米国利上げ継続見通しで上昇続くが、140円超えに対する高値警戒感も
〇ドル円、27日未明に140.72に高値切り上げ、26日夜の米4月PCEデフレーターの伸び加速が背景
〇今週は29日が米英休場だが、米重要指標の発表相次ぎ、結果次第でドル高勢い付く可能性も
〇米4月PCEデフレーターは前月比と前年比が共に予想上回り、IMFは米国に利上げ継続を勧告
〇昨年10月からの下落幅に対する半値戻し139.58を達成、3分の2戻し143.71を目指すか
〇140円以上での推移か割り込んでも回復するうちは141円超えから142円、143円を目指す上昇を想定
〇140円割れから続落の場合は5/26夕安値139.49試しとし、安値更新からは139円前後への下落を想定
【概況】
ドル円は5月25日の米GDP改定値が速報値から上方修正されたことをきっかけとしたドル買いにより26日早朝に140.22円へ到達、昨年11月以来の高値水準に乗せた後は、いったん利益確定売りに押されて26日夕刻には139.49円まで下げたが欧州入りから再び買われて上値試しが再開された。26日夜の米4月PCEデフレーターが前月比と前年比ともに伸びが加速したことで追加利上げの可能性が高まったため、27日未明には140.72円へ高値を切り上げた。
5月4日未明の前回FOMCを挟んだドル安により5月5日未明に133.46円へ下落し、急落一服で買い戻されたところから5月10日の4月CPIと11日の4月PPIの鈍化により再び売られたものの5月11日夜安値は133.74円にとどまって5月5日未明安値割れを回避した。その後は米FRB高官や地区連銀総裁らの利上げ継続姿勢を強調するタカ派発言が相次ぎ米経済指標も強めだったことで5月19日早朝に138.74円へ上昇して5月2日高値137.76円及び3月8日高値137.91円を上抜いた。
5月19日のパウエルFRB議長発言が利上げ停止に含みを持たせる内容だったことで137.42円まで下げたところから上昇再開に入り、先週も利上げ継続姿勢や6月に利上げを見送っても7月に利上げすべきとのFRB高官らのタカ派姿勢が続き、5月25日の米1-3月期GDP改定値の上方修正で26日早朝に140円台へ到達し、26日の米4月PCEデフレーターの伸びを見て高値をさらに伸ばしてきた。
週間では5月19日終値137.92円から5月26日終値140.60円まで2.68円の上昇となり、5月7日の週の0.93円の上昇、5月14日週の2.21円の上昇から3週連続の陽線で1月16日安値127.22円以降の高値を更新した。
今週は5月29日に米国と英国が休場となるが、6月2日の米5月雇用統計へ向けて重要指標の発表が相次ぐため、米経済指標が強めで推移すれば6月FOMCでの利上げや6月と7月の連続利上げの可能性が高まり、ドル高がさらに勢い付く可能性もあると思われるが、米債務上限問題がまだ合意できずにいることや信用不安もくすぶっていることから風向きが変わることもあり得ると注意したい。(編集部注:債務上限問題に関しては、本稿執筆後の本邦5/28に、バイデン大統領とマッカーシー下院議長の合意が5/27に成立したと双方が明らかにしています)
【米PCEデフレーターは前月比と前年比が共に予想上回り、IMFは利上げ継続を勧告】
5月26日に発表された4月の米PCE(個人消費支出)は前月比0.4%で3月の0.1%を大幅に上回り、前年同月比は4.4%で3月の4.2%及び市場予想の4.3%を上回り3か月振りに加速した。コア指数の伸び率は前月比で0.4%となり、3月の0.3%及び市場予想の0.3%を上回り、前年同月比は4.7%で3月の4.6%及び市場予想の4.6%を上回った。これらはFRBによる6月利上げの可能性を助長するものとしてドル円は直後の139.64円から140.30円へ急伸した。
米ミシガン大による5月の消費者信頼感指数確報値は59.2となり、速報値の57.7から上方修正されたが4月確報値の63.5からは低下した。同時に発表された1年先期待インフレ率は4.2%で4月確報値の4.6%から低下したが、5年先期待インフレ率確報値は3.1%で4月確報値の3.0%から上昇した。1年先期待インフレ率は速報値の4.5%から鈍化したため、米10年債利回りはPCEデフレーター発表後に上昇した後に反落している。
国際通貨基金(IMF)は5月26日に対米経済審査完了に伴う声明で、米国のインフレは引き続き高水準を保つと予想してFRBは利上げを継続すべきと勧告した。ゲオルギエワ専務理事は「FRBの仕事は完了していない、2024年遅くまで5.25〜5.50%の水準で推移すべき」として現行の5.00〜5.25%から利上げされるべきと強調した。
クリーブランド連銀のメスター総裁は26日の米4月PCEデフレーターを踏まえ、「FRBはもっとやるべきことがあることを示している」と利上げ継続姿勢を示したが、「引き締め局面の終わりに近づいている、引き締め度合いの調整が難しい」と慎重な姿勢も見せた。「同じデータを見て異なった人が異なった判断をしている」とも述べてFOMC内では追加利上げ支持派と慎重な据え置き派が分かれていることを示唆した。
米銀破綻をきっかけとした与信の厳格化が実質的な0.25%利上げ二回分に相当するとの分析もあるため、6月の判断は難しいところだが、米金利先物市場では6月利上げの確率が6割を超えており、年内の利下げ可能性が薄れている。
【米10年債利回りは上昇後に反落、NYダウは6日ぶり反発】
5月26日の米長期債利回りはまちまちだった。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.03%低下の3.79%となった。5月12日から22日まで7連騰し、23日に高値を伸ばしてから反落したものの、24日に0.05%上昇、25日に0.07%上昇と連騰し、26日は米PCE発表後に3.86%へ続伸したもののミシガン大期待インフレ率発表後に前日比マイナスまで失速した。週間では5月19日の3.68%から0.11%の上昇、3週連続上昇だった。
利上げに敏感な2年債利回りは0.03%上昇の4.57%となった。5月12日から22日へ7連騰、23日は高値を伸ばしてからの失速で前日比変わらずだったが、24日に0.05%上昇、25日に0.16%の大幅上昇となり26日も3連騰で高値では4.64%を付けて3月24日の3.77%高の最高値とし、週間では5月19日の4.28%から0.29%の上昇、3週連続上昇となった。
一方でNYダウは前日比328.69ドル高と上昇した。5月19日から25日まで5営業日続落していたが、米債務上限を巡る与野党協議が合意に近づいたとの報道もあり売られ過ぎ警戒で買い戻されたようだ。ナスダック総合指数は277.60ポイント高となり25日の213.93ポイント高からの連騰となった。
イエレン財務長官は債務上限問題が合意に至らない場合のデフォルト発生期限を6月1日としていたが26日には6月5日までは目途が立ったとして引き延ばした。債務上限問題は毎年のように繰り返しぎりぎりまで悶着するものの合意に至ってきたが、かつては合意がずれ込んで政府機関の一時閉鎖や統計発表の延期等が発生したこともある。
【昨年10月からの下落幅に対する半値戻しを超えて3分の2戻しを目指すか】
ドル円は1月16日安値127.22円から3月8日高値137.91円まで10.70円の上昇となり、3月24日安値129.63円へ反落したところから再上昇に入った。5月2日高値137.76円では3月8日高値を超えられずにダブルトップ型の上値抵抗線を形成したが、5月11日夜からの上昇により3月8日及び5月2日の高値を超えて1月16日からの上昇は二段上げ型に発展した。
3月24日安値からの上昇幅は5月26日時点までで11.09円となり一段目を超えてきている。また昨年10月21日高値から今年1月16日安値までの下げ幅24.73円に対しては半値戻しの139.58円を超えており、3分の2戻しとなる143.71円も手の届く範囲に来ているが、今後の米長期債利回りの上昇具合によっては3月8日高値から3月24日安値への下げ幅に対する倍返しとなる146.19円を目指す可能性も浮上してくるかもしれない。
FRBによる6月と7月の連続利上げの可能性、6月に利上げを休止しても7月以降に再利上げされて年内の利下げは当面考えられないという状況になれば、日銀が金融緩和を継続していることとの政策差と長期金利差によりドル円が昨年10月21日高値への上昇時のような勢いを取り戻す可能性もあり得るところだ。
ただし、日足の相対力指数は70ポイントに到達して高値警戒水準にあること、1月16日から3月8日まで凡そ2か月の上昇で10円を超える上昇だったことに対して3月24日からの上昇も2か月を経過して上昇幅も10円を超えたことでの高値警戒感も出やすい水準ともいえる。ここしばらくは新たな米銀破綻問題が発生していないものの、新たな経営危機問題が発生する場合は米国リスクによるドル円の反落もあり得るところと注意したい。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、140円を下値支持線、141円を上値抵抗線とする。
(2)140円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは141円超えから142円、143円を目指す上昇を想定する。143円以上は反落警戒とし、直前高値から1円を超える反落が発生する場合はいったん調整安に入る可能性があると注意する。
(3)140円割れから続落の場合は5月26日夕安値139.49円試しとし、安値更新からは139円前後への下落を想定する。139円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、信用不安問題や米債務上限問題等によりドル安へ風向きが変わる場合は直前高値から3円を超える反落規模となるケースにも注意しておきたい。
【当面の主な予定】
5/29(月)
休場 米国、英国、ノルウェー、スイス
主要指標の発表は特になし
5/30(火)
07:45 (NZ) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 7.0%)
08:30 (日) 4月 失業率 (3月 2.8%、予想 2.7%)
08:30 (日) 4月 有効求人倍率 (3月 1.32、予想 1.32)
10:30 (豪) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 -0.1%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 5月 消費者信頼感確定値 (速報 -17.4)
18:00 (欧) 5月 経済信頼感 (4月 99.3、予想 98.8)
22:00 (米) 3月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (2月 0.5%、予想 0.2%)
22:00 (米) 3月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (2月 0.4%、予想 -1.6%)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (4月 101.3、予想 99.0)
26:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、インタビュー
5/31(水)
08:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、上院委員会出席
08:50 (日) 4月 鉱工業生産速報値 前月比 (3月 1.1%、予想 1.4%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (3月 -0.6%、予想 1.9%)
08:50 (日) 4月 小売業販売額 前年同月比 (3月 7.2%、予想 7.1%)
10:00 (NZ) 5月 ANZ企業信頼感 (4月 -43.8)
10:30 (中) 5月 国家統計局製造業PMI (4月 49.2、予想 49.5)
10:30 (豪) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 6.3%、予想 6.4%)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 -3.2%、予想 -0.8%)
14:00 (日) 5月 消費者態度指数・一般世帯 (4月 35.4、予想 36.0)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 5.6%、予想 5.6%)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (4月 0.4%、予想 0.2%)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (4月 7.2%、予想 6.4%)
21:50 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、ボウマンFRB理事、イベント開会挨拶
22:15 (英) マン英中銀委員、講演
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 48.6、予想 47.3)
23:00 (米) 4月 雇用動態調査(JPLTS)求人件数 (3月 959.0万件、予想 940.0万件)
25:20 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、イベント閉会挨拶
25:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
6/1(木)
休場 インドネシア
08:50 (日) 1-3月期 ソフトウェア含む全産業設備投資額 前年同期比 (10-12月 7.7%)
10:30 (豪) 1-3月期 民間設備投資 前期比 (10-12月 2.2%)
10:45 (中) 5月 財新製造業PMI (4月 49.5)
16:55 (独) 5月 製造業PMI改定値 (速報 42.9、予想 42.9)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI改定値 (速報 44.6、予想 44.6)
17:30 (英) 5月 製造業PMI改定値 (速報 46.9、予想 46.9)
18:00 (欧) 5月 HICP(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (4月 7.0%、予想 6.4%)
18:00 (欧) 5月 HICPコア指数速報値 前年同月比 (4月 5.6%、予想 5.5%)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 6.5%、予想 6.5%)
20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
21:15 (米) 5月 ADP民間非農業部門就業者数 前月比 (4月 29.6万人、予想 15.0万人)
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 -2.7%、予想 -2.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.4万人)
22:45 (米) 5月 製造業PMI改定値 (4月 48.5)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 47.1、予想 47.0)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
6/2(金)
休場 シンガポール、インドネシア
08:50 (日) 5月 マネタリーベース 前年同月比 (4月 -1.7%)
21:30 (米) 5月 非農業部門就業者数 前月比 (4月 25.3万人、予想 18.0万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.4%、予想 3.5%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 4.4%、予想 4.3%)
6/4(日)
OPECプラス閣僚級会合
6/5(月)
イエレン米財務長官が警告する米財務相資金ショート発生警戒日
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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