トルコリラの5月26日は概ね20.12リラから19.89リラの取引レンジ、27日早朝の終値は19.93リラで前日終値と変わらずだった。週間では5月19日終値19.80リラから0.13リラのドル高リラ安だった。月間では4月28日終値の19.45リラから5月26日終値時点の段階で0.48リラのドル高リラ安となっている。
5月28日のトルコ大統領選挙決選投票が迫る中でエルドアン現大統領が優勢との報道によりリラ売りが勢い付いてきたが、選挙戦中にエルドアン氏が再選の場合は利上げを行うと述べたことや5月25日に発表された週次の純外貨準備高が2002年以来のマイナス勘定となったことから26日は1ドル20リラ台へと史上最安値を更新した。
ベンダーによってレート提示には大きな開きがあるが、5月26日安値については1ドル20.47リラの提示もあり、終値ベースでは5月25日に19.98リラで史上最安値を更新し、26日も19.97リラとしているところもある。
エルドアン現大統領が再選したことを受けて5月29日午前序盤のドル/トルコリラは19.90リラから20.23リラの範囲で乱調な展開となっている。
【トルコリラは対ドルでどこまで下げるのか】
トルコ大統領選挙決選投票では開票率99.85%でエルドアン氏が52.16%、クルチダルオール氏が47.84%となり選管はエルドアン氏当選を発表した。1回目投票で3位となり5%強の得票率だったオアン氏がエルドアン氏支持を表明したことでエルドアン氏再選の可能性が高まっていたため、再選された結果についてはサプライズ感はなくある程度は織り込んだといえるが、内外投資家にとっては金融・経済政策の先行き不透明感、経常収支や財政収支の悪化、中央政府債務残高が過去最高へと急膨張し、純外貨準備高が2002年以来のマイナス勘定にまで激減し、高インフレが収まらない中でも選挙中に追加利下げ姿勢を強調したこと等、不安がいっぱいの状況にあり、今後のエルドアン発言等によってはリラ安が深刻化してゆく可能性が懸念される。
4月14日に金融大手JPモルガンはトルコ大統領選挙後の見通しとしてメインシナリオで1ドル=24〜25リラへ下落して年末には26リラへ続落するとし、より厳しいシナリオでは選挙後に1ドル=30リラへ向かう可能性もあるとしたが、そうした可能性も否定できないところだ。
【ドル円の年初来高値更新に対してトルコリラ円は3月8日高値に届く勢いに欠ける】
トルコリラ円は、昨年7月後半から3月後半にかけてドル円の騰落に合わせてきたものの、4月以降は騰落リズムを合わせてもドル円のような高値切り上げへ進めていない。
ドル円はすでに3月8日と5月2日の両高値による138円手前でのダブルトップ型の上値抵抗線を突破してさらに上昇しているが、トルコリラ円は3月8日高値7.29円に対して5月2日高値は7.08円にとどまっており、その後も5月2日高値を超えない範囲での推移が続いてきた。ドル高リラ安の勢いが円安効果を半減させてトルコリラ円の戻りを抑えてきたといえる。
トルコリラ円の日足は1月16日と3月24日が共に6.74円の安値でダブル底を形成している(ベンダーによってはすでに底割れしているものもある)が、4月以降は6.80円前後を支持線としつつも7円台を維持しきれない程度の動きにとどまっている。エルドアン政権継続によるリラ安を気にしつつも5月2日高値を超えて高値切り上げへ進めば、目先はドル円に合わせた展開として高値試しを続けやすくなるが、ドル高リラ安が深刻化する場合はドル円についてゆけずにリラ安に足を引っ張られる展開へと進みかねないと注意したい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月22日午後安値をサイクルボトムとして24日朝から26日朝にかけての間への上昇を想定していたが、5月26日早朝高値から6.90円割れへ反落したために26日午前時点では26日早朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして26日の日中から29日昼にかけての間への下落を想定した。また乱調な展開に注意し、6.98円超えからは26日早朝高値7.03円試しとし、高値更新からは強気サイクル入りとした。
5月26日午前から昼過ぎにかけて6.90円割れを繰り返す乱調な展開となってから26日深夜への上昇で26日早朝高値を超えて29日午前序盤も高値を切り上げているので、26日昼過ぎ安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして5月31日朝から6月2日朝にかけての間への上昇を想定する。
ただし、乱高下が続く可能性もあると注意し、7.00円割れからは弱気転換注意とし、6.97円割れからは弱気サイクル入りとして31日の日中から6月2日午後にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では遅行スパンが5月26日の日中に一時悪化したもののその後の反騰で好転し、先行スパンからいったん転落したものの上抜き返している。乱調な展開だが先行スパンを上回るうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とし、次に先行スパンから転落する場合は下落再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5月26日の下落時に30ポイントへ低下してから60ポイント超えへ反発し、その後も50ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとみるが、50ポイント割れを弱気転換注意とし、45ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.00円を下値支持線、7.06円を上値抵抗線とする。
(2)7.00円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとみる。7.06円手前は戻り売りも出やすいとみるが、7.06円超えからは7.08円前後への上昇を想定する。7.08円前後は反落警戒とするが、7.00円以上での推移なら30日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.00円割れから続落の場合は6.97円試しとし、6.97円割れからは6.90円台序盤(6.93円から6.90円)を試す下落を想定する。6.93円以下は反騰注意とするが、6.97円を割り込んでの推移なら30日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
5月29日
16:00 5月 経済信頼感指数 (4月 102.2)
5月30日
16:00 4月 貿易収支 (3月 -85.7億ドル)
5月31日
16:00 1-3月 GDP 前期比 (10-12月 0.9%)
16:00 1-3月 GDP 前年同期比 (10-12月 3.5%)
6月1日
16:00 5月 イスタンブール製造業PMI (4月 51.5)
20:30 週次 外貨準備高 5/26時点 グロス (5/19時点 588.3億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 5/26時点 ネット (5/19時点 -1.513億ドル)
6月5日
16:00 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 2.39%)
16:00 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 43.68%)
16:00 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 3.2%)
16:00 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 45.5%)
16:00 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 0.81%)
16:00 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 52.11%)
注:ポイント要約は編集部
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