ドル円 金利差と株高による円安後の踊り場(週報5月第5週)

先週のドル円は、強い経済指標から米金利一段高によりドル買いと140.73レベルまで上伸し、週初から更に3円も円安に動いた一週間となりました。

ドル円 金利差と株高による円安後の踊り場(週報5月第5週)

金利差と株高による円安後の踊り場

〇先週のドル円、週末にかけ140.73レベルまで上伸、週初から3円も円安に動いた一週間
〇FRB高官のタカ派発言、米指標好調と長期金利上昇、外人の日本株買いに伴うヘッジの円売りも一因か
〇6月FOMCでの0.25%利上げの織り込み度は69%、6/13の5月CPI発表まではこれを前提に進みそう
〇今週は米雇用関連の経済指標の注目高い、FRB高官発言、ベージュブック等の指標も注目
〇ドル円、140円台に乗せ、次のターゲットは昨年高値と今年安値の61.8%戻し142.49
〇ただ、今週は週末雇用統計等の重要指標発表控え速度調整入りやすいか
〇138.00レベルをサポートに、141.00レベルをレジスタンスとする流れと見る

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初は日経平均株価上昇とともにリスクオンの円売りが先行し、138円台半ばから後半でいったん足踏みしたものの、FRB関係者のタカ派発言をきっかけに米金利上昇とともにドル買いの動きとなり、週末に向けてはテクニカルなターゲットを狙った買い仕掛け、強い経済指標から米金利一段高によりドル買いと140.73レベルまで上伸し、週初から更に3円も円安に動いた一週間となりました。

日本株の上昇とドル円、クロス円での円売りの相関は高いのですが、今回の日経平均33年ぶり高値の背景には海外からの日本株買い増しの動きもかなりあると言われ、本来的には円買い材料となるのですが、為替ヘッジによる円売りも結構出ていたと言われています。これは日本人による米債購入にあたり為替変動をヘッジするため、一定の割合のドルを売ってドル安に動いた場合の為替リスクを減らす動きを考えるとわかりやすいでしょう。米国の投資家が日本株を買った場合に円安が進行すると元本に為替リスクが生じるため、一定割合の円売りを行って為替ヘッジをしているという話です。

これが事実であるとすれば、新規の株買い以上に既存のポジションのヘッジが相対的に大きかったが故の円安進行と取ることが出来ますが、それ以外にも米金利が3.859%と3月10日以来の水準に上昇したこともドル買いの大きな要因となっていました。

債務上限問題は5月最終週から実際にデフォルトになってしまう6月第1週までの間に最終的には合意するという見方になっていたため、直近ではそれほどリスクオフの材料には無っていなかったようですが、昨日基本合意が伝わってもリスクオンの動きとなったのは早朝の短時間でその後はイベントがひとつ過ぎたという安心感から利食いも出ていたようです。また29日は英国、米国ともに休場となることから本格的な始動は火曜からとなるでしょう。

今週は月初で米国からは雇用関連の経済指標が出てきますが、31日の求人件数と2日の雇用統計本番が注目度が高いと言えます。また31日のベージュブックや各種経済指標とFRB関係者の発言も6月FOMCに向けて利上げが行われるかどうか判断するために重要な材料となります。現時点で0.25%利上げの織り込み度は69%にまで上がり、年内の利下げ思惑は12月にまで後退しています。今週から13日の5月CPIまで余程のことが無い限りは0.25%利上げを前提に進んでいくこととなりそうです。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

テクニカルなターゲットであった昨年高値と今年安値の半値戻し139.57を達成、さらに140円の大台乗せと3月安値から既に13円70銭も円安が進行している点はスピードが速過ぎるのですが、こうなると次のターゲットは61.8%戻しの142.49となり、同水準は昨年高値から下げた後の11月戻り高値とも重なっています。

同水準までの上昇はテクニカルにはありそうですが、ここを上抜けると150円まで戻す可能性もあり、口先介入だけでなく実弾介入が出てくる可能性が高そうな水準と言えます。おそらく一気に試すのではなく、様子を見ながら少しずつ試すという動きになっていくと見られます。今週のところは経済指標前の速度調整が入りやすいという見方をしたいところです。

今週はこれまでネックラインとなっていた138.00レベルをサポートに、若干高値を切り上げる141.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

5月29日(月)
LDN、NY市場休場 ☆
24:00 スペイン中銀総裁講演

5月30日(火)
08:30 本邦4月失業率・有効求人倍率
07:45 NZ4月住宅建設許可
10:30 豪州4月住宅建設許可
16:00 トルコ4月貿易収支
18:00 ユーロ圏5月消費者信頼感 ☆
22:00 米国3月住宅価格、ケースシラー住宅価格 ☆
23:00 米国5月消費者信頼感 ☆
26:00 (リッチモンド連銀総裁講演)

5月31日(水)
08:00 豪中銀総裁議会証言 ☆
10:00 豪州5月企業信頼感
10:30 豪州4月CPI ☆
10:30 中国5月製造業PMI ☆
15:45 フランス5月CPI速報値 ☆
15:45 フランス4月PPI
15:45 フランス1〜3月期GDP改定値
16:00 トルコ1〜3月期GDP
16:55 ドイツ5月失業率
17:30 イタリア中銀総裁講演
21:00 南ア4月貿易収支
21:50 ボウマンFRB理事 ☆、(ボストン連銀総裁)講演
22:45 米国5月シカゴ購買部協会景況指数 ☆
23:00 米国4月求人件数 ☆
25:30 フィラデルフィア連銀総裁講演 ☆
27:00 ベージュブック ☆

6月1日(木)
10:45 中国5月MarkIt製造業PMI ☆
15:00 ドイツ4月小売売上高
15:00 英国5月住宅価格
16:00 トルコ5月製造業PMI
16:50 フランス5月製造業PMI
16:55 ドイツ5月製造業PMI
17:00 ユーロ圏5月製造業PMI
17:30 英国5月製造業PMI
18:00 ユーロ圏5月CPI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏4月失業率
20:30 ECB理事会議事要旨公表 ☆
20:30 米国5月チャレンジャー人員削減予定数
21:15 米国5月ADP全国雇用者数 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国1〜3月期非農業部門労働生産性
22:45 米国5月製造業PMI
23:00 米国5月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国4月建設支出
24:00 週間原油在庫統計

6月2日(金)
シンガポール市場休場
15:45 フランス4月鉱工業生産
21:30 米国5月雇用統計 ☆

6月4日(日)
**:** OPECプラス閣僚級会合 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月22日(月)
 週明けの東京市場は仲値までは若干上値が重たかったものの、日本株が寄り付きから上昇し後場には年初来高値を更新する動きとともにリスクオンの円売りの動きとなりました。日経先物は引け後も上昇し、シカゴでは31295円まで上昇、ドル円は138.69レベルまで上昇し高値圏での引けとなりました。

5月23日(火)
 ドル円は東京前場に138.87レベルと高値を更新したものの日経平均株価が大きく下げる動きの中で上値もまた重たい展開が続きました。NY市場に入りFRB関係者のタカ派発言で改めて138.91レベルへと高値を更新したものの後が続かず、高値圏でもみあいのまま引けました。

5月24日(水)
 ドル円はNY市場までは138円台半ばから後半でのもみあいを続けていましたが、ウォラーFRB理事が6月利上げを支持する発言をしたことをきっかけに米金利が上昇へ転換し、ドル円も年初来高値を更新する動きにつながりました。債務上限問題の進展は無かったものの与野党が合意に向けて動いているであろうことは伝わり、それほど悪材料とはされず引けにかけて139.48レベルまで高値を広げる動きとなりました。

5月25日(木)
 ドル円は東京朝方にフィッチが米国債の格付け引き下げに言及したことから一時的に下げた反動もあった様子で、前場にテクニカルなターゲット(昨年高値と今年安値の半値戻し)を達成、その後はNY市場まで139円台前半でのもみあいが続きました。NY市場に入り発表された経済指標が予想よりも強かったことをきっかけに米金利が上昇、ドル円にも改めて買いが入り引けにかけては140.23レベルと11月以来の140円台乗せを見て高値圏で引けました。

5月26日(金)
 ドル円は前日に大台140円を見た達成感や週末前のポジション調整もあって欧州市場序盤に139.50レベルまで売られ上値が重いままNY市場に入りました。NY市場に入り発表された経済指標が予想よりも強く米金利上昇とともにドル円も改めて買いが強まり140.73レベルと高値を更新後、高値圏での引けとなりました。

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